細野豪志代表代行記者会見

2016年11月2日(水)15時00分~15時24分
編集・発行/民進党役員室(項目ごとに編集しました)

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=cYjQVHkrnqk


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○山本農水大臣の不適切発言について

【代表代行】
 冒頭、私からは2点申し上げます。
 まず山本農水大臣の件ですが、既に代表、さらには国対委員長からもそれぞれコメントが出ていますが、農水大臣のこうした発言は今回が初めてではありませんので、極めて深刻に受け止めています。「冗談を言ったらクビになりそうになった」という、この発言の軽さ。さらにはTPPという問題に対する、事の軽重が全くわかっていない発言であり、これは容認できない。
 さらには、その後に農水大臣自身が与党議員に対して口利きを促すような発言を続けている。このことも含めて、農水大臣としては極めて不適格と言わざるを得ません。
 既に今日のTPP特別委員会での採決ができない状況になっていますので、国会審議に影響を及ぼしていることも明確です。ですから、出処進退はやはりまずはご本人が判断すべきではないか。私どもは「不適格」という判断をしております。
 私も発言を確認した上で自分の中でもどう理解したらいいかということを私なりに考えたのですが、やはり一言で言うと「強者のおごり」ですね。『平家物語』の冒頭に、まさにそういう栄枯盛衰といったことが書かれていますが、自民党もここまでおごったか、という感じがします。もはや国会は単なる通過儀礼だという姿勢です。
 平家は滅んだわけですが、これは源氏があったから滅んだわけで、今の国民の不幸は、これだけおごり高ぶった自民党に対してもう一つの選択肢がないということだと思います。その分、本当に我々の責任が重いと思っています。民進党という政党をもう一回、政権政党まで持っていく、そういう重い責任が私どもにあると感じました。

○「アベノミクスの失敗」「政策アップグレード検討会の設置」について

【代表代行】
 次に、(日銀)金融政策決定会合が昨日あり、2%の物価上昇達成の目標時期が2018年度ごろに先送りされました。これ、達成時期の見送りは5度目で、黒田総裁の任期を超えるということです。ですから、この一言をもってしても黒田総裁の結果責任は明確ですが、それについての明言はなかった。
 ここももう一つの、国民の不幸な状況が表れていると私は思っており、もはや「黒田バズーカ」が効かないことは明確だし、アベノミクスの失敗も明確になってきている。その中で、じゃあ経済政策を誰に任せればいいのかということについての選択肢が、おそらく自民党の中にも見えてきていないし、他の政党という意味でも、これは率直に言って我々もまだ十分な提示ができていないということで、自民党以外の選択肢も見えてきていない状況だろうと思います。
 今日、「政策アップグレード検討会」を立ち上げました。先ほど検討会の幹事のメンバーを集め、初めの会議をやりました。今日17時から、全議員を集めての意見を聞く会をまずやります。その趣旨は、民進党という新しい政党ができたわけですが、まだ国民から(十分に)認知される政策というのが見えてきていない。そこを、新しい政党になったわけですから、しっかりとした、刷新されたメッセージを出したいと思っています。
 具体的な中身としては、やはり国民は経済をしっかり立て直せない政党に政権を任せることはしないと思いますので、そこについての具体的なアイデアを示すこと。
 さらには、その一つの手段でもあるし、また社会的にも必要なのが、「人生前半の社会保障の充実」だろうと私は思っています。子育てや教育をしっかりと公的にサポートしていくということ、さらには、その財源についてどのように考えるのかということについて明確な方針を示すということ、これがセットで示されてこそ、初めてアベノミクスに対する対案にもなり得ると思っています。
 11月が一つ大事な1ヵ月間になりますが、これを、11月中にという一つの目標に、政局・選挙がどうなるか、これが見えてこないとなかなか詰めの作業をしにくいということも率直にあるのですが、まずは11月いっぱいかけて議論を重ねて、できる限りしっかりとした案を提示して、いざ総選挙となった場合には、それを目玉に国民に訴えかけるということでやってまいりたいと思っております。


