衆院本会議で27日午後、大串博志政務調査会長が安倍総理の所信表明に関する代表質問を行い、(1)安倍政権の政治姿勢(2)「安心の好循環社会」に向けて(3)社会保障充実の安定財源(4)介護の利用者負担増(5)子どもの貧困(6)長時間労働の是正(7)同一労働同一賃金(8)TPP(9)駆けつけ警護(10)憲法改正――などの問題について安倍総理の見解をただした。

■安倍政権の政治姿勢

 第3次安倍内閣の第2次改造内閣が8月3日に発足し、安倍総理が「政治家は信なくば立たず」と発言していることについて、大串議員は新閣僚の不祥事が2カ月の間にさまざまに出てきている点を問題視。(1)山本幸三地方創生担当大臣は、自身が代表取締役社長を務める会社に資金提供した人物への強制調査を行う証券取引等監視委員会に対し衆院予算第一分科会で圧力をかけたともとれる発言をした「口利き疑惑」(2)稲田防衛大臣が政治資金管理団体「ともみ組」の領収書中に金額、宛名、年月日が同じ筆跡の領収書が520万円分存在し、収支報告書担当者が記入したものだとされる報道(3)鶴保沖縄北方担当大臣が高速道路で時速40キロオーバーのスピード違反で書類送検されたうえ、「ひとつの経験として前向きにとらえる」などと発言したこと(4)同じく鶴保大臣が記者会見で、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり政府と沖縄県が争っている違法確認訴訟について、「注文はたったひとつ、早く片付けてほしいということに尽きる」と沖縄県民の感情を逆なでする発言をしたこと(5)務台内閣府政務官兼復興政務官が岩手県岩泉町の被災現場視察の際に長靴を履かず、政府職員におんぶされながら水たまりを渡ったこと――などを列挙。「謙虚な姿勢は全く見られない」と断じ、安倍総理の任命責任は極めて重大だと指摘した。

■社会保障充実の安定財源

 安倍総理が所信表明で「消費税10%への引き上げを30カ月延期した上で、アベノミクスの果実も活かし、優先順位を付けながら社会保障を充実する」と発言した点について大串議員は、消費税10%への引き上げがなされた場合には低年金者への最高月5000円の上乗せ、年金受給資格期間の25年から10年への短縮、介護保険料軽減の完全実施、子ども子育て予算の積み増しの措置を講ずるはずだと指摘。しかし現状では消費税という具体的な財源を失った上、アベノミクスの果実という余りにも不安定なもので社会保障を充実すると言われても、国民の不安は大きくなるばかりだと指摘した。

安倍政権の政治姿勢を追及する大串議員

安倍政権の政治姿勢を厳しく追及する大串議員

■長時間労働の是正

 安倍総理が「働き方改革実現推進室」の開所式で「かつてのモーレツ社員という考え方が否定される日本に」と述べる一方、その言葉と裏腹に過重な長時間労働を促進する「残業代ゼロ法案」でより多くのモーレツ社員を作ろうとしているとして、大串議員は「言行不一致も甚だしい」と指摘。「本当にモーレツ社員をなくしたいのであれば、残業代ゼロ法案は撤回し、見直すべき」と迫った。また「ニッポン一億総活躍プラン」では、長時間労働是正のための時間外労働規制を再検討する方針を示しているが、2018年度までに検討するというだけで肝心なことを明らかにしていない点に関して「時間外労働規制に本気で取り組むのであれば、既に民進党など野党4党が提出した労働時間の上限規制が盛り込まれている『長時間労働規制法案』に速やかに賛同して成立させれば良いではないか」とも指摘した

 しかし、安倍総理は「長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつその意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするもので残業代ゼロ法案との批判は当たらない」などと強弁した。

■TPP

 TPPに関してはまず、産業や国民生活への影響が予想されるなか、政府は丁寧な説明を行わず、日付と表題以外はすべて黒塗りの「交渉経緯メモ」を示し、4年間は交渉経緯を明かせないとしている点を大串議員は問題視。「利益があるのか全く不明なままで、明らかなのは、衆参の農林水産委員会が重要5項目を守るべしとした国会決議がないがしろにされ、全品目で譲歩を重ねたことと、政府・与党が農家の声を真摯に受け止めていないこと」だとして、民進党は今回のTPP合意に反対の立場を明確にしていると表明。TPPをアベノミクスの柱の一つと位置づける安倍政権は、承認に前のめりで、この臨時国会で全力で承認を得ると安倍総理が発言しているが、大統領候補がTPP締結に否定的であるなか、審議と承認成立を目指すことは大統領選後に米国の方針が明らかになってから行うべきと問題提起した。

■駆けつけ警護

 安全保障法制の施行により本年11月に南スーダンに派遣されるPKOの陸上自衛隊部隊に付与されると報じられている「駆けつけ警護」の任務にも言及。隊員が厳しい戦闘行為の場の当事者になる可能性がある、従来の任務とは異質の危険な任務であるにもかかわらず、政府は「安全保障法制の実際の運用開始について隊員の安全を確保しつつ、適切に任務を遂行することができるように、あらゆる面で万全の態勢を整え、周到に準備を進める」と繰り返し答弁してきたが、報道によると9月から訓練を始めた隊員が11月には派遣されることになることに懸念を示し、「本当に十分な訓練が行われ、安全に任務遂行ができるのか、隊員の安全が確保できるのか、極めて疑問」だとして、参議院選挙に不利になるからという思惑で選挙後まで実施を先送りしたとの見方もあることを指摘。「昨日は盛んに自衛隊員などに拍手を送ったものの、本件は、政治の都合優先で、隊員の安全という視点が全く欠けているとんでもないやり方」との懸念を示した。

■憲法改正

 大串議員は憲法改正に関連して、「これまでも、自公政権は、安全保障法制などの重要政策について、数の力による強引な国会運営、強行採決を繰り返してきた。今、改憲勢力が3分の2超と言われているが、憲法改正では数にものを言わせて発議を強行するようなことは断じてあってはならない」と問題提起し、「幅広い意見を丁寧に受け止め、じっくりと時間をかけて合意を形成すべき」「改憲勢力が3分の2だからと言って、その勢力だけで発議を強行せず、他の野党も含め幅広い合意が得られるかどうかを探るというプロセスで進めるべき」と安倍総理に求めた。

 大串議員は最後に「成果が公正に分配されず、格差は拡大し、国民の不安はますます大きくなっています。今こそ、政策を大きく転換し、子育て・教育・雇用・老後などの将来不安を取り除き、人生の全てのライフステージを安心して過ごせる生活支援を行うこと、安心を確かなものにすることで消費が喚起され、実需が生まれ、経済成長が実現できる安心の好循環社会を作らなければならない」と述べ、その実現のために、民進党はこれからも具体的な提案を行い、政権を担える政党としての信頼を勝ち得ることを目指していくと宣言した。

PDF「20160926大串博志政調会長代表質問原稿」20160926大串博志政調会長代表質問原稿

政務調査会長として代表質問に立つ大串議員

政務調査会長として代表質問に立つ大串議員