民進党代表選挙初日の21日午後、党代表選挙管理委員会(神本美恵子委員長)主催の代表選挙候補者共同記者会見が約1時間にわたって党本部で開かれ、前原誠司、枝野幸男の2候補が政見や決意を語った。

 神本委員長は開会あいさつで同日午前10時から11時までに行った立候補受付の結果、2人の候補が立候補を届け出たと報告。「本日から9月1日の代表選出の臨時党大会まで党員・サポーターをはじめ、国民の皆さまに民進党の政策や目指す社会像を訴え、議論する代表選挙を進めていきたい。ぜひ多くの皆さまに関心をもっていただきたい」と述べた。

 前原、枝野の両候補者は届け出順に立候補への決意を5分ずつ表明。続いて、記者団から(1)野党共闘のあり方(2)原発ゼロ政策の進め方(3)憲法改正(4)消費税増税(5)経済政策、成長戦略(6)小池都知事に近い若狭氏の政治団体との連携――などに関する質問が出され、それぞれ候補者が1分ずつで回答した。最後に各候補者が一言ずつまとめの発言を述べた。

前原誠司候補

前原誠司候補

 前原候補は「自民党しか選択肢がない、そういう環境に置かれた国民は不幸だ。これは野党第1党の歴史的な責任だ。『All for  All』、みんながみんなで支えあう。全ての人たちの不安を解消し、希望、安心を作りだす。これがうまくいかなかったトリクルダウンのアベノミクスに代わり、ボトムアップとして社会、経済の変革につながる。まさに生活保障こそが求められている。これをしっかり選択肢として打ち出し、来たる衆院選挙では党の仲間を結集し一体となって政権交代を目指してがんばっていく」と述べた。

枝野幸男候補

枝野幸男候補

 枝野候補は「政権の選択肢となるためには、一時の風に流されポピュリズムに走る、こうした政党では不可能だ。地域に根差しそれぞれの暮らしに寄り添う、そうした草の根の力に支えられた政党でなければ政権の担い手たりえない。民主党政権が十分な成果を上げられなかった原因の1つに、10年以上かけて地域組織を作ってきたが、まだまだ不十分だったことがある。この数年、国会議員の間で目先の風に右往左往していないか。振り回されていないか。その反省から民進党の再生は始まる」などと語った。

 候補者発言が終了したのち、神本委員長は両候補に「明日から新潟を皮切りに全国7カ所で討論集会や街頭演説を予定しているので、ますます活発な議論をしながら国民の皆さん、党員・サポーターの皆さんにもしっかりとこれからの民進党が目指している方向を示していただきたい」と要請し、共同記者会見を終えた。


民進党代表選挙候補者共同記者会見要旨

■開会あいさつ

【司会・難波奨二代表選挙管理委員】

 ただいまより民進党代表選挙候補者共同記者会見を開催いたします。私は司会を務めます民進党代表選管委員の難波奨二でございます。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 それでは、最初に神本美恵子代表選管委員長からごあいさつを頂戴いたします。

【神本美恵子代表選挙管理委員長】

 皆さま、こんにちは。きょうは報道関係の皆様、そしてテレビやインターネット中継等でご覧になっていただいおります皆様、私は今回の民進党代表選挙管理委員長を務めております参議院議員の神本美恵子でございます。

 けさ10時から11時まで1時間、立候補の届け出を受け付けてまいりました。その結果、お二人の候補者が立候補を届け出られました。届け出順に、向かって右側から前原誠司候補、枝野幸男候補のお二人でございます。

 本日8月21日から、党代表を選出する9月1日の臨時党大会まで、党員・サポーターの皆さんを初め全国民の皆さんに、民進党の政策や目指す社会像についてしっかりとお訴えをさせていただき、議論する代表選挙を進めていきたいと、代表選挙管理委員会としても考えてございます。ぜひ多くの皆様に関心を持っていただきたいと思っております。

 活発な政策論争を通じて、新しい、私たちの目指す民進党の代表を選出したいと思っております。国民の皆様のご協力を心からお願い申し上げます。

 それでは、ただいまより民進党代表選挙候補者共同記者会見を開会いたします。よろしくお願いいたします。

【難波司会者】

 それでは、共同記者会見の進め方についてご説明いたします。

 最初に、届け出順に各候補者から5分ずつ政見を述べていただきます。

 その後、共同記者会見といたしまして、報道機関の皆様からの質問にお答えいただきます。

 質疑の最後に各候補者からまとめの発言をいただき、候補者そろってのフォトセッションで締めくくりたいと思います。

■政見表明

【難波司会者】

 それでは候補者の皆さんから、それぞれ5分以内で政見をお述べください。

【前原誠司候補】

 皆さん、こんにちは。今回、民進党の代表選挙に立候補いたしました前原誠司でございます。よろしくお願い申し上げます。

 私が今回立候補した理由を、幾つか申し上げたいと思います。

 第2次世界大戦が終わりましてから72年がたちました。焼け野原から復興を遂げていただいた奇跡の復興、高度経済成長、世界第1の経済大国・日本をつくっていただいた先輩諸氏が、今、ご高齢で年金生活をされている方々がたくさんおられます。年金は2040年までどんどんどんどん下がり続け、不安で、そして日ごろの生活を切り詰めながら、今を本当に苦しく生きておられる先輩諸氏がたくさんおられます。

 今まで払った介護保険、これは受ける権利があるにもかかわらず、現在、特別養護老人施設に入ろうと思えば、35万人以上の方がいわゆる入所希望で待たされている状況であります。

 年金も不安、介護も受けたいけれども受けられない。こういった今までの日本の立て役者をないがしろにしている政治しか選択肢がない。こんな日本は、本当に尊厳ある国家とは言えません。こういった方々を真に敬い、そして安定的に元気で長生きをしていただく、そういった新たな、自民党に代わる選択肢をつくりたい。私はそう思っています。

 ご高齢者だけではありません。若い方々、非正規雇用がこんなに増えて、働いても働いても給与が上がらない。結婚したくても結婚できない。ようやく結婚したと思っても、共稼ぎでも希望の数の子どもを持つことができない。これが日本の現状ではないですか。