■質疑

○山本農水大臣の不適切発言が国会審議に与える影響について

【フリーランス・横田記者】
 山本大臣の発言について、辞任するまで審議拒否するべきだという現場の声が出ていると聞いているが、それについてどうお考えか。特に蓮舫代表も、利益誘導みたいなものではないかと批判していたが、この前の新潟県知事選でも二階幹事長が現地入りして、土地改良事業団体連合会の関連団体で、土地改良事業費を安倍政権になって増やしたから選挙応援するようにと、まさにギブ・アンド・テイクみたいな発言をしており、これは自民党の根本的な体質の問題ではないかと思う。大臣辞任に値するのではないかと思うが、細野代行の見解を伺いたい。

【代表代行】
 我々は審議拒否というのは考えていません。
 今日、委員会の採決が無理だというのは与党自身の判断でもある。これは竹下国対委員長が通知してきたとも聞いています。こうした発言が繰り返される中で、国会としてこれを粛々と認めていくというわけにはいかんというのは、与野党共通認識だろうと思います。ですから、まずは与党としてこの問題にどう決着をつけるのか、それを与党と政府の中でしっかりと考えていただくということではないかと思います。
 当然、パリ協定(の審議)もありますので、しっかり国会で議論して、決着をつけるべき部分についてはしっかりと、特にパリ協定のように政府が怠慢であった問題もありますから、そういったことについてはしっかり前に進めていくということは、我々はできる限りやりたいと思っています。
 もう一点の部分ですが、自民党の利益誘導型体質というのは変わっていないと率直に思います。その中で、与党の幹部の中でさまざまな団体のコミュニケーションでいろいろな発言が出てくることは、それ自体も時に問題にはなりますが、これはいろいろな経緯の中で全てが全てだめと言うわけにはいかない面があります。
 今回問題なのは、農水大臣が、政府の農林水産政策の責任者が、利益誘導を誘発するかのような発言をしている、このセンスのなさ。TPPもそうですし、これから農政に関する、農協改革も含めて、衆議院も参議院も国会で議論があるわけですが、この農水大臣で議論に耐えられるとはちょっと私には思えません。ですから、そこも含めてしっかり判断してもらうということになるのではないでしょうか。

【フリーランス・横田記者】
 玉木雄一郎さんは、審議拒否までいかなくても、質疑応答の中でいろいろ宿題を出しており、まだ答えをもらっていない部分があるので、そんな状況ではとても採決できない、採決環境が整っていない、とおっしゃっている。そういうのが十分出尽くすまでは採決にはとても応じられないという姿勢と理解してよろしいか。

【代表代行】
 玉木さんは特別委員会で何度も質問していますし、この問題に最も詳しい議員の一人ですから、現場で頑張った議員がそういう思いを持っているのは、私も直接複数の人間から聞いていますので、よく理解はできます。
 今回、こういう形で採決が見送られたわけですから、審議が続く予定にもともとなっていましたが、当然、採決の前提として出すべき部分は出してもらうというのは交渉していく必要があると思います。

○「政策アップグレード検討会」について

【読売新聞・上村記者】
 「政策アップグレード検討会」について。「人への投資」という話が出たが、給付と負担に対する基本的なお考えと、「人生前半の社会保障」とおっしゃったが、旧来、福祉政策とみなされてきたようなものも含まれるかと思うが、これをアベノミクスへの対抗軸と位置づける意義を伺いたい。

