野田佳彦幹事長は14日午後、定例記者会見を国会内で開き、(1)ニュージーランドで発生した地震(2)TPP承認案と関連法案に関する国会審議での政府・与党の対応――等について見解を述べるとともに記者の質問に答えた。

 ニュージーランドでマグニチュード7.8を観測する地震が発生したことに言及し、「被害の全容は分かっていないが、亡くなられた方が出たということなので、お悔みと被災者の皆さんにはお見舞いを申し上げる」と述べた。東日本大震災の際にニュージーランドから支援の人員派遣と義援金が送られたこともふれ、「日本も具体的な要請があればしっかりと支援できる体制を考えていかなければいけない」と語った。

 衆院での強行採決を経て参院で審議が始まったTPP承認案と関連法案については「すべての審議を見ていたわけではないが、安倍総理が米国も含めて関係国に国内手続きを完了するよう要請していくような答弁をされていた。そもそも民主党・共和党それぞれの大統領候補がTPPに反対するなか、この臨時国会で結論を急ぐ必要はないというのがわれわれの立場であり、拙速な審議を戒め、強引な採決は行わないように言ってきたが、そのなかで残念ながら衆院では強引な採決を行った。そのうえ、クリントン氏よりもはるかな強い立場でTPPに反対していたトランプ氏が新しい大統領になり、レームダック・セッション(改選前勢力による年末までの残り会期中の審議)についても、ホワイトハウスも共和党の幹部も見込みがないと言っているなかで、安倍総理の答弁を聞いていてむなしく聞こえた」などと印象を述べた。

 政府の年金カット法案への認識を問われたのに対しては「賃金が下がったら物価が上がっていても年金を下げるというのが中心的な部分だが、賃金が下がる場合を想定して法律の枠組みを出しているにも関わらず、賃金は上がり続けるという前提の試算を(政府は)出している。このように審議の参考になる資料をまったく出していないというところがまず言語道断だ。そして老後の生活の大きな比重を占める年金(のカット)がこういうやり方で簡単に法案として提出されること事態に極めて疑問を持たざるを得ない」と指摘し、この問題点をしっかりと追及していく考えを述べた。

 民進党など野党が通常国会に提出している長時間労働規制法案に関して、電通の過労死問題がクローズアップされるなかでのこの法案の意義と、政府が成立を目指す労働基準法改正への見解を問われ、「(電通に対して)厚生労働省の強制捜査が入ったことは極めて重大な事態だと思う。発端は去年のクリスマスに電通社員の高橋まつりさんが過労を原因として自らの命を絶つという大変悲惨な事件が発端だったと思うが、同様のケースが電通のなかでは続いているのではないか、改善をしても十分ではなかったなどが今回の強制捜査の背景ではないかと思う。過労死は現実問題として深刻な問題になっているから、電通と同じようなことが日本の企業ではあちこちで散見される。同じような悲劇を繰り返さないためにも急いで国会として対応することが必要だと思う。その意味では、民進党を中心に4党で提出してきた法案は長時間労働を規制する実効性のある法案。これを即成立させることが極めて大事だと思う。過労死をなくしていくことと、ワークライフバランスを実現すること、労働生産性を向上させていくことに意義がある。(企業側にとっては)厳しい内容と見えるかもしれないが実効性のある法律と思うので、早くこれを成立させたい」と、成立へ向けた意欲を表明した。

 そのうえで「それに比べると政府提出の法案は裁量労働制の問題を含めて、むしろ違法のサービス残業を許容する動きであって、むしろこの電通のような問題を阻むというよりも助長するような法案だと思う。われわれの法案と政府案とは大きく違う」と強調した。