私は、民進党の党員ではありません。私は、友人の乙武君のように、政界への進出を考えているわけでもありません。今日、私がここに来た理由は、たった一つです。民進党が、政権交代可能な党になってほしいというその願いからなのです。アメリカ大統領選挙では、ほぼ8年ごとに民主党と共和党の候補が大統領に選ばれてきました。英国でも、保守党と労働党が何度も政権交代を繰り返してきました。およそ成熟した民主主義において、政権交代が期待できないというようなことは、ありえないのです。

 日本は戦後、自由民主党が長きにわたって政権を担当しました。それは素晴らしい政策も、いろいろ実現されたと思います。しかし、皆さん、日本の民主主義は政権交代がなくて続くということに、あまりにも慣れすぎていた。それを変えたのが、2009年の民主党による政権交代だったわけです。今、世界はイノベーションが起こり、次から次へと新しい動きが出てくるなかで、政権交代ができない社会風土というものは、われわれを未来に連れて行ってくれないのです。いつでも政権交代の可能性があるということがなければ、日本が未来に進めません。そのために、皆さんの責任は重大であると考えます。

 さて、民主党政権は、2009年にあれだけ大きな国民の期待を受けながら、結果としてあのような形で終わってしまいました。皆さん、最近グーグルの人工知能で、アルファ碁というのが出てきました。人口知能が、なぜあれだけ強くなったかご存知ですか。反省することを覚えたからです。アルファ碁は自ら打った対局を評価し、反省し、それを改善することで今や人間の世界チャンピオンを破るところまで強くなりました。

 安倍さんの自民党は、正直言ってかなり強いです。その安倍さんの自民党に勝つまでに皆さんが強くなるためには、ぜひとも2009年の政権交代の後の、苦い失敗の反省をしていただきたい。反省というのは、皆さんの目の後ろにある眼窩前頭皮質、Orbitofrontal cortexということろでやるのです。反省とは何でしょうか。反省とは、皆さんが過去に行った選択に対して、プランBは何だったのか、どのような他の選択ができたのかということを検討することです。さらにもう一つ、皆さんが過去に行った選択の前提となった価値観、世界観は何だったのか。なぜそれが足りなかったのかということを、振り返ることです。

 ぜひ皆さん、美しい反省をしていただきたい。反省するに遅すぎるということはありません。この素晴らしい新しい政党ができた、これを機会に、ぜひ真摯(しんし)に2009年の失敗を反省していただき、そして政権交代が可能な、それが当たり前な日本にするためにがんばっていただきたい。皆さんが掲げている共生というメッセージ。それは優しい、耳障りの良い言葉だけではないのです。まさに個性の異なる人々が集まって、お互いの違いを認め合いながら、協力する、共生の精神がなければ人工知能に象徴されるようなイノベーションは起らないし、日本の経済成長もないのです。皆さんが掲げる共生が、経済成長の政策であるということを訴えかけて、私のあいさつとさせていただきます。