 結果として少子化、結果として人口減少。地域はどんどんどんどん疲弊し、活力がなくなっていく。これを放置している自民党政権しか選択肢はないのですか。われわれはもう一つの選択肢を示す。これは民進党のためではありません、国民のために、日本のこれからのために、われわれはその選択肢を示す歴史的な使命がある。私はそう思っています。

 若い人たちに、不安から希望を。ご高齢者の方々に、安心して過ごせる老後を。不安を解消し、安心・希望をつないでいく。そのためには、その政策の中身をちゃんとご説明をし、ご理解をいただき、それを支え合う。私はそれを、みんながみんなのために、「All for All」、こういう政治を日本でしっかりとつくっていきたい。こういう思いで、今回立候補させていただきました。

 もはや日本に猶予はありません。自民党のみ。選択肢がない。そしてなおかつ、先般の都議会議員選挙では50パーセント以上の方が「支持政党がない」、選ぶものがない。これはわれわれ民進党の責任、責務だと思っています。もう一度、民進党が何を示す政党なのか。批判だけではない、建設的な、新たな、安心できる支え合いの社会をつくっていく、そういう国家的な使命をわれわれ民進党がつくるために、私は24年間の国会議員の全ての経験を生かし、自分の政治生命をかけてこの代表選を戦わせていただき、そして代表となり、党をまとめさせていただき、「All for All」の社会を必ず日本で築きたい。そう思っております。

 みんなが尊厳を感じられる、みんなが分断をなくし、みんなが支え合う。そういった社会をつくっていくために頑張る所存でございますので、どうか皆さん方のご指導ご鞭撻を賜りまして、まずは私の決意表明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

【枝野幸男候補】

 代表選挙に立候補いたしました枝野幸男です。

 出馬することに決めた動機は、危機感と怒りです。党の再生はもちろんのこと、立憲主義がないがしろにされ、政治が私物化され、考えられないような情報隠蔽がまかり通ってしまっている。こんな政治の状況に強い怒りを感じています。一刻も早く、真っ当な政治を取り戻さなければならない。

 私はこれまで官房長官や幹事長という、リーダーを支える立場で仕事をしてきました。今、53歳。官房長官は、現行制度で最年少で務めさせていただきました。そうした経験を生かし、私だからこそできることがある。リアリズムと実行力を持って、今の政治に代わる明確な対抗軸を打ち立てる。そのために私自身が生まれ変わって、今度はリーダーとしてこの党をまとめ、政治を動かしていく。そんな決意で立候補をいたしました。

 最初に申し上げておきたいのは、この代表選挙を、単にリーダーを代える、リーダーを選ぶという選挙にしてはならないということです。民進党そのものが、全体が変わっていく、その選挙にしなければならないと思っています。今の民進党が置かれている状況は、リーダーを代えたからといってすぐによくなるような、そんな甘い状況ではありません。一人ひとりがそれぞれの力を出し合い、持ち寄り、地道に一歩ずつ党を立て直していく。そのことなしに党の再生はありません。その一人ひとりの力を集めていく、そのリーダーに私はなりたいと思っています。

 幹事長として2年間、全国各地で厳しい中頑張る自治体議員の皆さん、それを支える党員やサポーターの皆さん、候補予定者の皆さん、さまざまな声を聞いてきました。その中には、本当にたくましく、力強く頑張っている仲間がたくさんいます。全国には国会議員のいない県が11あります。例えば沖縄、ゼロからというよりマイナスから、30代の若い2人が県組織の立て直しのために奔走してくれています。こうした力こそが民進党再生の原動力だと私は思っています。こうした地域の声を、地域の力を、しっかりとつなぎ合わせ、その力を最大化させる。そのためのボトムアップ型のリーダーとして、私はこの党を立て直していきます。

 党の立て直しには、自民党とは違う明確な旗が、対抗軸が必要です。その一つは、自己責任型の社会を変え、多様性と支え合いの経済を取り戻すこと。前原さんの「All for All」と大きく共鳴する理念だと思っています。

 問題は、これをどう具体化していくのか、どう進めていくのか。リアルで具体的なプログラムをしっかりとつくり上げていきます。

 「原発ゼロ」はもはやリアリズム。官房長官や経産大臣としての経験を踏まえ、一刻も早い「原発ゼロ」を目指します。

 専守防衛を外すような憲法改悪と、徹底して闘います。

 ジェンダー差別やヘイトスピーチなど、多様性をないがしろにしている問題。そして情報公開。こうしたところでも私たちには自民党とは明確に違う対抗軸があります。

 こうした対抗軸をしっかりと示し、そして地域から、草の根から、地に足つけて、いっときの風に流されることなく、民進党をしっかりと立て直していく。その先頭に立たせていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

■質疑

【難波司会者】

 これより記者の皆さんとの質疑に入ります。最初に野党クラブ幹事社の方から各候補に対しまして共通の質問を2、3問いただきたいと思います。候補者の方々につきましては、1分を目途にお答えをください。回答は選管の指名に基づいた順番でお願いをいたします。

○野党連携について

【テレビ朝日・白川記者】

 両候補にお聞きします。いわゆる野党共闘について、ご自身が代表になられた場合はどう取り組んでいかれるのか。特に党内の一部から反発も強い共産党との次期衆院選をにらんでの選挙協力をどうするのか。既に野党4党である程度の合意もしているが、それについては維持されるのか、見直しされるのかというところも含めて伺いたい。

【前原候補】

 政治家・政党の命は理念・政策です。特に次の選挙は衆議院選挙でありますので、政権選択の選挙です。この政権選択をする選挙で、理念・政策が合わないところと協力するということはおかしいと私は思います。理念・政策が合うところと、それならば幅広く協力する。そういったスタンスで臨ませていただきたいと思っております。

 前執行部で結ばれた4党の合意事項でありますが、4党が協力していろいろな取り組みをされてきた、また協力をされてきた、そういった重みというものはしっかりと受け止めながら、この是非についても見直しをさせていただきたいと思っております。

