衆院TPP特別委員会で27日午前、NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表の内田聖子氏、明治大学法学部兼任講師・NPO法人日本消費者連盟元共同代表の山浦康明氏を迎え、参考人質疑が行われた。篠原孝議員が質問に立ち、(1)TPP協定締結に関する米国や日本の消費者の受け止め・懸念(2)TPP協定締結後の各国の安全基準の後退――等に関して質問した。

 内田参考人が冒頭の意見陳述で「労働者、環境団体、消費者といろいろな声が米国をつき動かして、2人の大統領候補ともTPP反対に至らしめた」と発言したことに関連して、篠原議員は米国での消費者の声について質問した。内田参考人は「米国の消費者も食の安心・安全については懸念している人は多い」と述べ、(1)1970年代から続くパブリック・シチズンという消費者団体がTPPによって米国にもベトナムやマレーシアなどから米国の食の安全基準以下の魚介類等が入ってくることへの懸念を警告していること(2)遺伝子組み換えや添加物への強い心配が母親たちの運動として盛り上がり、表示義務制度などがバーモント州などでつくられたこと――などを説明。「米国の遺伝子組み換えのグローバル企業が今以上に力をもつのは自分たちにも危険だし、他の国の人にも危険だという観点から強く反対していると思う」との見解を述べた。

篠原議員が参考人質疑を行う

 篠原議員は「消費者のバイイングパワーを活用すべき」と語り、消費者の商品を選ぶ厳しい目が日本の食の安全につながったとの認識を示した。また、外国人の間での和牛人気について、「うまいというだけでなく、成長ホルモンの使用などに関して厳しい国であるからこそ評価が高い」として、日本の消費者運動に対する世界からの見方を尋ねた。内田参考人は「日本の安全基準は消費者運動の成果もあって素晴らしいという評価もある。しかし今、日本の基準は後退しているのではないかと指摘する人もいる。遺伝子組み換え作物の承認件数も日本は非常に増えてきている」と説明。「世界は遺伝子組み換え食品は危険だということで減る傾向にあるが、日本は作るし買う。これでは日本は遺伝子組み換えのゴミ捨て場になるのではないかとの強い懸念が表明されている」と語り、TPP締結後の危険が増すことへの懸念も語った。

 篠原議員はTPP協定に基づく安全性の確保に関しても懸念を示し、「安全を重視する立場の人たちからすると、WTOと比べて緩く、おかしくなっていくのではないかという見方があるのではないか」と述べ、どこが一番問題になるかを尋ねた。

 山浦参考人は「透明性という言葉がたくさん散りばめられているが、TPPでの透明性とは、企業が情報を知って政策提言ができるという透明性だ。消費者もステークホルダーの中に入っているが、さまざまな審議会を考えると、どうしても消費者の意見は端に追いやられてしまうという傾向が日本ではある。そういったことがさらに大きくなっていくのではないか。TPPはそれを制度的に保障する構図になっている」「WTOと比べると、予防原則の考え方が完全に排除されているのがTPP。心配だという声を各国が受けて、慎重な政策を各国が進めることが認められなくなる」との懸念を表明した。