大串博志政務調査会長は8日午前、政調役員会後に国会内で記者会見を開き、(1)国会情勢(2)電通への強制捜査(3)今年7月の参院選挙の「1票の格差」をめぐる訴訟判決(4)山本農林水産大臣の辞任要求――等について発言した。

 国会情勢では特に、TPP(環太平洋経済連協定)承認案と関連法案を与党が4日、衆院TPP特別委員会で強行採決したことについて、「言語道断。あらためて強く抗議したい」と与党の対応を非難。「審議の内容も、農業や自動車等の分野のみならず食の安全という国民に広範に影響を与える論点に関してもまだまだ議論が必要であったにもかかわらず、途中で打ち切り、山本農水大臣の責任を問うこともないままの強行採決はあり得ないことだった」と振り返った。

 地球温暖化対策の新たな国際枠組みとなるパリ協定については、「今日まで採決が延期されることになった」と政府の対応をあらためて問題視。「私たち自身も協力する内容なので受けることにしたが、締約国会議がまさに始まる時まで日本の協定承認がずれ込んでしまったことは、温暖化対策に対する現政権の関心度の低さを表すものだと言わざるを得ない。もともと私たちは温暖化対策に対してはリーダー役だったのが、色あせてしまったことは極めて遺憾に思う」と述べた。

 また、長時間労働が背景にあるとされている女性新入社員の自殺などを受け、大手広告代理店の電通に対して厚生労働省が7日、労働基準法違反の疑いで強制捜査に入ったことに触れ、「もちろん違法状態があったとすればそれを厳しく法律的にチェックしていくことは必要だが、制度としてどうなのかという点に関しては、今の政府の熱の薄さは目に余るものがある」と批判。「今回の論点は、36協定(労働基準法36条に基づく労使協定。時間外労働をさせる場合の限度時間が規定されているが、限度時間を超えて延長しなければならない特別の事情が生じた時への対策として『特別条項付き36協定』を結ぶなど、例外取り扱いも規定されている)での長時間労働の法的上限の問題もあるが、一方で時間管理がしっかりされていなかった、組織的に時間を虚偽報告していたのではないかという論点もあるように聞いている。そうであるならば、全社的に長時間労働をしながら長時間労働をしていないかのごとく報告させる慣行があったのではないかという問題になる」などと指摘した。

 そのうえで、民進、共産、生活、社民の野党4党で衆院に共同提出した長時間労働規制法案に言及。同法案では、労働時間の上限規制や「インターバル規制」の導入、事業場ごとに「労働時間管理簿」を作成し、労働者ごとに始業・就業時刻と労働時間を記入する義務を課すことなどを盛り込んでいる。大串政調会長は、「法の実効性を高めることは極めて重要であり、今回このような事件も起こっているなかほぼ異論がないことだと思う。安倍総理は『働き方改革』と言うが、なぜか今の政府では長時間労働規制に関しては『年度末までに行動計画をつくる』ということしか決めていない。長時間労働で苦しむ方たちにとっては待ったなしの問題であり、野党の法案にぜひ与党にも賛成してもらいたい」と述べた。