 とにかく、理念・政策。民進党が掲げる、私が掲げる「All for All」、こういった考え方。外政については、北朝鮮の脅威、そして中国の拡大路線、こういったものに日本がどうしっかり対峙していくか。その意味では現実路線。これにしっかりと考え方の合う政党との協力というものを目指してまいりたいと考えております。

【枝野候補】

 野党間で、わが党の主体性を持ちながら、できることを最大限やる、できないことはできない、そのメリハリをしっかりつけていくことが重要だと思っています。

 私は、昨年の参議院選挙を幹事長として対応に当たりました。「野党共闘」とか「選挙協力」という言葉はあの時も使っていませんし、そういう意識ではありません。あの時、現実に実行できたのは、幅広い市民の皆さんとの連携の中で野党の候補者を一本化する。そのことはできました。そして、それは成果を上げることが一定程度できたと思っています。それは、それぞれの党の理念・政策が違う中で、しかし「自民党の暴走を止めてほしい」という市民の皆さんの声を受けて、できること、できないこと、その範囲の中でぎりぎりの着地点を(見出すために)努力したからだと思っています。

 政権選択の衆議院選挙は、一層困難が大きいと思っています。しかし、一方で、現実に地域で頑張っている仲間たちを1人でも多く当選させる。そのことによって今の政治の暴走に少しでも歯止めをかける。これも私たちの大きな責任だと思っています。

 理念・政策、主体性をしっかりと守った中で、できないことはできない、しかし、できることはできる。それがどこなのか、最大限の努力をしたいと思っています。

◯原発・エネルギー政策について

【共同通信・中西記者】

 「原発ゼロ」政策の取り組みについて、2点伺いたい。

 「2030年代原発ゼロ」という現在の党の目標をさらに前倒しする考えはあるか。 また、現在検討中の「原発ゼロ」法案の国会への提出時期はいつを目指すのか。

【枝野候補】

 目標となる時期が問題、重要だとは思っていません。いかにすれば1日も早く「原発ゼロ」を実現できるのか、そのことのリアリティある工程表をしっかりと示す。そして、それに基づいて、政権をお預かりしたらそれを着実に進めていく。その工程表をしっかりと示すことだと思います。すぐにでも政権をお預かりすることができれば、おそらく相当早く「原発ゼロ」を実現できるだろうと思います。ですから、時期の問題だとは思っておりません。

 その中で、まさに政権を取ったらやらなければならない、「原発ゼロ」に向けてさまざまな課題があります。使用済み核燃料の問題もあります。あるいは、安定的なエネルギー供給の問題もあります。原発立地地域の経済、あるいは雇用の問題。さまざまなリアルな現実に真正面から向き合い、それをどう乗り越えていくのかという具体的な工程表を示し、それを年内にも法案として国会に提出したいと思っています。

【前原候補】

 民主党政権の時に「1000年に1度」と言われる大地震、そして福島第1原発の事故が起きました。いまだに福島を初め多くの被災地の皆さん方が復興に苦しんでおられる。また、ご尽力をされている。これに対して心から敬意を表するとともに、このご労苦にしっかり寄り添うことがわれわれの使命である、天命であると考えております。

 その意味においても、私が政調会長をさせていただいた時にまとめた、「2030年代原発ゼロ」を目指してあらゆる政策資源を投入する、原発のない社会を着実にしっかりと現実的につくっていくという方向性の中で、原発のない社会というものをしっかりとつくっていきたい。こう考えております。

 現在、玄葉光一郎代議士が調査会長、そして田嶋要代議士が事務局長として、わが党のエネルギー政策をしっかりまとめていただいています。この考えというのは非常にすばらしいものだと私は思っております。この調査会の議論を尊重しながら今後党内で、そういった党での議論を踏まえて、今後のあり方、そして原発のない社会の工程表をしっかりとつくっていきたい、こう考えております。

◯憲法改正をめぐる議論について

【北海道新聞・佐藤記者】

 憲法改正について今後どのように取り組まれるのか、お尋ねしたい。

 現状で特に改正すべきと考える具体的なテーマはあるか。また、今年5月に安倍総理が提唱された「憲法9条の1項と2項を維持した上で、自衛隊について明記する」という案についてどう考えられるか。

【前原候補】

 安倍政権のもとでの憲法改正には反対だというのは、国民の理解は得られないと私は思います。野党第1党として、そして政権を目指す政党として、しっかりと、国の基(もとい)である憲法の議論は行っていく。そういうリードをしていく代表でありたいと、こう考えております。

 他方で、二つのことを申し上げたいと思います。

 安倍さんが当初おっしゃっていました「今年じゅうに憲法改正の草案をまとめて、来年国会で発議する」、こんな性急な拙速な話はありません。なぜ国民投票を行うかというと、他の法律とは違い、憲法というのは権力者を縛る、そういうものであるからであります。一章一章、一条一条、国民の皆さん方にご理解をいただき、そして国民の総意として、どこが憲法として変えるべきなのか、残すべきなのかという議論は年単位でかかると私は思っておりますので、拙速な憲法改正のスケジュール、ましてや安倍さんの言ってみれば実績づくり、あるいは思い出づくりにくみするつもりは全くありません。

 また同時に、中身については、私は自分自身の考えがありますが、党の皆さん方全体を信頼しておりますので、しっかりとそこは議論していただいたらいいと思います。

 一つだけ付け加えるとすれば、安全保障法制というのは、あれは憲法違反のもとでつくられました。したがって、あの前と後では全く状況が異なった。自衛隊を憲法に書くということをしたとしても、あれを上塗りして、マネーロンダリングのように、まさに自衛隊、憲法違反を逃れようとすることについては、私は全く考え方を異にするということについては申し上げておきたいと思います。

【枝野候補】

 民主主義を強化し、国民の人権保障をより高め、あるいは国民生活や国民経済をよりよくするために憲法を変える必要がある、あるいは変えたほうがより進むということがあるのであれば、私はその議論は積極的に進めるべきであると思っています。

