民進党の経済政策

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「人への投資」を経済政策の柱に

 民進党は2016年12月13日、「次の内閣」会議を国会内で開催し、政策アップグレード検討会(細野豪志会長=代表代行)が議論を重ねてきた「民進党の経済政策」を審議し、了承した。政策アップグレード検討会がまとめた民進党の政策のポイントについて紹介する。

 「政策アップグレード検討会」は、民進党が綱領で示した社会を実現するための新たな中長期的な政策を検討し、次期総選挙に向けた経済政策の取りまとめを担っている。
 民主党当時には、子ども手当、高速道路の無料化、最低保障年金などの柱となる政策があり、批判も頂いたとはいえ、国民の間に定着し、これらへの期待が政権交代の一つの要因となった。民主党時代の考え方を転換し、民進党の柱となる政策の立案に向け、取りまとめを行った。
 経済政策の分野では、これまでも民進党は「人への投資」を訴えてきたが、往々にしてこれは弱者対策としての社会政策と受け取られがちだった。しかし、格差是正や教育などの人材投資が経済成長につながることは今や世界の常識となっている。その点について、あらためて強く提示する内容になっている。

教育政策は成長 戦略の重要な柱

 図表1に示すように、わが国の公的教育に対する投資水準は各国に比べて非常に低い。今後、わが国が本格的な人口減少時代に突入する中、経済の活力を維持するためには国民一人ひとりの能力を最大限伸ばし、それを発揮できる環境を作ることが不可欠だ。教育政策は経済成長を目的とするものではないが、今後を考えれば教育を成長戦略の重要な柱として拡充していくことは欠かせない。これが民進党の経済政策の基本的な立場である。

図表1 経済成長率と教育投資の関係
政策アップグレード

「教育の無償化」を推進


 具体的には保育を含む就学前教育の無償化、小・中学校の給食費等の無償化、そして大学学費の大幅減免・無利子奨学金の拡充を大胆に進めていく。
 また、民主党政権時代に導入した「高校授業料実質無償化」についても、政権に復帰した自民党が導入した所得制限を撤廃する。これによって保護者の収入に左右されずに、誰もが希望すれば高校へ進学でき、経済的な理由で中退するような状況をなくしていく。
 就学前教育、大学などの高等教育では家計の負担が非常に重いことから、それを理由に断念するケースも多い。それは国民の学ぶ権利を奪うことであると同時に、国家としての大きな経済的損失につながる。就学前教育の経済効果は投資額の2・8倍、高等教育では2・4倍になるとの試算もあり、いずれも公共事業の1・1倍を大きく上回っている。
 図表2に見られるように、わが国の大学学費が高く、また給付型奨学金制度がないことから、家計や卒業後の負担が非常に重くなっている。この負担を前に大学進学をあきらめたとすれば、これが将来の成長の芽をつぶしている可能性は大きく、早急に大幅な負担軽減を実現する必要がある。また、家計の教育費の負担軽減による可処分所得の増大は足元での消費拡大に寄与するという効果もある。

図表2 各国の大学授業料と奨学金制度
政策アップグレード

具体的な財源を提示する


 掲げた政策を全て完全に実現するためには最大5兆円程度かかると見込んでいるが、一気に実現するのではなく、財源の確保状況に合わせて段階的に実施していく。
 例えば、大学学費の大幅減免については、若者の都市部への流出を抑える観点から、都市部以外の大学で優先的に実施することなどを念頭に置いている。この点については最終的な財源確保に向けて、行革、税金のムダ遣い削減などに依存することなく、税制や現在の予算の使い道の見直しなどにより具体的な金額を積み上げる。
 所得税の配偶者控除は、それ自体が働き方に中立的でなく、女性の社会進出を抑制しているという課題を抱えており、これを解消する中で、相続税の見直し等と合わせ「教育の無償化」の財源を確保したいと考える。

政策アップグレード

中小企業の社会保険料負担を軽減


 経済政策については、これまでのように人が経済の道具になるのではなく、「人間のための経済政策」を基本とした上で、グローバル経済への対応と、しなやかな地域経済の構築に向けて、それぞれに応じた政策を講じる。中でも、日本経済の基盤である中小企業での雇用拡大に重点を置く。図表3にあるように、企業での医療、年金などの社会保険料に関わる負担感は大きく、これが新たな人材の採用の壁となっている可能性が高い。雇用拡大による中小企業の社会保険料の負担増を軽減することで、中小企業の発展を支え、同時に地域での雇用増を図る。また、地域でのヒト・モノ・カネの流れを活性化する観点から、事業者の負担増を招かないことを前提に、高齢者・障害者などの交通弱者が地域内を気軽に移動できる「300円タクシー」の普及を進める。
 一方、グローバル市場で戦う企業に対しては大胆な規制緩和、資金調達手段の多様化、貿易ルールの整備などにより、競争環境を整えていく。


図表3 企業の社会保険制度に関する要望
政策アップグレード

女性の社会参画を拡大する


 社会に参画したいと望む女性にその機会を保障することは政治の責務であり、子育てや介護を女性に押しつける社会の風潮を改め、女性がその能力を存分に発揮できる社会を創造する。それが成熟し、かつ活力のある社会の実現につながる。そうした観点から、夫も妻も安心して育児休業を取得できるよう育児休業給付を実質100%支給に拡大するとともに、長時間労働の解消や「パパ・クオータ制」(※)の導入を進め、男親が子育てに参加する権利を保障する。
 また、女性の視点で社会のさまざまな制度の見直しを進めるため、各種選挙での候補者を男女同数にすることを目指す法律を制定し、さらに衆院比例代表選挙で男女の候補者が交互に当選していく比例名簿の作成を可能とする法改正を行う。

この政策で選挙を戦う

 以上が「政策アップグレード検討会」の取りまとめのポイントだ。細野会長は「多くの方々のご協力により、蓮舫体制発足から3カ月でこうした取りまとめを行えたことに感謝する。3月に誕生した民進党として、第1の柱となる重要な政策であり、同時にわが国に不可欠な政策であると自負している」旨を語った。
 来たる総選挙では、金融緩和や財政出動でカネをばらまくことばかりに執心している安倍政権に代わり、「人への投資」という明確な理念の下で、民進党の経済政策を堂々と訴えていく。


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