山井和則国会対策委員長代理は30日、就任後初の定例記者会見を開き、就任のあいさつを述べるとともに、いくつかの政策課題について見解を述べた。

 山井代理は「これから2カ月は、衆院解散がらみの緊迫した状況になると思う。国会対策のみならず、日本国民のこれからの生活、国家の安全が大きく影響を受ける終盤国会だと思っている。精一杯頑張っていきたい」とあいさつし、同日朝に民進党として初めての国対役員会を開いたこと、昼には国対委員長役員理事合同会議を開くことを報告した。

TPP関連法案の審議入りについて

 山井代理は、来週4月5日の衆院本会議でTPP関連法案の趣旨説明と質疑が行われる見込みであるとした。また、これに関連して今朝、関係省庁から説明を聞いたと述べ、「いちばん重要な、甘利前大臣とフロマン代表との交渉について、メモや記録が一切残されていないということだった。口頭・伝聞で共有したと言っているが、そうしたことは本来あり得ない」と、政府の対応を批判した(下記の内閣官房作成文書参照)。

内閣官房TPP政府対策本部「甘利前大臣とフロマン代表との交渉について」

内閣官房TPP政府対策本部「甘利前大臣とフロマン代表との交渉について」


 その上で、「私たちはかねてから、TPP特別委員会での審議は、しっかりとした情報公開が審議の前提であると言ってきた。肝心の情報公開が一切なされないという中では、審議の前提が成り立たない。ぜひとも中身のある議論をするために、交渉の資料を情報公開していただきたい」と求めた。

 加えて「甘利前大臣しか分からないというのであれば、当然、甘利前大臣に参考人として来ていただいて、どういう交渉をされたのかということを語っていただく必要がある。甘利前大臣も出てこない、情報公開もされないというのでは、審議の進めようがない」と強調した。

 また、次期米国大統領選の民主・共和両党の有力な候補者がいずれもTPPに反対していることに触れ、「今、日本で関連法や条約を成立させたとしても、来年1月に米国の新大統領が就任するのだから、今年中の発効はありえない。政府は参院選の前に成立させたいようだが、まったく意味がない。国民生活にどういう影響があるのかということを情報公開して、丁寧に審議していくことが必要だ」と述べた。

 TPP問題に関連して、自民党山田参院議員がJA関係者に暴力をふるったと報じられていることについても触れ、「本当に、国会議員としてあるまじき問題が起こった。言論で口げんかするということあっても、殴るのというのはありえない。こうしたことも自民党の農業に対する強引かつ横暴な姿勢の表れだと思うし、国会でも議論していく必要があるのではないか」と述べた。

安保法制の施行について

 安保法制が29日に施行されたことについて山井代理は、「非常に問題の多い法律であることは言うまでもない。その1つの理由として、あれだけ拙速に強行採決したにもかかわらず、南スーダンへの駆け付け警護を先送りしている。明らかに選挙への影響を考えているとしか思えない。安倍総理は、安保法案の審議で『自衛隊員のリスクは下がる』と言っていたにもかかわらず先送りをしているというのは、いかにこの法律が危険で、リスクを高めるものであるかを示す証拠だと思っている。法律は施行されたが、安保法制の廃止、阻止に向けて引き続き頑張っていく」と決意を述べた。

 記者団から、今朝の自民・公明両党の幹部会合で、野党提出の「安保関連法廃止法案」を審議しない方針を決めたと知らされた山井代理は、「『対案を示せ』と言っていたのは安倍総理だ。その対案として廃止すべきだという法案を提出したのだから、その審議を拒否するというのはあってはならないことだ」「国民の不安に真摯(しんし)に応えるのが国会だ。昨日安保法制が施行された中で、審議しないことを与党が決めるというのは、国民に対してあまりにも不誠実だ。もし安倍総理が、『安保法制は重要かつ正しい』と確信しているのなら、胸を張って堂々ともう1度審議するべきだ」と批判した。

待機児童問題

 山井代理は28日に政府が発表した緊急対策について「2点、根本的な問題がある」とし、「1つは、保育士の処遇改善が全く入っていないこと。(政府は)『緊急課題ではないから』というが、それこそがもっとも緊急な課題だ。私たちが提出している、保育士の月給を5万円上げる『処遇改善法案』の審議入りをぜひとも早急に行っていただきたい」と強く求めた。

 さらに、「もう1点は、このもっともらしい緊急対策に見えるが、私たちの会合で厚生労働省に確認したところ、この対策のための新たな財源措置はゼロだと。すべて今年度予算に含まれている範囲内だということだった。つまり、緊急措置と言うが緊急措置になっていない。そんなことでは国民の皆さんは納得しない」と批判した。