 これまでも党の憲法調査会長としてそうした議論をリードしてきたという自負があります。ただ、今のところそうしたものがあるという結論は、さまざまなテーマについて議論してきていますが、ありません。

 今あえて申し上げれば、これは憲法を変えないと対応ができない可能性が高いテーマとして、内閣総理大臣、内閣による衆議院の解散権。これは多くの先進議院内閣制の国でもはや時代遅れになっています。これについてさらに議論を深めていくことは積極的に進めてまいりたいと思っています。

 一方で憲法9条に関しては、立憲主義を破壊する解釈変更、安保法制、今憲法9条に手をつければそれを事後的に認めることになる、追認をすることになります。私どもの綱領には、安全保障について「専守防衛を前提に」と書いてあります。(安保法制は)専守防衛にも反しています。まずこの安保法制を、少なくとも憲法違反の部分を消さなければ、9条について議論の余地はないと思っています。

【難波司会者】

 幹事社の皆さん、ありがとうございました。これよりはご参加いただきました記者の皆さんからご質問をお受けすることといたします。一問一答形式でお願いをいたします。

◯社会保障と税の一体改革・消費税増税について

【日本テレビ・清田記者】

 両候補にお伺いしたい。消費税増税についてお考えをお聞かせいただきたい。

【枝野候補】

 私が目指す、「多様性を認め合い、お互いさまに支え合う社会」をつくっていくためには、将来的には恒久財源としての消費税の負担を国民の皆さんにお願いしなければならない。また、今の財政状況、財政健全化のためにもそうしたことが必要だと思っています。

 一方で、税はそうした“べき論”だけでは決められません。経済状況、あるいは税の使い方に対する国民の信頼、そして全体としての税のあり方、こうしたものを考える時、現状で消費税を上げられる状況ではない。消費不況はまだまだ続いています。

 それから、昨年、法人税を減税している。「法人税を減税しておいて、消費税を上げるのか」と、とても国民の皆さんの理解を得られるとは思えません。

 こうした状況では、消費税は今上げられないというのが私の考えです。

【前原候補】

 民主党政権の時の野田総理のもとで政調会長を務めさせていただきました。その時の「社会保障と税の一体改革」、これは先ほど私が申し上げた「All for All」、みんながみんなを支え合う、それのいわゆる原点だと思っておりますし、また、私はこれを与党の政調会長として進めた大いなる責任、また責務を負っていると思っております。2段階に分けて消費税を上げ、そのかわり教育、子育て、そして医療、年金、介護、福祉、この恒久財源をしっかりと担保していく。これについて私は責任を自分自身は持ちたいと思っています。

 同時に、この「All for All」というのは、ご高齢者の方々の不安を解消するために、安定した年金、介護の待遇改善、あるいは教育の無償化、さまざまなことを提唱させていただくことになります。財源が必要になります。この中間報告には、その財源論からは逃げないということで、これは党で決めております。党で決めたことですから、その財源論についてはしっかり今後、それはどういう財源なのか。行革なのか、あるいはどういう税の負担なのか。あるいはマイナンバー制度を導入して、ストックを把握し、フローの所得はないけれどもストックの所得のある方々にも応分負担を求めていく、そういったさまざまなミックスが考えられます。そういう財源論というものをしっかりと、逃げずにわれわれとしては議論していきたい。そう考えております。

【「ニコニコ動画」・七尾記者】

 両候補に。今の質問の関連だが、前原候補は消費増税を含む税制改革の必要性を強調され、枝野候補は2019年10月の消費税10パーセントへの引き上げ反対を表明されたと思う。それぞれの主張を実現するためには、現実問題として霞が関官僚から十分な理解や協力を得ることが不可欠だと思うが、それは可能なのか。民主党政権時の中心にいたご経験を踏まえて、実現可能性についてお答えいただきたい。

【前原候補】

 繰り返しになって恐縮でございますが、私は野田総理のもとで与党政調会長として、「社会保障と税の一体改革」をまとめた責任者でございました。これはしっかりと完成させたいと、こういう思いがございますが、ただ、使われ方の中身については反省もございます。つまりは、2段階で5パーセント上げる。そのうち機能強化が1パーセントで、財政再建に4パーセントというのは受益感が余りにも国民になさ過ぎたという意味においては反省点もございますので、中身についてはしっかりと考え直していかなくてはいけないと思っております。

 また先ほどのご質問は、そのいわゆる残りの2パーセント分ではなくて、将来的な消費税という意味合いの中でご質問いただいたと私は認識をしてお答えをしました。そこから先については全く白紙です。

 同時に、行革、あるいは税のベストミックス、そしてどういう国民負担を求めていくかということについては、繰り返しになりますが、党としてこれは「All for All」の社会をつくるためには国民の負担増を求めるということを機関決定しておりますので、私が代表のもとでその中身はどうするのかということについてはしっかりとまとめてまいりたいと、こう考えております。

【枝野候補】

 今の七尾さんのご質問は、政官関係のほうがメイン、趣旨ということでいいのでしょうか。(七尾記者、うなずく)。

 はい。私どもの多くが参加していた民主党政権の教訓の一つは、やはり官僚の皆さんを無意味に敵に回したということだと思っています。

 政官関係は非常に難しい。今の政権のように私的な利益のために官僚に言うことを聞かせる、こんなことがあってはいけない。一方で、官僚の理屈で政治が動いてしまってはいけない。しかし、それぞれの立場でしっかりと国のためにということできちっと話をし、筋を通して説得をしたり協議をすれば、官僚の皆さんは政治の方針に基づいて仕事をしていただける。これは特に官房長官としての経験から、十分に、間違いなくできることだと思っています。

 したがって、あの時の教訓を踏まえて、無意味に官僚とけんかをするのではなくて、特に志の高い、柔軟性を持った官僚の皆さんと、野党時代からもしっかりとコミュニケーションをとる。そして、もし政権を取れた時には、そうした皆さんを初めとして、しっかりと筋の通る進め方と内容で官僚の皆さんに知恵を出し行動していただく。こういったことができるし、やらなければならないと思っています。