【代表代行】
 給付と負担の問題、これはできるだけ具体化しないと夢物語に終わると思います。
 まずは、給付についての国民の理解を得ることが重要だと思います。例えば民主党時代に我々が訴えかけた政策で「子ども手当」があります。「人生前半の社会保障」を充実するという観点からも、経済政策の面からも、間違った政策だとは私は思っていませんが、正直言って国民の理解はなかなか得にくかったというのはあります。ですから、現金給付という形がはたしてよかったのかどうかというのも検証した上で、充実させていくのであれば、どういう給付ならば国民の理解が得られるのか、ここを見極める必要があると思います。
 当然、その給付は金額がある程度明確にならなければなりませんし、その給付に見合った負担をどこから国民の皆さんに求めていくのかということについても方向性を出さないと、そこをかつてのように「行革をやってお金が出てくるんです」と言うのは、我々も同じことを繰り返すわけにはいきませんので、そうでない方法で生み出してく必要があると思います。
 「人への投資」を経済政策とすることは、私もここ数年、最大の考えなければならないポイントだと考えましたので、さまざまな専門家とも議論を重ねてきましたし、いろいろデータを探って考え方を整理してきました。
 数あるさまざまな政府支出の中でも、最も経済効果が高いのが「人生前半の社会保障」です。
 例えば公共事業の経済効果が大体1.2とか、せいぜい1.3ですから、1兆円公共事業をやれば1.2兆円か1.3兆円くらいの波及効果がある。プラスオンデータが0.2とか0.3、それぐらいにとどまる。
 例えば法人税の減税をやっていますが、法人税の減税なんかは、1兆円減税しても設備投資に回る部分はせいぜい半分です。0.5兆円。残りは、もう既に内部留保をため込んでいますから、なかなかGDPプラスには回らない。ですから税金で1兆円減税したとしても、半分しか経済効果がない。
 安倍政権は、やはりこの二つですよね、法人税減税と、さらには公共事業。補正予算でもそうなっていますが、これは効果が極めて低いと思います。
 その点、子育て支援などは大体2.5ぐらい。当然現物支給がほとんどですから、現物支給の場合についてはそれはそのままGDPに乗っかってきますし、そのことによって、例えば女性が働きやすくなるということになると生産性も上がってくる、それがプラスオンでついてきます。
 ですから、むしろ我々は、これまで社会的な必要性という観点から言ってきたのですが、考え方は間違っていないけれども、むしろこれこそが経済政策の柱になり得るのだという説明の仕方を正面からすべきだと思います。短期的にそれをやることが、長期的に必ず日本経済の土台をつくることにもなるわけです。当然、子どもたちの教育の機会や、安定した子育て支援の環境が整うわけですから、その子ども達がさらに能力を発揮できるようになれば日本の経済力も高まるわけですから、長期的にも合理的なんだということを積極的にしっかり伝えていく必要性があるというのが私の考えです。

○野党連携・連合との関係について

【朝日新聞・関根記者】
 昨晩、蓮舫代表と野田佳彦幹事長と、連合の会長さん達が会談をされたという話があった。一方で共産党の志位委員長などは、連合を取るのか野党共闘を取るのかと、ある種「踏み絵」を迫るような発言をしていた。細野代行の考えとして、次の衆院選挙に挑むに当たっての民進党としての軸足は、連合との関係を重視するのか、それとも共産党を初めとした3野党との関係を重視するのか、お考えがあればお聞きしたい。

【代表代行】
 民進党の軸足は、やはりきちっとした政策を立てることによって国民の皆さんに示すべきだと思います。ですから、今まさに私がやろうとしている作業が民進党の軸足ということになると思います。
 その中で、その政策を掲げる中で、どういった皆さんと連携していくか。これはある種、方法論になるわけです。ここは、いろいろな皆さんがそれぞれ担当しますので、全員が自分の思いを個人的に述べるよりは、しかるべき役割を担っている人がやっていただくということだと思いますので、それは我が党の場合はやはり幹事長ですよね。大変ご苦労されながらやっておられますので、方法論について私が今の段階でコメントするのは控えたほうがいいだろうと思います。

【フリーランス・横田記者】
 連合の会長と会うのが遅過ぎたのではないか。これはむしろ新潟県知事選の真っ最中にやって、自主投票から推薦に格上げしたいがどうかという相談をして、速やかに組織決定するべきではなかったか。
 あと、馬淵澄夫選対委員長に対して松野頼久さんが、自主投票から推薦に格上げすべきだという提案をしているにもかかわらず、野田幹事長に聞いたら、そういう話は聞いていないと。執行部で推薦について議論して、もちろんその時に連合への説得も早急に進める必要があったのではないか。
 馬淵選対委員長が議題に上げなかったことと、会う時期が遅過ぎたのではないかという2点について伺いたい。

