「新しい公共」の推進と共生社会の実現

  • すべての人に居場所と出番があり、皆が人に役立つことの喜びを大切にする「共生社会」の実現に向けて「新しい公共」をさらに積極的に進めていきます。個人やNPO・NGOなど市民団体・企業など多様な主体が、「当事者」として公益活動に参加し、それぞれの特性を活かし、役割と責任を担いながら協働(ネットワーク化と連携)を進め、「共生社会」実現に向けた当事者たちの「協働の場」を広げていく環境を整備します。それにより、新しいサービスが市場に興り、活発な経済活動が展開され、よい循環の中で発展する社会を実現します。

  • 市民が公益を担う社会に向けて、引き続きNPOやNGO、地域の協同組合や自治会など多様な「新しい公共」の担い手とその活動を応援していきます。担い手と緊密に連携しながら、その経営基盤や運営力、資金力の強化、人材育成・基盤強化のための政策・予算措置に取り組みます。また、社会的事業推進のための法人・認定制度や情報公開制度の見直し、ICTなどを活用して公益活動や社会事業の推進、政府・自治体の意思決定プロセスへの参加の促進、大規模災害時の政府・自治体との連携構築などに取り組み、「新しい公共」をさらに広げていきます。

NPO法人制度・中間支援組織支援

  • 認証期間の短縮やインターネットを活用した情報開示の強化等を内容とする「改正NPO法」の成立を踏まえ、今後も各地域の実情に合った多様なNPOが活躍することができるよう環境整備に向けて取り組みます。

  • 「新しい公共」の担い手の中核となる団体は未だに人的・財政的・組織的基盤が弱いことから、その事業推進力が十分ではありません。「新しい公共」をさらに推進するため、地域での活動や組織運営の基盤の強化に資するよう、中間支援組織などに対する国の新たな財政的な支援制度の創設の検討に取り組みます。またこれまで地域で公共を担ってきた協同組合、自治会などについて、活動や組織運営の充実・強化のための施策や支援措置について検討を進めます。

寄附税制の拡充と支援措置の強化

  • 認定NPOや公益法人等に対する寄附税制を維持・拡充します。ふるさと納税との「官民格差」を是正するとともに、遺贈・相続財産寄附やフードバンクへの食品寄附といった現物寄附の推進等、寄附文化の醸成につながる税制面での支援措置について改善を図ります。あわせて、特定寄附信託(プランドギビング)において、現金だけでなく土地・建物も信託対象となるよう制度改正に取り組みます。

  • 創業補助金や信用保証制度をはじめ、中小企業が利用できる制度をNPO法人や地域の協同組合など「新しい公共」の担い手の間へ普及・利用拡大を進めるとともに、さらなる拡充へ制度改正の検討を進めます。また、こうした金融制度面の支援により、市民金融(NPOバンク)が機能し、新しい公共の担い手が資金を得やすくするよう、制度改正に取り組みます。

  • 休眠預金は10年間で6,000億円から9,000億円が累積されると見込まれています。「休眠預金活用法案」を成立させ、特に、未来のための投資として、子ども・若者支援、生活困窮者支援、地域活性化に対する支援をはじめ、再生可能エネルギー事業者、子育て事業者、社会的起業など、新しい公共の担い手を中心に育成します。長期資金の供給が求められながら既存の金融システムや公的ファイナンスでは十分に手当てされていない分野に、休眠預金の活用を進めます。あわせて地域の受け皿として課題解決と資金循環を促進する役割を担うコミュニティ財団の育成と、NPO法人等の信頼性・透明性向上に向けた取り組みを進めます。

民間公益活動

  • 民間公益活動を活性化させるため、所轄庁の体制が地域によって差があることを是正することをはじめ、公益認定基準の見直し、公益法人の会計基準の見直し、公益信託制度の抜本改革、誰でもアクセス可能な情報公開制度の構築などにより、民間の公益事業の自立的発展を後押しします。

官民の連携の推進

  • 成果評価に基づき歳出削減があった分を払い戻す「ソーシャルインパクトボンド」による地域課題解決やクラウドファンディング等の手法を用いた「ふるさと投資(地域活性化小口投資)」による地域のソーシャルビジネス支援等、官民の連携により民間の資金を「新しい公共」の担い手につなげる制度を進め、社会的投資の基盤整備を進めます。

  • 弁護士や税理士などの専門家による「プロボノ」を促進するとともに、NPOなど「新しい公共」の担い手と、国・地方自治体職員との人的交流を拡大することにより、担い手支援を進めます。

大規模災害時における官民連携と活動支援

  • 大規模災害において、NPOをはじめとする災害ボランティアの役割は重要度を増すとともに期待が高まっています。関東・東北豪雨災害や熊本地震においても官民連携した支援活動が展開されてきました。しかし、官民連携による支援活動の際の協議の場は制度上位置付けられておらず、災害のたびに関係機関に呼びかけ、調整が行われている現状です。今後、災害時から復興時にかけてスムーズな連携が取れるよう、その協議の場への国・自治体の参加や位置付けを明確化するなど、平時から官民連携の支援に向けた環境整備を進めます。あわせて、大規模災害発生時において復旧復興支援活動を行う認定NPO法人・公益法人等への指定寄附金が速やかに適用されるよう、その制度化に取り組みます。

ワーカーズコープ法の制定

  • 労働者協同組合(ワーカーズコープ)を「新しい公共」の重要な担い手の一つとして位置付け、組合員が協同で出資し、協同で経営し、働く意志のある者による就労機会の自発的な創出を促進するとともに、地域社会の活性化に寄与し、働く意志のある者がその有する能力を有効に発揮できる社会の実現に資することを目的とする、労働者協同組合法(ワーカーズコープ法)の法制化実現に取り組みます。

オープンガバメント(開かれた公共)

  • 行政が独占してきた公共政策にかかわる情報を活用しやすい形で公開することにより、行政の透明性と信頼性を向上させます。情報通信技術を活用した効率的な情報共有やコラボレーションを通じ、市民・企業など多様な主体が政策決定プロセスに参画して、ともに公共を担うオープンガバメント(開かれた公共)への転換を進めます。「新しい公共」の担い手が、行政とともにビッグデータやクラウド、ソーシャルメディアなどを活用して新たな社会的事業や公的サービスを創出・充実させることにより、地域における公共を強くしなやかなものへと発展させます。

  • 2030年代に原発ゼロ社会をめざすとした当時の政府の決定に関し、国民が学習や討議を通じて課題について熟慮し、その結果を把握する新しい手法である「討論型世論調査」が大きな役割を果たしました。この方式はこれまで世界中で多くの実績を積み重ねてきたものですが、政府の政策決定過程の一部に位置付けられたのは世界で初めてでした。日本政府の将来の選択として重要なだけではなく、国民一人一人にとっても大事な課題について討論型世論調査を積極的に行えるように環境整備を進めます。

  • 行政の審議会は利益代表的な性格が強く、年齢、男女比に偏りがあります。若者、女性、障がい者等、多様な当事者の参加により、広く意見が反映されるよう、審議会等の委員構成の見直しを図ります。