◯普天間基地移設について

【沖縄タイムス・上地記者】

 両候補にお聞きします。野党として協力を現在している自由党だったり社民党であっても、辺野古という問題を重要政策に掲げている。また、民進党の沖縄県連と党本部とも辺野古問題についての解決策については差があると思うが、どのように普天間問題を解決していくか、スタンスをお聞きしたい。

【枝野候補】

 まず、今の政府が進めている、沖縄県民の多くの皆さんの声をないがしろにする、逆なでするような強引なやり方、これはやめさせなければならないと強く感じています。

 では、どういう解決策を出すか。これも民主党政権の反省と教訓の一つです。簡単に、拙速に答えの出せる話ではないということがあの時の大きな教訓であり、そのことによって特に沖縄の皆さんを中心に大きな失望を与えてしまいました。

 まずやることは、あの時のプロセスを含めて、現状、そして背景、それについての検証を始めなければいけないと思っています。

 その検証の中から、リアルな、現実的な、そして沖縄の皆さんも、日本政府としても、あるいはアメリカとしても納得できる答えを見出していく。その努力は、いろいろな経緯のあるわれわれももう始めなければならないと思っています。

【前原候補】

 私もまず沖縄県民の皆さん方にお詫びから申し上げたいと思います。民主党政権の時に、辺野古への移転を取り消して、そして県外、できれば国外と、こういった期待だけを県民の皆さん方に持たせてしまい、結局それができずに辺野古に戻ってしまったと。そして期待から失望に変えてしまったということについては、あらためて沖縄県民の皆さん方にはおわびを申し上げたいと、こう思っております。

 その上で、今回の辺野古への移設というものは、他の沖縄の基地負担の軽減というものとパッケージで、これは私も外務大臣として進めさせていただきました。アメリカは、当時は、辺野古への移設を認めなければ他の基地の変換は認めないということに固執しておりましたが、それを後の玄葉外務大臣の時にいわゆるデカップリングというやり方をして、辺野古の決定がなされていなくても基地の返還、沖縄の負担軽減というものには取り組みをさせていただく仕組みをつくらせていただきました。

 われわれが、沖縄の皆さん方にご迷惑をかけたことを認識しつつ、今のプロセスというものを、われわれが戻ってしまったわけで申しわけなかったわけでありますが、進めてきたプロセスでございますので、これについてしっかりと進めることが大前提になると思っておりますが、他方で沖縄県民の皆さん方のお気持ちをしっかり酌み取るような話し合いのプロセス、こういったものも同時並行でしっかりと受け止めるのが政治の役割だと、このように感じております。

◯野党連携について

【「日刊ゲンダイ」・生田記者】

 野党共闘について両候補に伺いたい。昨年夏の参議院選挙は、岡田代表のもと、立憲主義を取り戻すというようなところが大きな一致点で共闘されたと思う。今回、衆議院選挙なので、先ほど両候補がおっしゃったように政権選択ということで、野党共闘はよりハードルが高くなるとは思うが、一方で前の参議院選挙と全然状況が違うと思っている。それはさきの通常国会で森友問題・加計問題を通じて、それは共産党も民進党も疑惑を追及したからだが、私物化、えこひいき、うそ答弁、こういうものに対しての、国民のわかりやすい怒りが非常に広がっている。それは前の参議院選挙の時とは全く状況が違う。この点については、それこそ野党で一致して協力できる点だと思う。つまり、立憲主義を取り戻すよりももっと野党と共闘できる点が今増えているのではないか、大きくなっているのではないかと思うが、両候補の見解を伺いたい。

【前原候補】

 今ご指摘をいただきましたように、参議院選挙というのは4党で政策合意をして、そのもとに協力をするということでありました。

 今度は衆議院選挙。これは政権選択の選挙でございまして、政策・理念の一致というものが基本的に必要になります。そして私は、わが党の理念・政策に協力していただける党であれば全ての党と協力すべきだと、このように考えております。

 あとは他党がどのようなご判断をされるのか。今ご指摘いただいたように、森友あるいは加計問題、こういった問題でとにかく安倍さんの暴走は止めなければいけないんだということの中で、例えば、民進党の候補を応援したい、そして候補者をおろさせていただくということをご決断いただくということになれば、それは安倍政権を打倒するために大所高所から他党がご協力をいただけるのだということで、心からありがとうございますということは申し上げたいと、このように思っております。

 また、地域性もありますので、そういった点についてはわれわれしっかりと基本線、基本原則というものは持ちながら、どうすれば多くの議員が当選し、そして政権交代が実現できるかという大所高所に立って考えてまいりたい。こう思っております。

【「日刊ゲンダイ」・生田記者】

 今の話だと、民進党に協力してくれる、という言い方だった。民進党のほうが歩み寄るという姿勢は感じられなかったが、いかがか。

【前原候補】

 野党第1党として、政権選択の選挙ですので、基本的には全ての選挙区で候補者を立てるということを原則にしたいと思っています。

 ただ、他党も候補者を立てておられるところもございます。これは、別に今、共産党の話をしているわけではありません。他の政党も含めてであります。われわれが立てるよりも、そういったところのほうが通りやすい、当選が可能であるというところについては柔軟に考えていかなくてはいけないと思っておりますが、われわれ野党第1党としての原則というのは、理念・政策が一致したところとしか、政権選択の選挙ですから、そういったものと協力をしていく。また、それにご賛同いただければ全て協力をしていく。そして、今申し上げたように、どうすれば安倍政権を倒せるかという、他党の言ってみれば戦略も、われわれの見きわめも、そういったところも柔軟に考えてまいりたいと思っております。

 大事なのは、繰り返しになりますが、政策・理念が一致すること。これが大事だと思います。

【枝野候補】

 この問題は、相手もあることですし、それから地域事情もあります。だから、相手のあることをここで、民進党の代表選挙で、あまり具体的なことまで固めて話をできる性格ではそもそもないと私は思います。

