山井和則国会対策委員長代理は18日、定例記者会見を開き、(1)甘利前大臣の長期国会欠席(2)東京五輪招致不正送金疑惑(3)安倍政権下での経済成長(4)政府がまとめた「1億総活躍プラン」の評価(5)男女間の賃金格差に関する安倍政権の認識――について見解を述べた。

甘利前大臣の国会欠席について

 甘利前大臣は、睡眠障害を理由とする3カ月の国会欠席の期限をすでに超えているにもかかわらず、今なお国会を欠席し続けており、本日まで与党から何ら説明がない。山井代理は「国会会期末までずっと休み続けるのか。まさか国会が開いている間は出てこないで、衆院が解散されたら出てきて選挙を戦うというのはあってはならないことだ」と述べ、本日の衆院議院運営委員会理事会で与党に説明を求めるとした。

東京オリンピック招致に関する不正送金疑惑について

 山井代理は「深刻な問題がある」として、来週開かれる「伊勢・志摩サミット」の優先的アジェンダに「腐敗対策」が盛り込まれていることを紹介。「サミットの重要課題の1つがスポーツの腐敗防止。そのリーダーシップを取るのが日本だ。それにもかかわらず、現時点では不正送金疑惑に関する日本政府の取り組みは極めて後ろ向きだと言わざるを得ない」と述べ、政府の姿勢を批判した。

安倍政権下での経済成長

 本日、内閣府は本年1-3月期のGDP速報値が実質0.4%、年率換算では1.7%であると発表した。この件について山井代理は「うるう年効果0.3%程度を差し引くと、事実上のゼロ成長だ」と断じた。その上で、民主党政権約3年間の実質経済成長は5.7%であったのに対し、安倍政権の3年間では2.4%と「安倍政権になって実質経済成長率は半分以下に落ち込んでいる」とし、「その大きな理由の1つは、実質賃金が大幅に落ち込んでいることだ」と指摘。「確かにここ2、3か月の実質賃金は上がっているが、トレンドとしてはアベノミクスによって実質賃金が下がり、経済成長もゼロ成長にあるというのは非常に深刻な問題だ。アベノミクスは失敗だった」と述べた。

 この点に関連して記者団から、「消費増税をどう考えるか」と問われ、「非常に重要なのは、2年前の衆院解散・総選挙の際に『消費税増税の再延期はない。必ず増税する』ということを、安倍総理は最大の公約の1つとした。もしそれが守れないというのであれば、事実上アベノミクスの失敗を認めたことになる。安倍総理の責任は免れない」とした。

政府の「1億総活躍プラン」の評価

 記者団から、政府がまとめた「1億総活躍プラン」の内容が「介護離職ゼロ」や「待機児童の解消」など、民進党の政策とも重なることについて評価を問われ、「民進党が従来から主張してきた政策に一見すると乗っているように見えるがまったくそうではない」と切り捨てた。

 その理由として「『介護離職ゼロ』といいながら、私たち野党が提出した介護職員の賃金を1万円引き上げる法案に、与党は反対して廃案にした」「さらに、今厚生労働省で検討しているのは、再来年の4月から要介護1・2の高齢者200万人の家事援助サービス、生活援助サービスを介護保険から外し、全額自己負担にするという案だ。これは家族に介護しろと言っているもので、『介護離職ゼロ』どころか『介護離職倍増』政策だ」と厳しく批判。保育士の処遇改善についても「与党は野党提出法案の審議を拒否している」「今回の政府のプランでは来年4月から約6000円賃金を引き上げる案が入っているが、現場の受け止めは『落胆した』『政府にやる気のないことが分かった』という失望の声だ」と述べた。

 山井代理は、「1億総活躍プランは看板倒れ、言行不一致。口だけで改革と言っているのが政府・与党で、私たちのほうがはるかに実効性のある対案を示している」と強調した。

男女間の賃金格差に関する安倍政権の認識

 16日の衆院予算委員会では山尾志桜里政調会長が、保育士の給与の引き上げ目標を女性の平均給与とするとした政府の姿勢について「安倍政権は男尊女卑政権だ」と厳しく批判したが、これに関連して山井代理が5月9日に提出した質問主意書に対する政府答弁を紹介。山井代理の質問主意書では「1億総活躍国民会議の中で保育士の平均賃金について、女性労働者の平均賃金と比較して説明をしているが、このような説明は不適切ではないか、撤回する考えはないか」というもの。これに対して「保育士の95%近くが女性であるという実態を踏まえると、不適切なものとは考えていない」というのが政府の答弁だ。

 山井代理は「政府の答弁としては衝撃的な、差別的な答弁だ」と憤り、その理由として「この答弁は、『保育・介護は女性の仕事だから、一般の男性の仕事よりも平均賃金が低いのは仕方がない』と、男女の賃金差別を是認するものだ」と述べた。「もちろん、こうした現実があることは直視しなければならないが、『それは仕方がない』と言ってしまっては、同一労働同一賃金も、1億総活躍もまったく説得力がない。保育が女性の仕事であるがゆえに賃金が低い、こういう社会を変えていくのが本来の1億総活躍ではないか。その意味では山尾議員が言ったように『安倍政権は男尊女卑政権だ』と言わざるを得ない」として、政府に撤回を求める考えを示した。