【語る】「人への投資」の政策を推進する 細野豪志代表代行、江田憲司代表代行、前原誠司調査会長


 蓮舫代表のもと、民進党では「政策アップグレード検討会」「ムダ遣い解消プロジェクトチーム(ダレノ〈誰の?〉ミクスプロジェクト)」「尊厳ある生活保障総合調査会」などを設置。国民が求める政治の実現に向け、取り組みを重ねている。それぞれを主宰する細野豪志会長、江田憲司座長、前原誠司調査会長に話を聞いた(写真は「民進党の経済政策案」の最終とりまとめにむけた「次の内閣」会議での議論)。

■政策アップグレード検討会

●民進党の新たな「売り」をつくる●

会長 細野 豪志 (ほその・ごうし)代表代行

会長 細野 豪志 (ほその・ごうし)代表代行

 民主党には、子ども手当、高速道路の無料化、最低保障年金など「売り」となる政策があった。ご批判も頂いたが、それらの政策は国民に定着し、これらへの期待が政権交代の一つの要因となった。3月に困難を乗り越えて結集した民進党だが、残念ながら国民から新たに期待される政党とは見られていない。その原因の一つは、民進党の柱となる政策が明確ではないことにある。私自身、全国を回る中で、自治体議員、総支部長、党員・サポーターの皆さんから、早く「売り」となる政策をつくるべきだとのご意見を耳にした。
 「政策アップグレード検討会」の役割は、民進党の新たな「売り」をつくることにある。民進党が綱領で示した社会を実現するための中長期的な政策を検討し、次期総選挙に向けた目玉政策の取りまとめを担っている。
 最も重要なことは、国民の皆さんの関心が高い景気・経済政策と社会保障に正面から向き合うこと。これまでは、社会保障は経済成長のお荷物と考える向きがあったが、少子・高齢化、人口減少が進む中で、こうした考えを根本的に見直す必要がある。公共事業の経済効果が1・1倍程度にとどまるのに対し、就学前教育に対する投資は2倍を超えるとの専門家の指摘もある。民進党は、経済政策と社会保障を一体的に捉え、特に「教育の無償化」を通じて、足元の景気回復、将来の安定成長を実現することを目玉政策に掲げたいと考えている。
 給付については、「子ども手当」に代表される「現金給付」から「現物給付」へと転換し、財源については「無駄遣い削減」などに依存するのではなく、国民の皆さんに負担を求めることを含めて、正面から提示していく。これらは、民主党時代の考え方を大きく変えるものである。
 検討会で協議を進めた結果、(1)就学前教育から大学までの教育についての原則無償化(2)経済政策を「グローバル経済への対応」と「地域経済の活性化」に区分し、それぞれに対応した政策を実施する――という基本方針をまとめた。特に(1)については、家計の教育費負担軽減による消費拡大という短期的な経済効果と、人材育成を通じた将来の経済成長実現という中長期的な経済効果という双方の観点から、わが国の経済政策として不可欠である。これらは、単に選挙の目玉政策にとどまらず、今後5年、10年の民進党の背骨となる政策である。最終決定に至る前に、地域を含めて広く党内で議論をしていきたいと考えているので、是非とも多くの皆さんに議論に参加していただけるよう、お願いしたい。

■ムダ遣い解消プロジェクトチーム(PT)