 大事なことは、原則は、どういう原則でやるのかということです。先ほど申しましたとおり、党が違うのですから理念・政策が違うのは当たり前です。その中で、でも一致する部分もある。まさに参議院選挙は、「立憲主義を守る」という点で一致をした。一致ができた範囲で、できることを最大限やる。でも、一致していないこともたくさんあるのだから、できないこともたくさんある。あとは具体的な、お互いの立場を踏まえた中で、何ができるのか、できないのか、ということが個別に結論が出ていくことだと思います。

 そうしたことの中で、ご指摘のとおり、安保法制を踏まえた、「立憲主義を守る」というテーマだけではなくて、この情報隠蔽や政治の私物化を許さないということについては、おそらく他の野党の方とも共通しているのだろうと思いますから、共通している部分は大きくなっている。

 しかし一方で、政権選択選挙である。政権を共有するということは、100パーセントとはいかなくても、やはり理念・政策の相当部分が共通されていなければ、政権をつくっても失敗して国民の失望につながることになるので、できません。

 したがって、政権選択選挙であるがゆえに参議院選挙より難しいことがたくさんある。そういった原理原則の中で具体的に何ができるのかということをリアルに模索していくということだと私は思っています。

◯経済政策について

【NHK・稲田記者】

 両候補に経済政策について伺いたい。安倍政権はアベノミクスという政策を推し進めてきたが、この政策に限界がある、あるいは多くの人が享受を受け切れていないという指摘がある。お二人は、安倍政権との違いを打ち出すとおっしゃっているが、具体的にどういう経済政策を描いていこうとするのか。また、その際の財源はどのように得ていくのか、お聞きしたい。

【枝野候補】

 現在の不況は、経済の低迷は、消費不況です。消費を増やさない限り、実は国内消費向けの投資も増えない。まず消費を増やすこと。

 なぜ消費が冷え込んでいるのか。それは格差が拡大し、低賃金で不安定な働き方の人が増えて、可処分所得が減っているのですから、消費が冷え込むのは当たり前です。

 経済を立て直すには、賃金の低い方、そして中くらいの方、そうした皆さんの所得を底上げすること。これが可処分所得の増大につながり、消費を拡大させる。ですから、私は具体的に人手不足の分野である、しかも低賃金である看護師、介護職員、あるいは保育士、こうした人たちの賃金を公的な資金を投入してでも底上げをするということを言っています。

 これは前原さんの言う「All for All」、私の言う「お互いさまの支え合いの社会」という、将来のビジョンを実現することに向けたプロセスであると同時に、短期的には、それ以上に最大の景気対策、経済対策だと。この位置づけを明確にしておかなかったことが、今まで若干理解を得られなかったことだと私は思っています。

 景気対策ですから、景気が悪い時には国債を発行してでも財政投入する。当たり前じゃないですか。

【前原候補】

 アベノミクスというのは「3本の矢」と言われましたが、財政出動、そして金融緩和、このいわゆるカンフル剤を打って何とか景気を刺激しようというものでありました。特に効いたのが金融緩和。金利を下げて、そして他国との金利差を広げて円安誘導、そして企業の株価を上げて、企業はもうかると。

 しかしながら、問題だったのは労働分配率が低下して、賃金は上がらない。そして企業の内部留保はどんどんどんどんたまっていった。これがアベノミクスの結果であり、しかも円安になると輸入物価が上がりますので、5年連続、賃金が上がらないのに輸入物価が上がって、実質賃金がマイナスになり、そして消費が落ち込むということで、GDPの6割は消費ですから、アベノミクスというのは企業をもうけさせ、個人を細らせ、結果的に消費を落ち込ませて経済の低迷が続くという、自業自得の経済政策がアベノミクスだったと思います。これは「トリクルダウン」という言われ方をしていますが、結局、下まで落ちてこないというのがアベノミクスの問題点。

 私が申し上げている「All for All」というのは、全ての世代の不安を解消するということでありますので、例えば教育の無償化とか、あるいは年金・介護、あるいは職業訓練、さまざまな世代の方々に対する現物給付を中心に施策を行うということでございますので、ボトムアップ型なのですね。そして現物給付ということは、一種の公共事業になります。公共投資になります。そしてまた雇用を増やすことになります。こういうボトムアップ型の好循環をつくっていこうというのが基本です。

 加えて、それだけではなかなかいけないだろうということで、私が国土交通大臣の時に進めたインバウンドのお客さんを増やすための施策は進めていくべきだと思いますし、種をまけたという自負もあります。

 それから大事なのは、地域においてはやはり農業・漁業・林業なのですね。これについて、あまりにも今の政権は力を入れなさ過ぎる。例えば、私は北海道によく行きますが、北海道というのは観光と同時に農業大国なのですね。漁業大国なのです。こういうところをしっかりと支えるという政策がまだまだ足りなさ過ぎる。地場に根差した政策、地域の雇用を生み出す政策、地域の活力を生み出す政策。農業や、そしてクリーンエネルギー、ライフイノベーション、つまり健康産業ですね、こういったもので活性化していきたいと考えております。

◯憲法改正をめぐる議論について

【産経新聞・松本記者】

 前原候補に、憲法改正について伺いたい。先ほど、安倍首相が提案した改憲案について、拙速なスケジュールであるという認識を示されたが、スケジュールではなく、中身についてお伺いしたいが、先般の雑誌のインタビューで前原さんは、9条3項あるいは10条といった形で自衛隊を明記してはどうかということを述べられていて、字づらだけ見ると安倍首相の提案と似通っているのかなとも思うが、中身についての評価をお聞きしたい。

【前原候補】

 まず時系列的に申し上げると、私が申し上げたほうが早いのです。安倍さんはその後から言われて、中身が似通っているということでありまして、私が安倍さんに追随したわけではございません。

 なおかつ、先ほど記者会見の場でご質問にお答えしたとおり、安保法制というのは憲法違反に基づいた法律でありました。百歩譲って、その政策内容が必要だ、正しいというふうに考えたとしても、憲法に違反した法律は全て違憲です。したがって、それを残したまま、新たに自衛隊を憲法に書くというようなことをすれば、マネーロンダリング、その上書きになるということにおいて、安倍さんとは意見がその点においては根本的に異なるということを先ほど申し上げた。そのことをしっかりとお伝えしたいと思います。

