小川敏夫参院幹事長は29日、定例記者会見を開き、民進党発足に伴う会派名変更やヘイトスピーチを規制する法案等について見解を述べた。

 同日現在、参院では「民主党・新緑風会」が会派名として存続しているが、30日には「民進党・新緑風会」を会派名とするよう手続きに入るとした。民進党発足後直ちに会派名を変更しなかった理由は、2016年度予算の審議中に会派名の変更は手続きが煩雑になるためだと説明した。また、「民進党・新緑風会」には、公職選挙法の規定により民進党に合流できなかった旧維新の党の5人の参院議員も含まれると述べた。

 つづいて小川幹事長は、ヘイトスピーチへの対応をめぐる与党の動きについて、昨年の通常国会に民主党などが提出した「人種差別撤廃施策推進法案」が継続審議の扱いになっていることを踏まえ、「自公両党が現在、ヘイト問題に特化した法案を考えているようだが、私どもの理解では、自公案は、国会としての意思を示すために全会派が一致できる委員長提案を目指すものだと承知してしている。自公案がまとまったら、野党側とすり合わせをして、成立させたい」と期待感を示した。

 与党側の一部に、野党側が「人種差別撤廃施策推進法案」の審議・採決を求めているために、同じく昨年の通常国会に政府が提出した「刑事訴訟法改正案」の審議が進まないなどとして不満の声があることについては「先に審議入りしたものは先に結論を出すというのが原則。私どもは原則通りにやるべきだと言っているが、与党が(「人種差別撤廃施策推進法案」を)棚上げしているのが原因だ」と述べ、与党側に責任があると反論した。

 記者団から、今回の予算審議を通じての印象や、新年度予算への評価を問われ「安倍政権に終始一貫した対応だが、質問に対してきちんとした答弁をしない。充実した審議ということでは、政府のほうがもっと誠実に取り組んでいただきたい」「予算全般に関しては、生活を大切にするという分野が欠けているのではないか。消費税はもともと社会保障に使うということで3党で合意して増税したわけだが、それが生かされていない。旧来型の公共投資も増えたままでこれでいいのか。もう少し国民生活を充実させる面での手当てや、将来の財政を見据えた対応が必要だったのではないか」と感想を述べた。

 野党側の一部に消費税引き上げ凍結法案を出す動きがあることについては「難しい話」とした上で、「政府を批判するのは簡単だが、消費税を引き上げる目的は、財政再建と社会保障の充実がある。海外諸国からの日本への信頼にもかかわる」と、凍結に消極的な姿勢を示しつつ、「しかし、消費税引き上げとセットになっている軽減税率は実務上大きな混乱を起こすことが懸念され、これは見送った方がいいのでは」との見解を示した。ただ、「他の野党とはニュアンスが違う」として今後しっかりと議論する必要があるとの認識を述べた。

 これに関連して、もともと民主党政権で進めた消費増税やTPPなどに消極的な姿勢を示すことは「反対のための反対」になっているのではないか、と問われ、消費増税については3党合意がほごにされたこと、TPPについては「得るものの少ない、交渉に失敗した結果」でありながら安倍政権は「成果」を強調していることなどを挙げ、民主党政権時の構想とは質的に違っているために賛成しづらくなっていることを説明した。