大串博志政務調査会長は27日午前、政調役員会後に記者会見を開き、(1)政府が掲げる「働き方改革」(2)TPP(環太平洋経済連携協定)――等について発言した。

 大串政調会長は、26日の常任幹事会に報告した「次の内閣」の人事について、「ベテラン、中堅と、次世代を担う若手にも一部担当してもらうことで党として人材育成を含めやっていきたい」「衆院と参院の連携をより取っていくため衆参のバランスを取った」「女性の代表である女性議員にもできるだけ入ってもらった」などと基本方針を説明。政務調査会として、(1)各部門を中心に民進党としての政策を深め、アップグレードしていく(2)日々の法案対応について熟議を尽くし、国会での一致団結した行動で決着をつけられるよう組織的に動いていく――の2点を重視しながら頑張っていくと決意を述べた。「臨時国会では、機会をとらまえて蓮舫代表のもとで私たちが目指す社会像をしっかり発信していきたい」と表明。「安倍政権が標ぼうする『アベノミクス』に対して、私たちは『安心することで消費が伸び、需要が伸び、経済も伸びていく。安心をつくりだすために人への投資を一生懸命やっていくのが大事だ』という、『安心の好循環社会』を主張している。こうしたことを発信していくとともに、これまでも提出してきた介護職員や保育士等の給与引き上げ法案といった、自民党の目指す社会像との違いを明確に表す対案を具体的に示していきたい」と力を込めた。

 政府が掲げる「働き方改革」についての評価を問われると、「安倍総理は『企業が世界一働きやすい国を作っていく』ことを標ぼうし、今でも取り下げていない。いかに企業が使いやすい人材を作っていくかという法改正、制度改正が先行するのではないかという危惧が拭えない。本当に働き方を改革し、皆さんが安心して働ける世の中をつくっていきたいというのであれば派遣法改悪は即刻見直すべきであり、労働基準法改正案のうちの残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)や裁量労働制の拡大は取り下げるのが筋だ。百歩譲って、それ以外の長時間労働規制や同一労働同一賃金をやっていこうとするなら、それらを合わせて進めていくべきだ」と指摘。「長時間労働規制については、法改正まで含めていつまでに何をやろうとしているのか極めて疑問。同一労働同一賃金についても、ガイドラインで終わってしまうのではないかという危惧すらある。いま、非正規労働を含め働いている方が抱えている雇用への不安に対応する『働き方改革』ではなく、まやかしに近いものだ」と断じた。

 あわせて、政府が、事実上無制限の時間外労働を貸すことができる労働基準法36条に基づく労使協定(36協定)を見直す方針を示していることにも、「政府は言ってはるが本当にやる気があるのかと問いたい。私たちは長時間労働規制法案を提出し、そこには法律で上限規制を入れていこうと明記している。総理が本当に長時間労働を規制し、なくしていこうと言うのであれば私たちが提出している法案を飲んで国会で成立させてもらえばいいだけの話。『1億層活躍プラン』では、『2018年までに再検討』という言葉だけだ。これでは本気でやろうとしているとはまったく思えない」と切り捨てた。

 TPPの協定文書などの和訳に18カ所の誤った記述が見つかったことをめぐっては、「昨年の10月に合意がなされて以後、私たちはずっと和訳の提出を求め続けてきたにもかかわらず、外務省から和訳の原形が届けられたのは今年1月の頭の衆院予算委員会の議論を始める前日の夜20時くらいという極めて姑息(こそく)な提出だった」と政府の対応をあらためて批判。外務省が正誤表で対応しようとしていることに対し、「時間は十分あったのにもかかわらず今回18カ所のミスがあるということであり、そのなかには原産地規制のあり方を含めて食の安全等TPPが幅広い影響を国民生活に及ぼすのではないかと危惧されている点に該当する分野もある。普通に考えれば出し直しであり、こうしたことを含め国会でしっかり審議できる環境を作るべきだと強く訴えていく」と述べた。

 関連して、SBS(売買同時入札)輸入米の取引で輸入商社が卸売業者に調整金を支払い価格を実態以上に高く見せているとの報道があることに触れ、「もう少し実態解明を待ちたいが、TPPとの関係で言えば、SBS米が本当に安く国内に流通していなかったのか、ということだ。政府はこれまで繰り返し『SBS米と国産米の価格は同水準』と説明し、『だから今回SBS米の最大輸入枠が広がってもTPPで影響はない』と言ってきた」と指摘。この輸入米の価格が高値に人為的に操作、表示されていたのであれば農水省自身が説明を偽装していたことになるとして、「TPPの中の重要5項目のなかの極めて大きな部分を占めるコメの根幹であり、国会での審議前に明らかにしてもらわないと審議をしていくにもなかなか進まないのではないか」と述べた。