◯安全保障政策・北朝鮮ミサイルへの対応について

【朝日新聞・岡本記者】

 安全保障政策についてお二人に伺いたいが、今、北朝鮮とアメリカとの対立がだいぶ深まっていて、北朝鮮がグアムにミサイルを打つと宣言をして、日本上空を通過すると言っている。お二人とも安保法制は違憲という立場だとは思うが、この事態がもし発生した場合に、日本はどう対応すべきだとお考えなのかお聞きしたい。

【枝野候補】

 まず、その撃ち落とす能力は、あと2年ほど日本の自衛隊は装備されません。

 そして日米同盟というのは、本当にそれをやらなければ壊れてしまうような脆弱なものであるのか。グアムはアメリカの領土ですから、アメリカの領土を守るためにどうしても必要なことであれば、それは本来、アメリカ軍が自ら装備をするはずであります。そうしたことを考えると、どこかの外務副大臣が、撃ち落とさなきゃ日米同盟がだめになるという無責任なことを言っていましたが、そうした情緒論に流されてはいけないと思っています。

 わが国は、やはり基本的には専守防衛。領土・領海が攻撃されたことに対して、それは全力を挙げて領土・領海、国民を守るということですが、それを超えてできるということをつくってしまえば、じゃあどこまでができて、どこまでができないのか、本当に恣意的に判断が変わっていく。第2次世界大戦、日中・日米戦争の時は、この間もNHKが報道していましたが、インドに行くことが生命線であるというところまで行ったわけです。

 ですから、やはり領土・領海・領空を守るということを超えるということについては、日本の自衛隊がどこまで何をできるのかということが無限に拡大するスタートになりかねないということで、それをせずにどう日米同盟を維持しわが国の領土・領海を守るのかということに全力を挙げるべきだと私は思っています。

【前原候補】

 まず、イージス艦から発射されるSM-3、スタンダードミサイル3というものについて申し上げれば、北朝鮮からグアムへ発射されるものについては、日本にそれを撃ち落とす能力は現時点においてはありません。したがって、それを今議論することは現実的ではないと私は思っております。

 加えて、北朝鮮のミサイル、あるいは核開発に対してどう対応していくのか。これは日米の同盟関係の中での抑止力に頼ると同時に、国際社会の中での国連決議、そして制裁をしっかりと働かせるということで北朝鮮から譲歩を引き出すという、まさに対話と圧力の路線というものは、これは政権が異なろうが、われわれが政権を取っても方向性としては変わらないものであり、しっかりと対応していかなくてはいけないことだと思っております。

◯経済政策について

【「FACTA」・宮嶋記者】

 お二方の分配政策はよくわかったが、さて、それでは成長はどうするのだと。アベノミクスという成長戦略に代わる、セイジノミクス、ユキオノミクスという構想があるのならば伺いたい。

 先ほど前原さんは観光とおっしゃったが、前原さんはその文脈で、例えばIR議連の副会長もやっておられた。すると、例えばIRについても、代表になられたら成長という観点で見直すことがあるのか。

 お二方は50代で若いわけで、パイを大きくすることについてどういうお考えがあるのか伺いたい。政見にはその部分がないものですから。

【前原候補】

 安倍政権って、成長していないんですよね。実質GDPというのは民主党政権のほうが高かった。経済成長率、年率平均は。これはなぜかというと、先ほどお話をしたように、GDPの6割を占めるのが消費ですから、消費を冷え込ませる施策をとっているがゆえに、むしろ安倍政権のほうが実質成長率、年率換算にすれば低いという非常に皮肉なことになっているということでありますので、まずこのアベノミクスの、特に金融緩和、円安頼みの政策をやめることによって、ある程度の成長というものが今よりも出てくるのではないでしょうか。

 また、先ほど申し上げたように、分配型政策に変えるということ。そして地場型。6次産業化、そしてクリーンエネルギー、またライフイノベーション、全て地場型の産業。これをしっかりと成長させることが、何よりも地域に雇用をつくるという意味で大事だと思っております。

 私は国交大臣の時に、インバウンドを増やすためにさまざまなことをやらせてもらいました。例えば羽田を国際化するとか、伊丹と関西空港をくっつけて、そして運営権を民営化することによって、私が大臣の時に10万回ぐらいの離発着でしたが、今17万、18万回まで増えているということで、大きなインバウンド効果があったと思いますし、ビザの緩和、オープンスカイ政策、さまざまやらせていただきました。

 その一環として、インバウンドを増やすためにIR、統合型リゾートについての取り組みを観光庁長官に指示をしたわけであります。つまり、言ってみれば私がその先鞭を切ったと思っています。他方で、わが党の中にはこのIR、カジノについて慎重論も多いのが事実であります。私は、代表になれば、ならせていただければ、党をまとめることをしっかりと行っていきたいと思っております。したがって、党の中に賛否両論あるものについては自分の意見を一旦控えて、どう党内議論の中でまとめるかということを優先したいと思っておりますので、私は実は、この代表選挙に出るまではIR議連の会長をしておりましたが、IR議連の会長は代表選挙に出た時点で辞任をさせていただくということを表明しております。

【枝野候補】

 バブル崩壊以降の日本の経済の低迷、つまり成長しないという状況の原因は内需にあると、これは客観的な状況だと私も思います。輸出企業・輸出産業は、厳しい状況にあるのは間違いありませんし、国際経済の影響で波はあります。しかしながら、実は一定の着実な成長をこの間しているのです。成長していないのは内需。これがマイナスだから相殺されてゼロ成長、というのが今の実態です。

 したがって、成長のためには、まずマイナスになっている内需のところをしっかりと底上げをする。それは成長戦略とは直接関係なさそうに見えるけれども、まさに分配を正して、所得の低い人たちの所得を底上げする。それも、ただ何もしなくてお金を配るのではない。まさに今需要のある介護とか保育とかさまざまなところ、今象徴的にパイとしても大きい部分を申し上げていますが、さまざまなところにある公的なサービスで、人件費が安いために人手不足の分野の賃金に公的資金を投入すれば、それは消費の増大につながる。これによって、内需部分のところをしっかりと下支えをすれば、輸出企業・輸出産業のところの、波はあるけれども、苦しいけれども成長している部分がまさに全体の成長につながってきます。

