野田佳彦幹事長は27日の衆院本会議で安倍総理の所信表明演説に対する代表質問に立ち、「国民目線で安倍政権を厳しくチェックするとともに、地に足の着いた提案をする」と表明した。

 熊本地震や台風上陸による被害について野田幹事長は、「被災者に寄り添ったきめ細かな対策が必要」として災害対策関連法の体系、運用の全面的見直しが必要だと訴えた。東日本大震災からの復興については、民進党として住宅再建等加速化のための被災者生活支援金増額、用地問題解決の迅速化などを含む「復興加速4法案」を国会に提出していると紹介し、「福島の再生なくして日本の再生なしという気持ちを今後も変わらず持ち続け、一日も早い震災復興・福島再生が実現されるよう、全力を尽くす」と述べた。

 政府の補正予算案に対しては、「再び大規模財政出動頼みの経済対策路線に戻り、2.75兆円も国債を発行して公共事業を乱発。財政規律は緩み、今年度予算は100兆円を突破した。プライマリー・バランス黒字化はいつ達成できるか」と指摘し、民進党としては「財政健全化推進法」を提案しており政府も賛成すべきだと呼びかけた。

 消費税引き上げに関しては、アベノミクス失敗により再延期がやむを得ない状況になったとし、「その発端は、安倍総理が2014年秋に1回目の延期を決めて衆院を解散したことだ。消費税を政争の具にしないという魂が失われてしまった。そして再延期で財政健全化への道のりはより険しいものとなった」と警告。「消費税引き上げについて国民の理解を得るためには、行革努力が不可欠だ。しかし、安倍政権はこの間いったい何をやってきたのか。民進党は、行革をさらに進めていくため、行政事業レビューの法定化をすべきと考えている」と提案した。

 アベノミクスについては、「安倍総理は矢を繰り出してきた。『3本の矢』『新3本の矢』『1億総活躍』『地方創生』『輝く女性』、どれも名前は立派だが、矢のほとんどは放たれないか、放つ力が弱すぎて的に届いていない」「大規模財政出動は国家財政に深いダメージを与え、異次元の金融緩和は金融市場に深刻な影響をもたらしている」と批判した。

厳しく質問する野田幹事長

 「株式市場は、日銀のETF購入とGPIFの株購入により官製市場と化し、歪みまくっている。誰の目から見てももう限界だ」とし、加えて「マイナス金利は金融機関の経営に悪影響を与えている。地域金融機関にはより深刻だ。日本銀行にマイナス金利を撤回させることを政府として要請すべきだ」と求めた。

 所得税改革については、「政府税制調査会で、配偶者控除の廃止を含む所得税改革の議論が進んでいる。働き方、ライフスタイルに中立な税制にし、再分配により若年層を支援していくという理念自体は民進党としても賛同する。しかし、現在の議論は増税が先行している感が拭えない。働きたくても働けない配偶者を抱える世帯にとっては単なる増税となる案だ。また、保育園に子どもを預けて働きたくても預けられない世帯にとっても、単なる増税となる案だ」と危惧を表明した。

 TPPに対しては、「攻めるものを攻めきれず、守るものを守り切れていない現在の協定案には反対せざるを得ない。TPP関連法案については、しっかり情報開示すること、拙速な審議にしないこと、強引な採決はしないこと」と提案した。

 中小企業政策については、「自民党と民進党の、経済に対する考え方の大きな違いは、中小企業政策で顕著だ。安倍政権は、既存の大企業重視で、大企業のおこぼれが中小企業に回ることを好循環と呼んでいるのではいか」と指摘し、「旧民主党政権下では、中小企業政策に係る政府の行動指針を定めた中小企業憲章を制定するなど、中小企業を日本経済の原動力と捉え、中小企業の活力強化に焦点を当ててきた」と紹介した。

 年金に関しては、「公的年金の積立金を運用しているGPIFは、本年7月に2015年度の運用損が5兆3098億円であったと発表した。この赤字額はリーマン・ショック以降では最大だ」と指摘し、「ハイリスクの資産に、国民の老後の生活資金を半分も賭けていいのか。民進党は、株への投資を減らし、安全な運用に切り換えることを提案する」と述べた。

 子育て・教育については、「子どもの育ちや学びを社会がしっかりと後押しをして、機会の均等を実現していかなければならない」として、民進党の政策である児童扶養手当の支給年齢の引き上げ、多子加算の増額、給付型奨学金の創設を実現するよう提案した。また、「安倍政権の『教育再生』は、国の都合を押し付ける政策ばかりだ。それでは子どもたちの可能性を伸ばすことができない。まず、教職員が児童生徒一人ひとりに向き合い、見守れるよう、35人以下学級を小学校から中学まで実現するべきだ」と訴えた。

安倍内閣の姿勢を問いただす

 外交・安全保障については、「北朝鮮が目指す核弾頭ミサイルの実戦配備が近づいている。わが国の安全保障にとって、今までとは全く異なる『新たな脅威の段階』だ」と指摘し、「国際社会と連携し、北朝鮮の挑発行為が繰り返されることがないよう、リーダーシップを発揮すべきだ」と求めた。

 また、「尖閣諸島周辺での中国当局及び中国漁船の活動は、わが国に対する重大な挑発行為であり、わが国の主権を保全する観点から看過することはできない。民進党は、わが国の領域に対する不法行為に適切かつ迅速に対応し、領土・領海を守るための『領域警備法案』を既に国会提出している。一方で安倍政権は、口先では『わが国の領土、領海、領空は断固として守り抜く』と言いながらも、これら『グレーゾーン事態』に対する法整備については依然として放置したままだ。怠慢ではないか」と批判した。

 北方領土については、「解決を願うが、経済協力だけロシアに『いいとこどり』されるのではないか」と危惧を表明した。

 憲法については、「自民党は国民の権利を軽んじ、天賦人権説を否定して国中心に組み立てを変える自民党憲法草案の実現を目指して議論に臨むのだろうか。本気で議論する気があるなら、まずは自民党総裁として草案を撤回していただきたい」と述べた。

 天皇の象徴としての務めについては、「政府は、皇室典範は改正せず、今上陛下に限って生前退位可能とする特別措置法を整備する方向で検討に入ったとの報道がなされている。法整備の方向性を政府が先に決めてしまうのではなく、まずは有識者会議の検討に委ねるべきだ」とし、「その場しのぎの特例法による対応にはじめから誘導するのではなく、皇室典範改正も視野に入れ、もう少し幅広い議論も併せて行うべきだ」と提案した。

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