福山哲郎議員は5日午前の参院予算委員会で民進党の2番手として質問に立ち、(1)原子力災害対策について(2)パリ協定の批准(3)南スーダンでのPKO――などについて取り上げた。

 原子力災害への対策について福山議員は、「避難計画の策定について、われわれは原発事故が起こった際の避難計画を安全で確実なものとするために、国が責任を持ち、自治体と一体で計画を策定するようにという議員立法を提出している」と述べた上で、今回の補正予算に、原発周辺地域における防災対策の充実強化事業費が100億円計上されていることについて、2014年度の行政事業レビューでは廃止されたものだが復活している。専門家の判断基準や国の基準を作ったのか」と質問。内閣府の担当審議官は、「対象施設、与圧化への技術的要件、放射性物質を除去するための一定の基準に即して整備を行っている」と答弁した。

 「原発事故が起こった場合、原発周辺にある介護施設や学校、公民館などに屋内退避するという方向になっており、多くの人が避難してくる。その際にこういう施設は与圧するなどして機密性を高めておかないと、隙間などから放射性物質が入ってきてしまう。その圧力について具体的な指示は出したか」と福山議員が尋ねると、担当審議官は、「施設の圧力の設定要件は、最低限、年間を通じた平均風速に耐えることが必要との考え示している」と答えたが、13年、15年の事業で整備された施設の圧力はバラバラであることが判明。福山議員は、「強い風も吹く。平均風速では放射性物質が室内に入り込み室内で被曝してしまう。これでは避難できない」「自治体によっては100パスカルと高い圧力の施設もある。今回の補正予算にあるのだから、しっかりと前向きに対応して欲しい。メンツにこだわるのではなく、いかに安全を確保するかが重要だ」と指摘した。

福山議員

 パリ協定について福山議員は、「伊勢志摩のG7首脳宣言で安倍総理は、2016年中の発効という目標に向けて取り組みつつ、同協定の可能な限りの早期の批准、受託または承認を得るよう必要な措置を取ることにコミットするなどとあるが、インド、EUが批准し、発効要件が整いつつある。しかし日本では国会にも提出されていない」と、その理由を求めたが、安倍総理らは、「与党の手続きを行っているという状況だと承知している。調整が完了次第、国会審議をお願いしたい」などと答弁。福山議員は、「条約が発効したら、締約国でルール作りが始まる。それは11月7日だ。それに間に合わせるためにインドやEU,米国や中国も批准した。日本だけおいてけぼりだ。だから総理の所信表明にパリ協定のことがなかったのか」と述べ、政府の対応を厳しく批判した。

 南スーダンでのPKO活動について、「報道では、この7月に最大1千人の死者が出て、4万人の避難民が出たと言われている。反政府勢力のマシャール前第1副大統領は武力抵抗を表明している。陸自の第5次教訓要綱には、政府軍SPLAと反政府軍SPLAIOによる州都の取り合いについての記述がある。2013年のものだが、これでもSPLAIOは国に準ずる組織ではないとの判断か」と福山議員がただすと、稲田防衛大臣は、「当時治安が悪化したのは事実だが、首都は数日で平穏化した。地方でも散発的偶発的な衝突は発生していたが、SPLAIOが系統立った組織性を有し、同派による支配が確立されるにいたった領域があるとは認識していないので、国に準ずる組織とは言えない」との答弁に終始した。

 「この時期(2013年末から14年初め頃)に自衛隊が緊急撤収計画についてまとめている。隊員の安全確保のためには至極まっとうな状況だ。この時点で撤収しなかった理由は」との福山議員の質問には、稲田大臣は「PKO5原則が維持され、隊員の安全を確保しながら有意義な活動が出来ると判断したからだ」と答えた。福山議員は「事態が悪化した状況を見て緊急撤収計画を作ったのではないか」と重ねて質問したが、稲田大臣は、「緊急撤収計画自体は以前からあって、事態の悪化に備えて見直した」と答え、切迫した事態であったことは認めなかった。

 福山議員は、「自衛隊員が意味ある活動をしていることは間違いない。下令されればいつでもわれわれは頑張るという。それをちゃんと配慮して決断を下すことが政治の役割だ。いろいろな言い訳をしてPKO5原則が守られているとか大丈夫だとか言って、万が一犠牲が出ないようにして欲しい」と求めた。