衆院TPP特別委員会で31日、総括的集中質疑が行われ、民進党の1番手として篠原孝議員が質問に立ち、(1)審議を充実させる必要性(2)TPP協定締結後の農業・医療分野への影響――等の問題を取り上げた。

 篠原議員は先の国会で民進、自民、公明党の理事の間で結ばれた「衆議院TPP特別委員会開催に関する合意事項」(最下段PDF参照)を示し、ここで合意した中央公聴会の開催とテーマによる集中審議がまだ不充分であると指摘。「テーマ別の集中審議は一日かけてやるべき」「地方公聴会も北海道と宮崎で1日やったがもっと地方の声を聞くべき。審議すべき項目は多岐にわたる」と述べ、審議すべき項目に関して篠原議員が考える必要日数に関して表(下記参照)を示して提案し、「ISD条項や食の安全などさまざまな条文があり、十分な審議が必要」だと主張した。

TPPについて審議すべき項目と必要日数

 また、関税定率法、EPA申告原産品法、著作権法、特許法、商標法、医薬品・医療法などさまざまなTPP関係整備法案への理解が深まらないのも審議が不充分だからだと問題視。国民の7割を超える人が「今国会での成立させない方がいい」とする世論調査結果もあるとして「余裕をもって議論するよう指示を出してほしい」と安倍総理に求めたが、安倍総理は「私が指示を出すのは僭越(せんえつ)な行為。委員会で議論いただきたい」などと従来通りの逃げの答弁に終始した。篠原議員は農村が一番心配してTPPの議論を見守っていると述べ、水田地帯の見解の聴取が不充分だとして、北海道と宮崎に加え、秋田や山口での地方公聴会の開催を提案したが、これにも安倍総理は前向きな姿勢は全く示さなかった。

関税自由化品目の現在の生産量

 篠原議員はまた、これまで日本政府が行ってきた関税自由化の対象品目と実施年、そして該当品目の生産量の減少率等(上図参照)を提示した。「1961年に自由化した大豆は41%生産量が減少し自由化前の58%の生産量になった」「1971年に自由化した菜種は89%生産量が減少し自由化前の11%の生産量になった」等と説明。「一方で牛肉は91年に自由化されたが9%の生産減少にとどまり生産量は自由化前の91%になっている」と説き、「政府がきちんとした政策をとるかどうかで(関税自由化後の生産量が)違ってくる」と指摘。「関税を下げ自由化しても大丈夫だ」などと政府はごまかしの説明を繰り返すのではなく、国内農業を守るために緻密な政策作りに力を尽くすことが重要だと提起した。篠原議員は合わせて「TPPによる自由化10年後の生産量予測」も示したうえで、「ここにある通り関税は減り、そして農家の所得は減ってしまう。それをぜひ承知してほしい」と安倍総理らに求め、「国内自給率をきちんと守り、食の安全保障を守るための政策を確立するように」と注文をつけた。

TPPによる自由化10年後の生産量予測

TPPによる自由化10年後の生産量予測

PDF「20161031篠原孝議員配布資料」20161031篠原孝議員配布資料

国内自給率を守る、食の安全保障を守る重要性を訴える篠原議員

国内自給率をきちんと守り、食の安全保障を守る重要性を訴える篠原議員