●人への投資の財源に充てるため、税金の無駄遣いを徹底的に精査●

座長 江田 憲司 (えだ・けんじ)代表代行

座長 江田 憲司 (えだ・けんじ)代表代行

 安倍政権発足以降、アベノミクス、アベノミクスと呪文のように唱え続けて4年近く経ったが、ほとんどの国民は景気回復を実感せず、生活は一向に良くならないばかりか、格差や貧困が広がっている。アベノミクスは既にその限界を露呈しており、特に、第2の矢である財政出動は、相変わらず自民党の支持基盤、利権や既得権益を守るための「公共事業のバラマキ」「使い道のない基金への『ブタ積み』」に終わっている。
 民進党が訴える医療・介護や年金、教育・子育て支援等の充実といった「人への投資」「生活への投資」の財源に充てるために、このPTではこうした税金の無駄遣いを徹底的に精査し、1億円でも50億円でも100億円でも解消していく。
 これまで、7回の会合を行ってきた(12月8日現在)。会計検査院からは2015年度決算の検査で指摘した1兆2189億円の無駄遣いの中身を、また、そこで1兆円超の剰余金があることが判明した預金保険機構については金融庁から、他のG7諸国に比べ10倍近く過大な外貨準備高となっている外国為替資金特別会計(外為特会)については財務省から、話を聞いた。
 また、管理のために日々500万円の税金が費やされている豊洲市場の問題は、移転に賛成・反対の両者にご出席をいただき、現状・問題点・要望等々をヒアリングさせていただいた。
 米国の脱退がほぼ確実となったにもかかわらず、多額の税金が注ぎ込まれているTPP関連予算について関連14府省からの聞き取りも行った。
 その結果、国民の皆さんの知らないところで、依然として多額の税金の無駄遣いが行われていることがあらためて浮き彫りとなった。
 今後は、東京オリンピック・パラリンピックの経費肥大化問題や、各府省が先月実施した行政事業レビュー(秋のレビュー)の結果についてもさらに深掘り調査を行う。現在、PTメンバーで800近くのレビューシートと基金シートを分担し、執行率の低い、いわば、無駄な事業や基金を徹底的に精査しており、順次公表し、国会の各委員会とも連携して、その材料をもとに安倍政権を追及していきたい。
 国民の皆さまからは、さらに広く無駄遣い案件を募るという趣旨で、民進党のウェブサイトに「目安箱」と称した窓口を設けた。全国どこにでもある身近な、例えば公共事業で「こんな無駄がある」ということを、ささやかな案件でもいいから寄せていただければ、それを一つひとつ解消していくという地道な作業もしていきたいと思うので、情報提供をお願いしたい。

■尊厳ある生活保障総合調査会

●尊厳と誇りを持って生活できる社会の実現へ。党が目指す国家像示す●

会長 前原 誠司 (まえはら・せいじ)衆院議員

会長 前原 誠司 (まえはら・せいじ)衆院議員

 単に現政権への対案をまとめるつもりはない。 「尊厳ある生活保障総合調査会」は、自民党とはまったく違う、民進党が目指す国家像を明確にすることを担っている。冷たい自己責任型の社会ではなく、多くの方々が尊厳と誇りを持って生活できる社会とはどうあるべきか、1年くらいをめどに議論し、財源も含めて方向性を示す。
 世代間、男女間、障害者と健常者、高所得者と低所得者など、それぞれの間での分断をなくすことが重要と考えている。すべての人が応分の負担をし、すべての人間が受益者になる。そうすることで、希望と安心を分かち合える社会、分断のない社会をつくることができる。慶應義塾大学経済学部の井手英策教授に調査会のコーディネーターになっていただき、第1回総会では「尊厳保障とはなにか――未来を分かちあえる社会をめざして」と題するご講演をいただいた。それ以降も専門家の方のお話しを聞いてきたが、今後も課題を掘り下げていく。
 一つのポイントは教育・保育の充実である。背景にあるのは、所得格差が教育格差を生んでいる現状を改善し、すべての子どもたちに公平なチャンスを与える社会を実現すること。具体的には就学前教育、公立小中学校の給食、民主党政権で実施し現在は所得制限が設けられている高校授業料など、それぞれ無償化を実現する。また、給付型奨学金の実現だけでなく、大学の授業料を少なくとも国公立文系分程度は無料にする仕組みをつくりたい。
 現役世代や高齢者向けには、職業訓練や再就職支援、老後の安心につながる年金制度の拡充、介護施設の待機者の解消、介護や保育従事者の待遇改善などによる介護施設や保育園の拡充など、すべての世代の不安解消に向けた政策の充実を行う。
 財源は消費税率10%への増税分の使途の見直し、新たな税のベストミックス、そしてマイナンバー制度を活用した高所得者への負担増のお願いなどで見出していく。
 現在、日本の租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率は43・9%で、OECD33カ国中26番目と低い。この負担を上げ、「高福祉皆負担」の状況を整え、人間が尊厳ある生活をしていくうえで大切なものにしっかりと国が保障していく。その方向性を政務調査会と連携し、党の政策との整合性を取りながらトータルパッケージを示していく。

(民進プレス改題18号 2016年12月16日号より)

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