野田佳彦最高顧問は12日午後三重県入りし、伊勢市の近鉄・宇治山田駅前で芝ひろかず(博一)候補予定者とともに街頭演説を行った。

 野田最高顧問は冒頭、G7首脳会議(伊勢志摩サミット)で安倍総理が「世界経済はリーマンショックの前と似た状況だ」との認識を示したことに言及、そのリスク分析の根拠として示した文書について「内閣府も財務省も外務省も知らない。作ったのは1人の秘書官だと言われている。出所不明のこういう文書を『怪文書』という」と指弾。「G7の政治利用、ひどいではないか。許されることではない。なぜアベノミクスは失敗したから増税できないんだと国民の皆さんにおわびしないのか。本来ならば土下座してでも社会保障の充実と安定のためには増税は必要だ。でも、それができない経済をつくったとするならば、世界のせいにするのではなく、自分の失政を認めるべきだ。王道から外れている、覇道の政治だ」と断じた。

野田佳彦最高顧問

 そのうえで、安倍総理が今回の参院選挙について「アベノミクスを加速させるか、後退させるかを問う」と、アベノミクスを争点にしようとしていることに対し、「いつまで続くのか、空々しい、白々しい、図々しい。加速どころではない、アベノミクスというポンコツ車は前に進まない」と批判。アベノミクスの問題点として特に、(1)規律の緩んだ財政(2)格差を拡大、子どもや高齢者の貧困を増やしていること――の2点を挙げ、「格差の是正のためには分配が必要であり、格差を是正していくのは民進党の役割だ」と主張した。

 野田最高顧問は、自身の総理時代に官房副長官を務めた芝参院議員について、「声は大きいし、顔は怖そうだし、最初私も恐怖感があった」と話し笑いを誘うと、「付き合ってみたら本当に優し人。心配り、気配りができる、弱い人のための人情の機微の分かる素晴らしい政治家だ」と魅力をアピール。「アベノミクスは争点ではない。三重県は、2期12年、一生懸命国民のため、三重のために頑張ってきた芝ひろかずという馬力のある政治家を加速させるのか、後退させるかだ。あと6年、再び苦しくなった日本の再生のために彼を大いに使おうではないか」「そのためには民進党だけでは力が弱い。今回の選挙は、安倍さんに退陣を迫る選挙だ。アベノミクスが失敗しているから『アイム・ノット・アベ』だという人。安保法制の強行採決で平和が脅かされることに危機感を持って『アイム・ノット・アベ』という人たちもいっぱいいる。あるいは知る権利を損ない、表現の自由・報道の自由を損なうような、今の窒息しそうな空気をつくっている政治に疑問を持って『アイム・ノット・アベ』と言う人たちもいる。『アイム・ノット・アベ』を束ねて『ウィー・アー・ノット・アベ』。その結集の先頭となり、力になるのが芝ひろかずさんだと思う。今また降り出した雨の一滴一滴の小さな粒がたまって流れ出し、せせらぎとなり、小川、大河となっていくように、『アイム・ノット・アベ』の1票1票を結集し、大河のうねりをつくり三重から日本の政治を変えていこう」と呼びかけた。

芝ひろかず候補予定者

 芝参院議員は、安倍政権の経済政策について、「アベノミクスは、東京を中心とした大企業や経営者や富裕層には戦後最高をもたらしながら、その利益の再分配は行われていない。大企業の内部留保は過去最高の366兆円になっている一方で、実質賃金は4年連続でマイナスとなり、この3年半で家計の消費支出は1万7千円低下。物価高による負担増が押し寄せており、こうした状況で景気回復や個人消費が伸びるわけがない。その結果格差は拡大し、子どもの貧困や高齢者の貧困が増えている」と指摘。「民進党は、地域により添う、地域で暮らす人に寄り添う政治を取り戻す。この参院選挙を通じて、大企業・富裕層中心の政治から、人口減少で疲弊する地域に寄り添う、人に寄り添う政治を取り戻す。その戦いを始めていくので、ぜひ力を与えてほしい」と呼びかけた。

 また安倍政権が、経済政策を争点にして選挙は戦いながら、勝利すると昨年9月の安全保障法制の強行採決、国民の知る権利を奪う特定秘密保護法の制定、日本の国是であった「武器輸出禁止3原則」を放棄し「防衛装備移転3原則」を閣議決定して武器輸出を進めるなど、平和を大きく変えてしまったとあらためて問題視。「参院で勝利をすれば憲法を改正するのは間違いない。民進党はいまの平和を次の世代につないでいきたい。安倍政権の武器が使える国にしてしまうのか、最後の選択が迫られているのが参院選挙だ」と強く訴えた。

子育てグループ「ハハノワの会」のメンバーも芝候補予定者の応援に

「ハハノワの会」のメンバーも芝予定候補の応援に

 東日本大震災をきっかけに集い、原発や安保法制の問題に母親、地域市民の立場から運動をしているという子育てグループ「ハハノワの会」のメンバーも応援に駆けつけ、「政治のことを知らなかったら子どもたちを守れなくなってしまう。私たちにとって今回の選挙のポイントは経済だけではない。私たちがよそ見をしているうち安保関連法が成立してしまった。今回の選挙の結果次第では、安保関連法を後押しするような憲法改正が行われてしまう」と危機感を表明。「民進党には参院選で過半数を獲ってもらい、安保関連法に待ったをかけてもらいたい」と激励した。芝参院議員には、5月に開いた座談会で同世代の母親らからのさまざまな質問に真摯(しんし)に分かりやすく答えてもらったと話し、「今回信頼できる芝さんと街頭演説できることをうれしく思う。政治と私たちと子どもたちの未来はすべて循環し、影響し合っている。子どもたちへのギフトを贈るつもりで選挙に行く。真剣に選んだ方がどんな政策を打ち出すのか、まっすぐ、厳しく見つめていくつもりだ」と力を込めた。

 街頭演説会では県連副代表の藤田大助元衆院議員が司会進行を担当、三谷哲央三重県議もマイクを握った。

聴衆と握手を交わす芝候補予定者