大串博志政務調査会長記者会見

2016年11月1日(火)11時31分~11時46分
編集・発行/民進党政務調査会

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=PNyfKzaqVaQ


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○TPP承認案・食の安全等に関する議論について

【政調会長】
 いよいよTPP審議が大詰めを迎えておりますが、とにかく自然成立を狙う与党の皆さんの動きに関しては、何としてもこれをはね返していけるように頑張っていきたいと思っています。
 何となれば、自然成立ということになると参議院の審議がかなり心配なものに、形骸化を狙うのではないかという心配すらあります。条約は衆議院優先という憲法上の位置づけはありますが、国内担保法もあるわけですし、国民生活に非常に大きな影響を与えるTPPなので、やはり充実した審議が衆参通じて行えるような状況をつくるためにも、もっと本質的に言うと、まだまだTPPに関する審議の時間は足りていませんので、まずは自然成立を図ろうというもくろみには何としても抵抗していきたいと思っています。
 それと、TPPの審議の中でも与党側からは、もう論点も大体尽きてきたのではないかという声を出す人もいますが、とんでもない話です。
 今まで農業の話や、あるいは自動車を含めた話をやってきました。農業に関してはSBS米の問題でかなり時間を割いて、いまだに情報は十分開示されていないわけでありますが、例えばここ数日取り上げてきている「食の安全」、あるいは「ISDS(条項)」、この辺は実は相当幅広い議論があって、皆さんも国会で聞いていただいていて、政府は答えていないなということはよく認識していただいていると思います。
 すなわち、例えば食の安全に関して言うと、国際基準、SPS(輸入国が自らの安全基準に基づき海外からの農産物や植物が入ってくることを制限する「衛生植物検疫」)に適合する、WTOと同じ内容をTPPでしたためているだけなので、日本の食の安全はこれまでと変わらないのですと、政府はこの答弁を通り一辺倒に繰り返すだけなわけです。ところが、条文を見てもらうとわかりますように、科学的根拠がある・なしという点に関して言うと、例えば(WTO協定に含まれる)SPSにおいては科学的根拠がある・なしに加えて予防的な考え方からの安全基準はあっていいという余地はあるわけです。それが、今回のTPPの文書においては科学的根拠という点においてかなり狭まった形の条文になっている点、これを皆さん非常に気にしているわけですね。
 もっと言うと、ISDSがあって、日本としての安全基準を導入した場合に海外の民間企業から訴えられるのではないかという懸念は払拭できないわけであって、これに関して、濫訴できないような形になっているので大丈夫というふうに政府は言いますが、どこの条文をもって濫訴できないようになっているのかという説明は今のところないのです。だから、引き続き日本の安全基準に対してISDSで訴えられることすらあり得ると考えざるを得なくて、そうすると政府のほうが逆に事前にあまり厳しい安全基準を入れてはいけないかなと萎縮してしまう可能性も排除できない。
 こういったことも含めると相当まだまだ幅広い議論が必要だと思いますので、しっかり議論をしていきたいと思っています。

○核兵器禁止条約交渉開始決議案・日本の「反対」について

【政調会長】
 先週、非常に残念なことがございまして、核兵器禁止条約をこれから国連で議論していこうということに関する決議案が国連に出たわけですが、これに関して日本は「反対」という態度をとりました。
 もちろん日本の安全保障環境、あるいは日米同盟は私達日本の安全保障における非常に重要な部分であるということを考えていくと、そういった論点もあるということは認識せざるを得ないところはあります。ただ一方で、唯一の戦争被爆国として、核のない世界をつくっていくことに対してリード役を務めるのは日本の責務だろうと思うのです。
 そういう中において、先般の決議に対して「反対」という立場を出すというのは、日本としての立ち位置として非常に不適切でなかったか。少なくとも「反対」という立場はなかったのではないかと私は思います。
 こういった論点なども今後の国会の中でも議論していければなと思います。

○年金制度改革法案について

【政調会長】
 最後に「年金カット法案」ですが、いよいよ衆議院本会議において議論が始まっていく形になっています。
 これは、繰り返しですが、非常に重要な論点でありまして、政府の側はいわゆる将来世代の受給をより確実にするためにもこれをやっていかなければならないと言いますが、一方で、先般私は「日曜討論」でも田村前厚労大臣と議論しましたが、田村前大臣は、これは「転ばぬ先の杖なんだ」と言いました。「リーマン・ショックとかそういうことがない限りは、こういうのは発動しないのだ」と。つまり、賃金がマイナスになることは考えられないのだと、こういう趣旨だったと思いますが、ということであれば、特にこれは平成33年度からこの「年金カット法案」の賃金スライドの部分を発動するわけでありまして、何も今、今回の国会で非常に場当たり的に、その場しのぎ的に議論する必要はないのではないか。
 しかも、厚生労働省側からは、試算もしっかりしたものが出されていない。将来世代の給付が7%上回るという試算を示してはいますが、その7%も、賃金マイナスによる「年金カット法案」が一度も、これから何十年間と発動されないという前提ですから、私達が求めている試算とは違うわけです。私達が求めている試算は、この「年金カット法案」が発動されたら受給はどうなるのですか、ということを言っているわけなので、それに答えた形には全くなっていない。
 2年後には、年金の次回の財政検証がありますので、その財政検証も踏まえた上で、より現実的な議論として立てていくことが適切なのではないかと思いますので、こういったことも今日の午後以降の審議の中でしっかり訴えていきたいと思います。


