山井国対委員長代理は11日、定例記者会見を開き、野党提出の「保育士処遇改善法案」、甘利前大臣の長期休養、パナマ文書、昨日の衆院厚労委員会での与党による参考人拒否などについて見解を述べた。

保育士処遇改善法案について

 民進党は、待機児童問題の背景には、重労働・低賃金を理由とする保育士の不足があると考え、3月24日に他の野党3党と共同で「保育士等処遇改善法案」を衆院に提出した(提出時は民主・維新・共産・社民・生活の野党5党共同提出)。その上で、政府提出の児童福祉法改正案との並行審議を要求してきたが、与党はこれを拒否し、ますます態度を硬化させている。

 山井代理は「安倍総理は『対案を出せ』と言いながら、野党が法案を出すと審議を拒否するのか。政府の1億総活躍プランにも保育士の処遇改善が含まれているのなら、正々堂々と議論するべきで審議拒否はありえない」「私たちは月額5万円引き上げる案だが、政府の案では6000円ということで、『話にならない』という怒りの声が上がっているとも聞く。保育士の処遇改善は国民的な大きな願いだ。審議拒否は止めていただきたい」と述べた。

甘利前大臣の国会欠席について

 睡眠障害を理由に国会を長期欠席している甘利前大臣だが、2月15日に診断書が出されてから今月15日で丸3か月となる。山井代理は「16日には予算委員会で補正予算の審議が行われる。この日の夕方ともいわれる衆院本会議にはぜひとも出席していただいて、さまざまな疑惑、TPP交渉についても、しっかりと国会・国民に説明責任を果たしていただきたい」と述べた。また、甘利前大臣が国会を欠席しながら、支持者宛に大量の手紙を郵送したり、秘書に選挙の準備を指示したなどと言われていることから、「3カ月間も国会を休んで、選挙活動はやるというのは、国民の税金から歳費をもらっている国会議員としてあるまじき姿だ。本当に病気が深刻なら一度議員バッジを外して休養するべきだ」と述べ、16日の衆院議院運営委員会での与党の対応を注視する考えを示した。

パナマ文書について

 民進党は10日に「パナマ文書調査チーム」を立ち上げ、同日中に第1回会合を開き、政府から今後の対応について聴取した。しかし、山井代理は「政府の答弁は『調査するともしないとも言えない』ということだった。サミットでも富裕層の節税・脱法行為がテーマになると言われ、オバマ大統領も『こうしたやり方が合法ということ自体が問題なのでは』という問題意識を示し、諸外国では厳正に対処している。その中で日本政府の取り組みはあまりにも後ろ向きだ。『調査する』とすら言えないのでは、国民は納得しない」と述べた。

10日の衆院厚労委員会での与党による参考人拒否について

 10日の衆院厚労委員会で「障害者総合支援法改正案」の審議に関して、民進党が難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性を参考人とすることを求めたところ、与党側から出席を拒否された。この件について記者団から見解を求められた山井代理は「前代未聞の障害者差別が、こともあろうに衆院厚生労働委員会の場で行われてしまった。与党に猛省を求めたい」と述べた。その上で、同委員会の速記録から、この男性の代理として出席した日本ALS協会の金沢理事が読み上げたメッセージを紹介した(以下は男性のメッセージ)。

 おはようございます。日本ALS協会の岡部と申します。本来であれば、ここに座って委員の先生方とお話をさせていただいているはずです。冒頭のごあいさつとして一言申し述べさせていただきます。私はALSという神経難病の患者当時者で、人工呼吸器をつけていますので、コミュニケーションには特殊な方法を用いて通訳者を必要とします。それでコミュニケーションに時間を要するという理由で、今日の参考人として招致されたものを取り消されました。障害者総合支援法の国会審議において、障害者の参考人を拒否なさったわけです。国会の場は、まさに国民の貴重な時間と費用の極みだと認識しております。その国民の中には私たち障害者も存在しています。国会の、それも福祉に関する最も理解をしてくださるはずの厚生労働委員会において障害があることで排除されたことは、深刻なこの国のあり方を示しているのではないでしょうか。

 山井代理によると、障害者総合支援法改正案には、「重度障害者へのコミュニケーション支援」などが盛り込まれていることから、民進党は「当事者の意見を聞くべき」として、日本ALS協会の副会長である岡部宏生さんを参考人として招致することを提案。ところが与党側は「コミュニケーションに時間がかかる」などとしてこれを後ろ向きな姿勢を示し、後日、まったく関係のない法案である「児童福祉法改正案の趣旨説明を行うならば、参考人として認める」と回答してきたという。これに対し民進党としては「障害者の参考人招致に何らかの条件を付けることは、障害者差別を是認することになる。無条件で参考人として認めるべき」と主張して折り合わず、岡部さんの招致を断念した。

  山井代理は「岡部さんのおっしゃるとおりだ。安倍政権は1億総活躍と言っているにもかかわらず、国会で障害を理由に参考人を拒否するなど、聞いたことがない」と憤り、「重度の障害者への差別をなくそうと先頭を切って旗を振るべき国会で、『当事者は時間がかかるからだめだ』とは。法案は今日の委員会で可決される見込みだが、いくら良い法案を作っても審議の中で障害当事者を排除するようなことでは、実効性に疑問を持たれるのではないか。極めて残念だ」と述べた。