山井和則新国対委員長が21日午後、記者団の取材に応じた。

「国民の生活を守るため、戦う国対を行っていく」山井国対委員長

山井和則国会対策委員長

 問 蓮舫代表が提案路線を掲げるなかでの就任だが、どのような国会運営を行っていくか。
 答 国民の生活を守る国対という方針で戦う。アベノミクスも行き詰まりを見せるなかで国民生活は非常に厳しくなり、景気回復も遠のき、安倍政権によって国民生活をますます苦しめる法案や改悪がなされようとしている。そういうなかでわれわれは、国民の生活を守る国対、国民のために戦う国対を行っていく。対案・提案路線という話があったが、批判・追及の先に対案・提案が出てくるわけなので、今まで以上に厳しく徹底的に批判と追及はしながらも、その先にしっかりとした提案と対案を提示していきたいと思っている。

 問 これまでも国対委員長代理として追及チームを主催してきた。
 答 今後もしっかりと国対のヒアリング、追及・調査チームは行っていく。なぜならば、政府に対して国民が言いたくても言えない、聞きたくても聞けないことを代わりになって行うのが国会の責任・役割で特に野党の責務であるので、国民が政府に対して怒っていること、疑問に思っていることに関して追及チームを開いて調査し、改善にしっかり取り組む。

 問 臨時国会のポイントは?
 答 TPP、年金、南スーダンの駆けつけ警護――の3点だと思っている。TPPに関しては、昨日20日に行われた安倍総理とクリントン米国大統領候補との会談で同候補からTPPには反対だという意向があらためて直接伝えられていると聞いている。米国大統領の有力候補がTPP反対と言っているなかでは再交渉の可能性もあるわけで、米国のそうした意向も日本での国民の納得も無視して、あえて今、TPPの審議を前のめりで進める必要はないと考える。TPPの交渉経緯が明らかになっていないのみならず、関連してもうひとつの問題が出てきている。「国内に安いコメは入っていない」と農林水産省は発言していたが、実際には補助金を出して安いコメを流通させていたというコメの価格偽装の問題が明らかになってきている。TPP交渉の大前提が崩れることになるので、明後日23日14時にコメ価格偽装調査チームを立ち上げ、徹底的に解明していきたいと思っている。
 年金に関しては、臨時国会で3本の法律が提出されようとしている。第一は年金カット法案。デフレ下でのマクロ経済スライドとともに物価が上がっても賃金水準が上がったら年金をカットするというもので、物価が上がっているのに年金を下げることを可能にする史上初めての法案だ。ただでさえ消費が鈍っているなか、この法律は、大変問題があると思っているので追及していきたい。
 年金の第二にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革法案もある。昨年1年間だけでもGPIFは年金積立金運用で5兆円の運用損を出している。大企業の株の4分の1の筆頭株主が日銀やGPIFという公的マネーになっている現状を見ると、アベノミクスというのは社会主義経済を目指しているのかという疑念さえ出てくる。
 第三には年金機構の宿舎の売却法案がある。この問題の追及が始まってから1年以上を経過しているにもかかわらず、たった8カ所しか売却、国庫返納の計画を立てていない状況にあり、これはむだ遣いの象徴であるのでしっかりと取り組んでいく。
 南スーダンの駆けつけ警護の問題については、戦後71年間、自衛隊員は1発の弾丸を撃ったことも、銃撃戦をしたことも、さらには自衛隊員が任務のなかで死傷したこともなかったわけだが、昨年強行採決された安保法によって12月から「駆けつけ警護」という新任務がスタートする。ことによると銃撃戦に巻き込まれたり、自衛隊の方々にリスクが及ぶかもしれないという懸念がある。このことは非常に重要な問題だ。

 問 今回の人事をどう受け止めているか。
 答 まさに党を挙げて一丸となって国民の生活を守るためにために戦う布陣になっている。私は国対の経験も長く、蓮舫代表からも話があった通り、社会保障・雇用・平和が非常にピンチになっている状況のなかで、そうした国民の生活を守るための国対をしてほしいとの指示を代表・幹事長から受けた。

 問 野党共闘のあり方については?
 答 国会内での野党共闘は、よい法案はスムーズに速やかに通す、しかし国民生活を苦しめる悪い法案は徹底して阻止するというメリハリの効いた対応を今までもしてきた。他の野党とも歩調が合う法案については野党共闘する。野党間で対応が分かれる法案も中にはあるが、私が国対委員長になったということで国会内での野党共闘が大きく変わることはない。

 問 補正予算についての対応は。
 答 財政規律も緩んでいるし、バラマキ体質が濃い、非常に問題のある補正予算だと思っているので、徹底的に問題点を明らかにしたうえで、蓮舫代表の方針に基づいて必要があれば提案・対案を示していきたいと思っている。

 問 労働基準法改正案についてはどのような点が争点になるか。
 答 先ほど申し上げた臨時国会のポイントとして3点掲げたなかに継続審議になっている労働基準法のことは敢えて言わなかった。というのはこの臨時国会で労働基準法改正案の審議入りを政府・与党が求めてくることはあり得ないだろうと思うからだ。なぜならば労働基準法改正案は裁量労働制や高度プロフェッショナルという名のもとに長時間労働を助長する法改正で、働き方改革で長時間労働の是正を唱えている安倍政権がまさか正反対の長時間労働を助長する労働基準法改正案の審議入りを求めてくるとは全く想定していない。働き方改革で長時間労働是正の計画・取り組みがまとまったうえで、あらためて話があると思っている。私たちは通常国会で、長時間労働を是正する総労働時間規制法案は出している。働き方改革の検討をこれから政府はすると言っているが、私たちはすでに法案をまとめて国会に提出しているので、ぜひともそういう対案を参考にしていたただきたい。
 これに象徴されるように、結果を出す政治というのが目標だ。総労働時間規制とインターバル規制の法律を成立させて、本当の意味での働き方改革をしていくのが私たちの目的である。先に行われた今年の通常国会では介護職員や保育士の待遇改善法案を国会に提出させてもらった。そのかいあって私たちがつくった法律通り、介護職員の賃金は来年4月から1万円上がることになったし、保育士も不十分ではあるが6千円上がることになった。私は過去に65本議員立法をつくり、一番たくさん成立させた議員だと自負しているので、提案・対案を示し、結果を出していく。