野田佳彦幹事長は12日午後、国会内で定例記者会見を開き、(1)国会情勢(2)南スーダン国連平和維持活動(PKO)駆けつけ警護の運用開始(3)日ロ首脳会談――等について発言した。

 会期末が14日に迫る国会情勢をめぐっては、衆院で強行採決された年金カット法案、TPP、カジノ法案のうち現在参院で審議中の年金法案とカジノ法案について、「依然として試算等が不明確」「多くの国民の皆さんが心配されているギャンブル依存症の問題とその対策など論点がたくさんあり、その不安や疑問が解消されている状況ではない」などと問題点を挙げ、さらなる審議の必要性を強調。「政府与党がどういう対応するかは分からないが、引き続き丁寧な審議が続けられるように強く求めていきたい。この点についてはしっかり野党間の連携を強めながら対応していかなければいけないと思う。現時点でどうこうということではないが、いざというときにはあらゆる手段を排除することなく貫徹できるように頑張っていきたい」と述べた。

 参院内閣委員会は民進党の難波奨二議員が委員長に就いていることから、自民党は法案の委員会採決を省略して本会議で採決する「中間報告」も検討しているとされている。「難波委員長は中立公正にこれまで審議をされてきていると思う。その審議の持ち方を原則としながら、引き続きそうした委員長としての運営をしていただきたいと期待している」と述べた上で、「中間報告」という手法については「極めて乱暴な国会運営の典型的な事例だと思う。それを与党が検討しているかは分からないが、それは委員長を解任すること以上に乱暴な国会運営につながる。あってはならない」と断じた。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣されている自衛隊の部隊が「駆けつけ警護」の新任務を実施することが可能になったことに対しては、「安全確保の措置が十分に講じられていないなかで極めて憂慮すべき事態ではないかと心配している。米軍等では、負傷したときには10分以内に処置方針を決めることが大事であるとか、1時間以内にはきちんとその処置をする、そのための医療用キット等を持たせ、特に命だけではなく目や手足を守るための対策なども学習して対応する。そういう医療体制の整備が十分にできていない、安全確保措置が十分取られていないなかで駆けつけ警護という新たな任務を行わせることには極めて危険性が高いのではないかと思う」と問題視。こうした実態に対し、民進党は政府に自衛隊の救急救命体制の整備を行うよう求める「自衛隊救急救命法案」を衆院に提出していることに言及、「この成立を一日も早く実現させることが大事だと思う。そのために与党にも強力に呼びかけをしていかなければいけないと考えている」と述べた。

 皇位検討委員会の取り組みについては、「累次にわたって有識者のヒアリングをやってきたが14日を一区切りとしてこれまでの会議を振り返りながら中間報告を取りまとめていきたい」と表明。めどとしては、21日の常任幹事会での報告を考えているとした。

 蓮舫代表のもと掲げてきた「対案路線」については、「せっかく会期を延ばしたのだから本当は長時間労働規制法案や自衛隊の救急救命法案など、与党にも理解をしてもらい急いで成立させたい法案が多々あった。多分カジノ法案よりも緊急性が高く、必要性もあったと思うが、現時点ではその議論が進んでいないのは誠に残念に思う」とコメント。一方で、民進党など野党4党が共同で提出した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」をめぐっては、自民党は当初呼応していなかったが党首討論で蓮舫議員がこれを取り上げたこともあって最終的には動かざるを得なくなっていると手応えを示し、「実現する方法についてはわれわれももっと知恵を出していかなければいけないと思う」と述べた。

 世相を表す今年の漢字に「金」が選ばれたことを受け、自身の1文字を問われると、「金は縁がないなぁ。私の今年は金ではなく『忍』」と答えた。

 15、16日に開催予定の日ロ首脳会談については、「せっかく協議するのだから何らかの前進があることを期待したい」と述べた上で、「ただ留保しなければいけないのは、大事な原則は守った上で協議するということ。例えば、領土問題については北方4島の帰属の問題を確認した上で平和条約締結という前提があり、この鉄則は守るべきだと思う。共同経済活動についても、法の下に基づくわれわれの立場、主権をベースに置いた議論にするということ」「北方領土にミサイルが配備されていることには厳しく抗議するべきではないか。それをされたまま資金協力だけをやるということは、形態は、脅されて金を出している姿に見えないか。基本を押さえたうえで交渉してほしい」と注文をつけた。