 その上で、実際に輸出関係を含めた成長ということを考えたら、やはり大転換、意識の転換が必要だと私は思います。日本が貧しい時代は、規格大量生産で大きく稼いで成長しました。でも、先進国は安い人件費で安い物をつくって成長するというのは構造として困難です。したがって、大量生産分野でないところで成長させなければならない。もちろん研究開発などもそれに含まれますが、実は、ここを伸ばせば全体が大きくなるなんていうことはないんです。いろいろな分野の、いろいろな地域のさまざまな、規格大量生産とは逆です、少量多品種、そういう分野をどう伸ばしていくのかということなので、逆に言えば、一言で語れるような成長戦略を語ったらうそになる。そうした、どこに隠れているかわからない、一個一個は小さいけれども、それを成長させるような施策を、つまり土台を、プラットフォームをつくれるか。これが経済産業大臣もやらせていただいた中で、大事なことだと思っています。

 なお、私はカジノには徹底的に反対する方向でぜひ党をまとめたいと思っています。

◯野党連携について

【日本テレビ・中村記者】

 両候補に伺いたいが、小池東京都知事に近い若狭氏が年内にも新党立ち上げの動きを見せている。この勢力との連携についてはどうお考えかお聞きしたい。

【枝野候補】

 理念も何も掲げていないものとどうこうするだなんていうことは、お尋ねになるほうがおかしいと私は思っています。

 そして人間、変わりますから、「今まで間違いでした」と言って変わることはあるかもしれませんが、安保法制にも賛成し、アベノミクスにも賛成し、特定秘密保護法にも賛成し、「共謀罪」にも賛成してこられた方と、われわれとは立ち位置が違う。自民党の補完勢力の可能性が高いと見ざるを得ないと私は思っています。

【前原候補】

 小池都知事については、国会議員のバッジを外して、リスクをとって知事選挙に出られ、そして当選され、その後、ブラックボックスだった例えば豊洲・築地の問題、あるいはオリンピックの経費の問題、都民のみならず国民に対してしっかりとオープンにする、そういった姿勢というものが評価をされているのだと思います。そういう意味では、小池さんが進めておられる都政については私は一定の評価をさせていただきたいと思います。

 他方で、若狭さんがやられようとしているものは、小池さんとどれだけ連携されているのかどうかもわかりません。そして何よりも、国政を目指される場合の政策・理念、これがまだ明らかにされておりませんし、与党か野党かもわからないということでありますので、私どもは全ての勢力と、理念・政策が一致するところと協力する、こういうスタンスでございますので、そういったものを出された時に判断をさせていただきたいと、こう考えております。

■まとめ

【難波司会者】

 それでは、大変申しわけございませんが、記者の皆様からのご質問はこの程度で打ち切らせていただきたいと思います。

 最後になりますが、お二人から一言ずつまとめの発言をお願いしたいと思います。1分以内でお願いを申し上げます。

【前原候補】

 皆さん、ありがとうございました。私は、一番初めに申し上げたように、自民党しか今選ぶ選択肢がない、そういう環境に置かれている国民は不幸だと思いますし、これはわれわれ野党第1党の責任である、歴史的な責任である、そう思っています。

 「All for All」、みんながみんなを支え合う、全ての人たちの不安を解消し、そして希望・安心をつくり出し、それがうまくいかなかったトリクルダウンのアベノミクスに代わり、ボトムアップとして社会・経済の変革につながる。まさに生活保障こそが今求められていると考えております。

 これをしっかりと選択肢として打ち出し、来る衆議院選挙ではわれわれ、党の仲間、結集をして、一体となって政権交代を目指して頑張っていく所存でございますので、もう一度われわれに、民進党に、チャンスを与えていただくように心からお願い申し上げまして、私の最後のごあいさつをさせていただきます。

 ありがとうございました。

【枝野候補】

 政権の選択肢となるためには、いっときの風に流されポピュリズムに走る、こうした政党では不可能です。地域に根差し、それぞれの暮らしに寄り添う、そうした草の根の力、それに支えられた政党でなければ政権の担い手たり得ません。民主党政権が十分な成果を上げられなかった、そのことの原因の一つに、10年以上かけて地域組織を頑張ってつくってきたけれどもまだまだ不十分だったということがあると思います。

 この数年、残念ながら特に国会議員の間で目先の風に右往左往していないか、振り回されていないか、その反省から民進党の再生は始まると思います。地域で歯を食いしばって厳しい中でも旗を掲げて頑張ってくれている仲間がいます。そうした人にしっかりと顔を向けられるように、地に足つけて、風に流されることなく党を再生していけば、必ず国民の理解を得られると私は確信しています。

 そのために、草の根からの、ボトムアップ型の新しいリーダーシップを発揮してこの党をまとめていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

【難波司会者】

 ありがとうございました。この記者会見の最後に当たりまして、神本美恵子選管委員長よりごあいさつをいただきます。

【神本代表選管委員長】

 予定の時刻となりましたので、共同記者会見、これで終わりたいと思いますが、記者の皆さん方、本当にまだたくさん手が挙がっているところで打ち切らざるを得ないのを申しわけなく思います。ありがとうございました。

 候補のお二人には、あしたから、新潟を皮切りに全国7ヵ所で討論集会・街頭演説等を予定しておりますので、ますます活発なご議論をいただきながら、国民の皆さん、また党員・サポーターの皆さんにも、これからの民進党が目指している方向をしっかりとお示しいただきますようにお願いをしまして、最後にお二人並んで手をつないでその決意を示していただきたいと思います。

 皆さん、ありがとうございました。 (両候補、しっかりと握手)

【難波司会者】

 ありがとうございました。

(以上)

代表選候補者共同記者会見

握手する両候補