衆院予算委員会で20日、社会保障・人づくり改革等をテーマに集中審議が行われ、民進党会派の無所属の会の金子恵美議員が2014年介護保険法改正以降の介護サービスの運営実態等に関して質問した。

衆院予算委員会 金子恵美議員パネルデータ「新しい地域支援事業の全体像」

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 金子議員は地元・福島県南相馬市で聞いた障害者団体関係者や介護従事者、社会福祉協議会関係者等の声を踏まえて「国民の皆さんが抱えているのは医療・介護・福祉という、生きるための課題だ」と述べ、深刻化する介護現場の人材不足等の問題を取り上げた。

 2014年介護保険法改正以降、要支援者へのサービスが全国一律で行われていた訪問介護・通所介護などの介護予防給付から、自治体が裁量で事業を展開する地域支援事業である日常生活支援総合事業へと移された変化について言及した。金子議員は「総合事業に含まれる生活支援サービスは住民のボランティアといった多様な担い手なども期待できるとの(政府の)説明があったが、一方でリハビリや介護予防や認知症の利用者のケアなど、重度化を予防するためには介護専門職が提供するサービスも不可欠」と指摘した。そのうえで、財政状況の厳しい自治体が従前より安い単価を設定したために事業者が撤退しているとの報道があることを問題視。また、300自治体が介護の担い手不足で運営上の不安を感じ、109の自治体で業者を十分に確保できないと回答している点を深刻に受け止めるべきだと訴えた。

 法改正にあたって安倍総理が「多様なニーズを持つ要支援の方々に対してよりふさわしいサービスを提供していくことができる」旨を答弁したことを紹介したうえで、実際には調査を見る限り課題があることは明らかだと指摘。「介護費を削減するために住民やボランティアの方々に頼っていく。(その結果)もしかすると十分にサービスを提供できない結果となっていく可能性もある」と述べ、本来の介護現場では予防が重要で要支援1・2の軽介護者であっても重要であるのに、その予防ケアを受けられないことで介護度が上がっていく可能性があるとして、ボランティアの専門教育と専門職の人材不足解消が重要だと問題提起した。

 加藤厚生労働大臣は、介護人材の確保に向け月額4万7千円の処遇改善とリーダー級(勤続年数10年以上)の職員に8万円給与増を行う予定だなどとしたが、金子議員は介護福祉士の勤続年数の平均はホームヘルパー6.3年、ケアマネージャー8.6年など、多くの人は10年に到達する前に退職している実態を明らかにし、「そこに到達するまでに処遇改善をしっかりやっていかないと続かない(制度だ)」「介護費をいかに削減していくかという財務省の考え方によってこの仕組みがつくられた。しかし、機能していない。政府がやらなくてはいけないことは少子高齢社会の中でいかに(政治家が)国民を守っていくことができる仕組みづくりをしていけるかということ」と述べ、介護難民が出てしまいかねない現状を前にしっかりとした取り組みを行うよう注文をつけた。

PDF「衆院予算委員会 金子恵美議員配布資料」衆院予算委員会 金子恵美議員配布資料

【衆院予算委】金子恵美議員、介護サービスの運営実態等について質問

【衆院予算委】金子恵美議員、介護サービスの運営実態等について質問