民進党は18日午前、国会内で、いわゆる年金カット法案が適用された場合に、どれだけの年金が減るのか厚生労働省に対して求めていた試算の説明を聞いた。その後、党の衆厚生労働委員会筆頭理事の柚木道義衆院議員と次席理事の井坂信彦衆院議員が記者団に対して政府の試算の問題点などを説明した。

 井坂議員は、政府が提出してきた年金カット法案で年金がどれだけ減るのかの試算に関して大きく3点問題があると述べた。一つは、そもそも政府の提出した試算は年金カット法案だけの試算になっていないということ。二つ目が高齢世代の年金カット額を非常に少なく見せていること。三つめが将来世代の年金額を過大に見積もっていること――と政府試算の問題点を挙げた。

 「年金カット法案単独の効果を前提にしたカット額をいまだに政府は分かっていないし、計算もしていない。おそらく内々計算していると思うが、それを表に出していないのが問題の一つ」と井坂議員は、政府の試算が特例水準の解消や可処分所得割合減少分の除外といった年金カット法案以外の条件も同時に前提としていることを指摘するなど、問題の根拠を添付の資料に沿って一つひとつ丁寧に説明した。また、政府の試算について「高齢者の年金を月2000円、10年間カットするだけで、将来70年間、現役世代や将来世代の受け取る年金が月5000円アップしますよと、見るからに非現実的な試算になっている」と断じた。そのうえで、(1)年金カット法案の新ルールの有無だけを比較して、どれだけ差が出るのか高齢者の年金カット影響額を試算すること(2)常識的な運用利回りと正しい運用期間を当てはめた時に将来世代の年金額がいくらになるか試算すること(3)厚生年金の試算、年金カット累計額と年金アップ累計額、所得代替率(現役世代の平均手取り収入に対する厚生年金+基礎年金2人分の65歳時の年金額の比率)の100年先までのグラフの3点を厚生労働省に再提出を求めた。

政府試算の問題点

 筆頭理事の柚木議員は年金カット法案の審議入りの時期について「理事懇談会はまだまとまっていない。だから政府はこの資料を出してきた。委員会が始まったらこのような資料を全く出してこない。逆に出てきているのも異例。委員会が始まってから出せといっても出さない。出してきているのはなぜかと言うと年金カット法案が後ろめたいから」と政府が委員会を早く始めて、早く年金カット法案の審議をして欲しいから資料を提出してきているという状況を説明した。また、政府が無年金者救済法案と年金カット法案を同時に審議することを要望する理由について「法案を切り離したところで、野党が日程通りに審議採決に応じるか分からない。だから与党はやらない」と説明し、「日程通りに審議したいだけ、国会の都合であり、国民の都合ではない」と指摘した。

PDF「政府試算の問題点 井坂信彦議員」政府試算の問題点 井坂信彦議員

PDF「政府試算(10月17日提出)」政府試算(10月17日提出)

PDF「政府試算(10月18日提出)」政府試算(10月18日提出)