参院予算委員会で7日、「経済・財政」をテーマとする集中審議が行われ、増子輝彦議員が質問に立った。

 増子議員は質問に先立ち、安倍総理が5日に福島県を訪問し、復興牧場のヨーグルトを試食したと伝えられていることから、「福島県は風評被害に苦しんでいる。風評被害対策として毎日召し上がってほしい」と要望した。安倍総理は、官邸では福島県産米を使っているとした上で、「風評被害の払拭に協力できるのなら、これからも食べさせていただきたい」と前向きに応じた。

経済・財政、外交等

 増子議員はアベノミクスを検証する立場から質問。各種世論調査でアベノミクスに対する評価が下がっていることを指摘し、賃上げや追加の経済対策などに関する安倍総理の考えをただし、「1億総活躍社会」として安倍内閣が掲げる「2020年GDP600兆円」「希望出生率1.82」「介護離職ゼロ」の実現可能性について疑問を投げかけた。また、消費税率の引きあげには「不退転の決意で、覚悟を持って取り組んでほしい」と要望した。

 TPP交渉については、現在、次期米国大統領選挙の予備選に出馬している多くの候補者が反対の立場を表明していることから、仮に米国でTPP協定の議会承認を得られなかった場合に、日本はどうするのかと質問。安倍総理は「TPP協定の議会承認を得ることが2016年のオバマ大統領の最優先事項だ。日本が率先して動くことで早期発効に向けた機運を高めていきたい」と答えた。外交問題については他にサウジアラビアとの関係、北朝鮮による拉致問題への対応などについて要望した。

福島県の復興について

 民主党政権時代、関係各省の政務3役は頻繁に福島県をはじめとする被災地を訪問していたが、安倍政権になって政務3役の訪問は減ったとされる。こうした状況を増子議員は「復興が進まないことへの不信感、危機感につながっている」と指摘。安倍総理の訪問先も、復興が順調に進んでいるところばかりを見ているとし、「総理はいい所ばかり行っているが、現場を見ないとだめだ。厳しくて大変なところに行って、自分の心と目と耳で現場を受け止めて対策してほしい」と要望した。

増子議員

 その上で、喫緊の課題の1つとして、指定廃棄物の中間貯蔵施設建設のための土地買収が遅れている問題を取り上げた。環境省によると2月末現在、建設予定地の用地買収について契約が成立した件数は69件で、地権者約2400人に対しては3%弱に過ぎない。増子議員は、今後の用地買収のスケジュールなどの見通しが立たなければ、住民の不安・不信を払しょくできないと指摘し、用地買収を加速化するために人材の補充を強く求めた。

 また、指定廃棄物の最終処分場については「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了」(中間貯蔵・環境事業株式会社法)と定められているが、「国民の皆さんに誤解があるような気がする」と問題提起した。増子議員は「高レベル放射性廃棄物」と「指定廃棄物(汚染土壌)」の放射能レベルと処分方法の違いを説明し(パネル資料参照)、「両者は放射のレベルがまったく違うのに、国民の皆さんは『最終処分場』と言われると混同してしまっている」と指摘。「指定廃棄物の最終処分を福島県に全部負わせるのは不条理だ」と述べ、他県での指定廃棄物の最終処分について国民の理解を得るよう、安倍総理が率先して取り組むことを求めた。

パネル資料「放射性廃棄物の種類と処分方法」

パネル資料「放射性廃棄物の種類と処分方法」