枝野幸男幹事長は29日、民進党島根県連が松江市内で開いた国政報告会に郡司彰参院会長とともに出席し、雨天にもかかわらず集まった約400人の支持者に向けて、民進党が目指す社会像「共生社会」について丁寧に説明し、その実現のためにいっそうの支援を求めた。この報告会には、この夏の参院選で鳥取・島根選挙区から立候補予定の福島浩彦候補予定者、亀井亜紀子島根県第1区総支部長も出席した。

和田章一郎県連代表

 島根県連の和田章一郎代表は冒頭のあいさつで、「民進党が新たにスタートした。一番の目標は、この夏の政治決戦に勝って、何としても安倍総理を引きずりおろし、安倍政治をストップさせなくてはならない。そういう思いを皆さんと共有し、心合わせ、力合わせをしていきたい」と述べた。

 枝野幹事長は民進党が目指す社会像を、「保育所が足りないと、若いお父さん、お母さんが困っている。あるいは子どもを産み育てることをあきらめている人もいる。年配の方からは『保育所が足りないことはうちには関係ない。最近の若い人たちは甘えている』という声も聞く。しかしこれらは目先の話だ。子育て支援の充実も、老後の安心を高めることも、当事者の皆さんのためだけではない。そういう政策を進めることで、まさにお互いさまで社会全体が良くなる。それが、われわれの言う共生社会だ」と説明した。

枝野幸男幹事長

 「民主党政権時に、救急車のたらい回しによる死亡事故がなくなった。今なくしたいことは、老老介護による無理心中をなくすことだ。80代90代のおじいちゃんおばあちゃんが介護し合って、もう無理だと言って無理心中をするニュースが月に1回か2回流れている。こんな悲惨なことはない。これをなくしたい。ただしなくなったらニュースじゃなくなる。だから民主党は何もやらなかったというデマに多くの人が引っ張られた。それでも私たちは、地味だが大切なことを着実に実施していきたい。これが民進党結党に当たってあらためて決意していることだ。こういう地味な政策にご理解をいただいた皆さんの口コミに頼りたい」と枝野幹事長は述べ、ぜひ民進党を応援して欲しいと訴えた。

郡司彰参院会長

 郡司参院会長は福島候補予定者について「以前からも付き合いがあり、一緒に青森県を訪問したことがある。福島さんは千葉県我孫子市の市長を3期務めていたが、その時に、今では京都などでも導入している景観条例の制定や、ひも付き補助金ではなく市債を発行して市独自の事業を展開したことなど、独自性に富む行動力のある人だ」などと紹介した。

 民主党政権当時の取り組みについて、農業の6次産業化の推進、公共建物の木造建築許可などの例を挙げ、「6次産業化はこのところ当たり前になったが、もともとは農家、漁業者の手取りを少しでも多くして、農業・漁業などにより従事しやすくするようにと推進した。自民党政権でさえもこの制度をひっくり返さずに続けている」「公共建築物の木造建築許可については、戦後にGHQの方針で、木や紙でできている日本家屋は火災に弱いからとコンクリートで作るようにとなった。木造校舎では児童がインフルエンザにかかる率も少ないなどの効果があると調査で分かったので、法律を作ることまでできた。この時に各省が集まって話し合いをしたが、自民党政権時にはなかったことだ」などと述べ、政権交代の成果を強調し、「1回出来たのだから、もう1回政権を取る」と宣言した。

福島浩彦候補予定者

 福島候補予定者は、「私は途中2年間、消費者庁長官を務めたが、基本的には地方自治に関わることをずっとやってきた。その中で常に言っていたことは、『国の政治は大事だが、社会を良くしようと思ったら、根本から変えようと思ったら、地方自治からやらないといけない』と、ずっと主張してきた。この思いは今も少しも変わっていない」と話し、地方自治にかける思いを語った。今回参院選に出馬する方向で決意を固めた理由を、「今の自民党、安倍政権の政治がこのまま突っ走ってしまうと、日本や私たちの地域が取り返しのつかないところに行ってしまうからだ。これだけは止めて流れを変えなければいけない。私に何か役割を果たせることがあり、そこから逃げてしまえば自分で自分を納得させることができなくなってしまうと考え、決断した」と説明した。

 現在の日本社会の大きな問題として格差の拡大、教育格差の固定化を挙げ、「しばらく前までは、大学を卒業すれば、それなりの就職をして、それなりの収入を得ることができたが、今では有名大学卒でなければ、非正規で就職ということも珍しくなくなってきた。社会人のスタートが非正規で、その時奨学金の借金を何百万円も抱えている状態は、個人の努力で何とかなる範囲を超えている。世界の常識となっている給付型の奨学金を導入したい」などと述べ、これらの政策を実行するために力を貸して欲しいと訴えた。

亀井亜紀子総支部長

亀井亜紀子総支部長

 亀井総支部長は、「もう一度政権交代可能な政党を作りたいので、今度民進党を結党するからぜひこの機会に合流しないかという話をいただき参加を決心した。今世間の人の中には、民主党が人気がないから名前だけ変えただけだろうという人もいるが、しかし民進党を結党した人たちの思いはそうじゃない。だから私も、この島根県で、自民党だけではない多様な声を受けとめる選択肢を作りたいと思っている」と話し、民進党に参加した思いを参加者に語った。

 「民主党政権での反省をすることは良いが、失敗でしたという言われるとさびしい気持ちになる。当時やったことが全て間違っているのではなく、いいこともたくさんしている。良かったことは良かったと堂々と主張していく。そして、1億総中流で分厚い中間層を、格差が少なく自衛隊が海外に出ていかない社会を作って行く」と述べ、支持を訴えた。

島根県での国政報告会