■質疑

○「政策のアップグレード」・次期総選挙の政権公約策定作業について

【共同通信・野見山記者】
 「政策のアップグレード」の件だが、会期中に中間報告を目指すという話だったと思うが、11月に入って、残り会期内でどういうスピード感でまとめていく予定か。

【政調会長】
 各部門には、今国会中にも中間報告が出せるように準備をしてくださいということで(指示をし)、各部門で議論が進んでいます。
 加えて、細野豪志代表代行らとも、この政策をどうアップグレードさせてエッジの利いたものをつくっていくかということの会議体も立ち上げた上でやっていこうという動きにもなっています。
 明日、全議員の皆さんの参加を得て、もちろん各部門で議論していただいているベースがあるわけですが、どのような弾込めがあり得るか、政策のアップグレードがあり得るかということを、予断を持たずに皆さんから活発・闊達な声を出してほしいなという趣旨において、明日やらせていただこうと思っています。
 来週にももう一回ぐらい、いろいろな識者の意見を聞くことも含めながら、全議員会議をやってみようかなと思っていまして、そういった中で皆さんから本当に自由闊達な議論、論点、弾込めを出していただいた上で、一方で各部門でのアップグレード作業も踏まえながら、それ以降の政治状況、解散・総選挙があるのかないのか、風が吹くのか吹かないのか、私達にはよくわからないところがありますが、いかなる状況でもきちっと訴えるいい論点が、エッジの利いた政策として打ち出していけるように、いつでも弾を出せるような形で議論は進めていきたいと思っています。

【産経新聞・山本記者】
 次期衆院選に向けた公約の策定について伺いたい。11月中にも方向性を出すのではないかという話も出ているが、今の進捗状況とめどについてお聞きしたい。

【政調会長】
 衆議院解散・総選挙に向けての選挙公約づくりというのはいつも難しくて。なぜ難しいかというと、単に、総理がいつ解散するかは総理しか知らないので、その作業はいつも困難に直面することになります。
 さはさりながら、難しい、難しいとだけ言っていてもいけないので、先んじていつでも政策の弾を出していけるようにということで、各部門にはもう10月の初めに、11月の末までには政策のアップグレードの中間報告の紙を出してくださいという形で(指示をし)作業を進めてもらっています。
 加えて、その政策アップグレードの活動をさらに推進するという観点から、細野さん達とも一緒に全議員の討議も明日やって、先ほど申し上げたように全議員討議ですから活発な議論になります。非常にいろいろな、新しい考え方や、こういったアイデアもいいのではないか、あるいは今こういう方向を目指すべきではないかと、こういういろいろな意見が出ると思います。
 こういった意見もしっかり聞かせてもらった上で、同時並行的に各部門での議論も走らせておきながら、それで議論を膨らませておけば、いざ動きが出てきたという時にスッと収束していける方向に持っていける土壌をつくれるのですね。あとは、とにかく議論の幅をきちっと広げて、弾出し、弾込めをきちんとやっていくことによって、いつ何どき、何があってもクッと収束に持っていけるように準備はしておきたいと思っています。

【産経新聞・山本記者】
 明日の全議員討議は、名前はどういう会議になるか。

【政調会長】
 「政策アップグレード検討会」による、全議員討議ということになります。

【産経新聞・山本記者】
 個別の問題だが、衆院選の公約となると当然、原発や憲法、そのあたりの書きぶりが注目される。当然他党との関係等もあるが、そのあたり、政調会長としてはどういう感じでやっていきたいとお考えか。

【政調会長】
 憲法に関しては憲法審査会の議論がこれから始まっていこうとしている中であります。これに向けて、我が党としてどういう考え方をしていくかというのは、うちは憲法調査会がありますので、こういった場も含めて我が党の議論をまずやっていくということだと思っています。
 ただ、私達、もともと2005年につくった「憲法提言」の中で、国民とともに新しい時代の憲法を構想していくという大きな枠組みの意思決定、ベースはあります。これがあくまでも前提になると思うのです。これはおそらく他の野党の皆さんも相当理解していただけるようなベースではないかなと思います。何せ、これは立憲主義をとにかく大切にしていこうというベースで書いたのが2005年の「憲法提言」だったので、ここはかなり(他の)野党の皆さんとも一定の共通土俵ができる考え方ではなかったかなと思っています。
 それとエネルギー環境政策に関しては私達の革新的エネルギー・環境戦略、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という考え方をもとに工程表をつくり続けてきていて、今、さらにその工程表を深掘りしていくという段階にあります。この方向性、これは私達の党としての考え方でありますので、この方向性をさらに磨いていくことがまず大前提にあるかなと思っています。
 そういう流れの中で、選挙の時期がいつになるか、どうかということでいろいろな要素が決まっていくのではないかなと思っています。

○TPP承認案・関連法案について

【共同通信・野見山記者】
 TPPに関して、自然成立を阻むということだったが、4日の衆院通過を与党は目指しているという話もある。その自然成立を阻んだ上で、4日という日程が出ていることについてはどのようにお考えになるか。

【政調会長】
 採決の日を、今のうちから予断するものではありません。先ほど申し上げたように、いろいろな論点が幅広くあるのがTPPでありますし、関連法案も今回一緒に議論されていますので、十分な議論が尽くされていくかということを前提に、国対のほうでしかるべく判断するということになると思います。