【代表代行】
 まず神津会長ですが、就任直後に連合にごあいさつに行っています。私も同席しました。ですから、いろいろなチャンネルでコミュニケーションをとることはやっていますので、タイミングも含めて遅過ぎたのではないかとか、いろいろなやり方がというのは言い出せば切りがないのですが、私はそこまでそのタイミングの対応がまずかったとは見ていません。
 ですから、日常的にどう連合の皆さんとコミュニケーションをとっていくのかというのは常に、これは代表だけではなくて、我々も含めて考えていかなければならない問題ではないかと思います。
 馬淵選対委員長が新潟の選挙の経緯を伝えた・伝えないという話は、私、事前に存じ上げておりませんので、直接のコメントは控えたいと思いますが、いずれにしても応援してくださる皆さんとどうコミュニケーションをとっていくかというのは大変重要ですので、誰がどうということではなくて、全員でしっかりやっていくということではないかと思います。

○「明治の日」制定論について

【テレビ東京・山本記者】
 明日、11月3日は「文化の日」だが、これを安倍総理に近い自民党の議員中心に「明治の日」に改称を求めるような動きがあるが、これについていかがお考えか。

【代表代行】
 そういう議論があるというのは私も承知していますし、4月29日が「昭和の日」、昭和天皇がお亡くなりになってからしばらくたってそうなったという経緯がありますので、「明治の日」というのも一つの考え方だとは思います。
 ただ、「文化の日」というのは完全に定着していますから。しかもこれは現行憲法が公布された日でもあって、そういったこともあわせて「文化の日」に制定されたという経緯があったと思います。
 「昭和の日」の場合には、昭和天皇がお亡くなりになってから、みんなの記憶の中に相当しっかり残っていて、ゴールデンウィークのいろいろな日の設定の経緯もあって「昭和の日」になったと思いますので、「文化の日」を、明治という非常に時間がたっているその時代の日にすることの意味がどの点にあるのかというのは、ちょっと国民的な理解が得られないと、そうスッといく話ではないと思います。
 あとはちょっと個人的な考えですが、「昭和の日」があって、今度「明治の日」ができると、「大正の日」はどうなのだとか、言い出せば切りがない話にもなりますので、そういった全体のバランスもあるのではないかと思います。

【テレビ東京・山本記者】
 こういった動きは議連のほかにも、政府のほうが、2018年が明治150年ということもあって関連事業の推進室を立ち上げたりという動きもあり、明治の精神は重要だという菅官房長官の発言もあったりする中で、歓迎する声がある一方で、政府のこうした明治回帰的・戦前回帰的な動きを危惧する声もあるが、このあたりはいかがか。

【代表代行】
 政治家は割とみんな明治維新が好きなんですよね。私もその例外ではなくて、そういう歴史的な、例えば志士であるとか、そういう人物に触発された部分もあるので、そういったことも含めて明治を一区切りと考えるのはわからなくはありません。
 ただ、日本の歴史というのはもっと悠久の歴史があって、江戸時代に庶民が、比較的争いのない平和な、文化的にも非常に成熟した社会で生きていたということも、もっと見直されていいのではないかなと思うのです。そういう、むしろ保守の観点から悠久の歴史を考えた時に、明治だけにスポットライトが当たるのが本当に歴史観として適切なのかということについては、もう少し幅を持って見たほうがいいと思います。
 もう一つ言うならば、明治以降の歴史というのは列強に日本が非常に圧迫された時期ですから、日本が危機的な状況にあり、中央集権的にやっていかないとこの国の運営ができなかった、そういう非常に厳しい時代であったというのも事実です。
 これからの日本の歩むべき方向性として、もちろん近隣の環境は厳しいので、安全保障などについてはしっかり国家として責任を持ってやるべき部分はありますが、国の発展という意味では、もう少し分権的にやっていくべき時期に来ているという意味では、時間軸として明治からずっと連続しているというよりは、むしろ違う方向を模索しなければならない部分もあると思うのです。まさに江戸時代は三百諸侯の時代で、江戸時代に戻るというのはもちろんリアリティのない話ですが、それぞれの当時の国、今で言うと地域の規模としては、それぐらいを一つイメージしながら、都道府県のあり方とか地方分権を考えていく時代になっているのではないかと思う。
 ですから、その二つの意味で、明治以降で日本の歴史を、そこだけにフォーカスをして、それ自体をとにかく最高のものと捉える、そういう考え方は私自身はとっておりません。