衆院予算委員会で4日、安倍内閣の基本姿勢を問う集中審議で質問に立った井坂信彦議員は、年金制度を取り上げ、(1)政府提案の新ルールである賃金・物価スライド見直し(2)新ルールで年金が大幅に減る可能性などについて質問した。

 まず井坂議員は現行の年金ルールについて「物価に合わせて年金が上下する物価スライド方式であり、パンの値段が100円から110円に上がれば、年金も1割上がり、同じパンが買えるという制度だ」と説明。一方、政府が国会に提出している年金の新ルール、賃金・物価スライド見直しは全く違うものだと指摘し、「新ルールでは(1)物価が下がり賃金がもっと下がった場合、年金は物価と関係なく賃金と合わせて大きく減る(2)物価が上がったのに賃金が下がった場合、年金は賃金が下がったのに合わせて減る(3)賃金が物価ほど伸びない場合、年金は賃金に合わせて少ししか増えない」と法案の問題点を説明した。

政府が提案する、年金を減らす新ルール

政府が提案する、年金を減らす新ルール


 そのうえで、この賃金・物価スライド見直しでは、物価上昇率に満たない賃金上昇率の年が断続的に何年かあるたびに年金額が物価からかけ離れて低くなる問題点を指摘し、「これでは仮に年金制度が続いたとしても、物価に年金が追いつかないため、必要な物が年金で買えない。年金が高齢者の生活の役に立たなくなってしまうのでないか」と新ルールが与える年金生活者への影響について安倍総理の見解をただした。

 これに対して総理は、「『年金を上げる、保険料を下げる』と言えば喜んでいただける。それでは年金は維持できない。給付と負担で成り立っている。それ以外に魔法の杖はない」と強調したうえで、現行ルールのままでは賃金ほど年金が下がらないため、賃金が下がった場合、年金が賃金に合わせて下がるよう改定するもので、その目的は現役世代の負担力に応じた給付にすることで世代間の公平を図ることにあるなどと答弁した。

 また、井坂議員が前日の質疑で塩崎厚労大臣に「年金カット法案を入れたら、どれだけ年金が下がるのか試算をしたのか」とただしたのに対して、「試算はしていない」と答弁したことをあらためて問題視し、「政府法案で年金が実際にどれだけ減るのか試算をすべきだ」と提案した。厚労大臣は「何ができるか考えてみたい」と答弁するにとどまった。井坂議員は、「今回の年金カット法案の影響は大きく、私の試算では10年間で5.2%減る。総理からもあらためて政府として何らかの試算をして公表すると約束できないか」と提起した。これに対して安倍総理は、井坂議員の試算について「国民の不安をあおる」と非難したうえで、試算を行うかについては「厚労大臣が答えた通りだ」と自らの考えを示さなかった。

新ルールで年金が大幅に減るおそれ

新ルールで年金が大幅に減るおそれ


 安倍総理の非難に対して井坂議員は「政府は試算をすべきだ。私の試算グラフが国民をミスリードすると言うなら、『政府が試算したらこうなる。年金カット法案で年金は大して減らない』という試算を出すべきだ。試算を出さないどころか、試算しないのは大変問題だ」と年金カット法案の家計への打撃を隠そうとする政府の姿勢を断じた。

 最後に年金カット法案の審議のあり方について「新ルールの影響は思った以上に大きい。昨日政府も試算する旨を厚労大臣が言われていたので、しっかりとその影響を見極めて、よく比較考量して、じっくり議論すべきだ。法案は非常に論点も問題も多く、臨時国会 の2カ月で採決するのは拙速だと考える」と指摘し質問を終えた。

安倍総理にただす井坂議員

安倍総理にただす井坂議員