細野豪志代表代行記者会見

2016年11月16日(水)14時04分~14時26分
編集・発行/民進党役員室(項目ごとに編集しました)

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=Swla1_CCCWo


PDF「配布資料」配布資料


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○第1回パリ協定締約国会議・日本のオブザーバー参加について

【代表代行】
 まず第1点、パリ協定についてですが、モロッコにおいて、既にCOP22(第22回国連気候変動枠組条約締約国会議)が始まっておりますが、15日からはパリ協定の第1回の締約国会議が始まっております。残念ながら我が国はその原加盟国とはならず、この会議にはオブザーバーとしての参加に留まっています。
 トランプ大統領が誕生することになりまして、パリ協定については今後の見通しがなかなか見えにくくなっている。もちろんアメリカは既に締結していますので、その意味ではすぐにそこから離脱するということではありませんが、今後ということで言うならば非常に心配される状況です。
 したがって、そういう状況だからこそ日本としてはこのパリ協定についてはイニシアティブをとっていくことが求められたにもかかわらず、それがかなわない状況をつくってしまっています。外交的にもこれは失態だと思いますし、何より、この温暖化の問題は我々がしっかりと主張してきた問題でもありますので、非常に残念だという思いを持っております。

○TPP関連法案・承認案の審議について

【代表代行】
 パリ協定の早期批准を、「棒に振る」と言っていいと思いますが、そういう状況をつくった一つの大きな原因はTPPを優先したことにあります。
 このTPPですが、米国から聞こえてくるメッセージとしては、TPPの締結はしないと。すなわちTPPは発効しないということがより明確になってきているわけです。参議院では、我が党の議員も非常にいい質疑をしていると思いますが、発効しない条約についての議論が行われているというのは、やっている皆さんからしても非常に虚しいというか、やりにくい面があるだろうと思います。そこは我が党の参議院(議員団)は、それでもしっかり審議するという立場でやっておりますが、状況としては、国会としては非常に望ましくない状況だと私は思います。

○「年金カット法案」審議・説明パネル提示を与党が拒否(配布資料2点添付)

【代表代行】
 一方で「年金カット法案」の審議もスタートしました。
 今日の審議、私も聞いておりましたが、非常に残念だと思いますのは、我が党の資料(パネルの提示)が却下された。井坂信彦委員、さらには柚木道彦委員が求めた資料、いずれの資料の提示が認められませんでした。
 この資料は両方とも、政府の試算に基づいて具体的な金額を、どれぐらいカットされるのかを計算したものです。私もかなりの長い期間国会に在籍しておりますが、このところの自民党の言論統制は目に余ると思います。委員会というのは各政党・各議員が独自のさまざまな調査もした上で、充実した審議をするのが本来の姿ですから、その題材となる資料の提示すら認めないということになると、議論が深まらない。過去は、我々が野党時代、まあ与党時代もそうですが、基本的には配付する資料については、全く根拠を示さないものはだめですよ、しかし、そうではないものについてはそれぞれの独自の調査についても認めてきたのがこれまでの経緯だと私は思いますので、このやり方については非常に強い違和感を覚えます。
 この「年金カット法案」ですが、我々の立場は、これは問題だということですが、どういう立場にしても、国民に正直に向き合ってしっかりと資料を出していくのが本来の姿だと思いますので、それをやらないようであれば、これからの審議というのは極めて難しいものになるということを申し上げておきたいと思います。

○「駆けつけ警護」・南スーダン治安情勢に関する“のり弁”政府資料について

【代表代行】
 「駆けつけ警護」につきまして、国対で調査をさまざましておりますが、その中でまた、いわゆる「のり弁当」の資料が出てまいりました。「ジュバの情勢は比較的安定している」というのが政府の言い分です。ただ、それを具体的に説明する資料を、ということで求めたら、出てきたのが(黒塗りにされた)「のり弁当」の資料(防衛省説明資料「ジュバ市内の情勢」)なわけです。
 11月14日の国連の報告では、「治安情勢の悪化はジュバのある中央エクアトリア州で最も顕著」「ヘイトスピーチや特定民族への暴力扇動が大量虐殺につながりかねない」「南スーダンがカオスに陥る極めて現実的な見通し」、さらには「南スーダンはまさに奈落の縁にある」とまで言っているわけです。この表現からすると、どう考えても「比較的安定している」とは言いがたい状況にあるわけです。

○自衛隊員救急救命法案を提出

【代表代行】
 私どもは、自衛隊の皆さんができる限り安全に活動していただくことが極めて重要だと思っています。「駆けつけ警護」よりも、むしろ第一線の自衛隊員の救急救命体制を整備するための法案(第一線救急救命処置体制の整備に関する法律案、通称「自衛隊員救急救命法案」)を昨日提出いたしました。
 現場から重傷を負った隊員を運ぶ車に医務官や救急救命士が現在おりませんが、そういったことについてしっかり対応する中身になっております。これは民進党の「対案路線」の一環として、しっかり審議をして成立を目指していきたいと思っております。

○長時間労働規制法案を罰則強化し再提出

【代表代行】
 また、「提案路線」という意味では、長時間労働規制法案も(罰則強化をし、あらためて)提出いたしました。「年金カット法案」よりは、こちらのほうがより緊急度も高く、国民的な要請にも応える中身になっていると思います。
 我々が提出した法案についてはできるだけ早期の充実した審議を求めていく。政調と国対と連携しながらやってまいりたいと思っております。


■質疑

○「年金カット法案」審議・説明パネル提示の拒否について

【「FACTA」・宮嶋記者】
 この二つの資料の提出を拒否した理由というのは、この「カット」という言葉が気に食わないとか、理由に正当性はあるのかということだが、具体的にどんな理由で出したらだめということになったのか伺いたい。

【代表代行】
 先ほど厚生労働委員から聞いたところですと、誤解を招くから、ということです。誤解を招く、と。この(添付資料の)金額が。
 ただ、皆さんに再度ご説明申し上げますが、これは政府が出している試算を前提に、我々として数字を当てはめて計算した金額です。だから、独自に計算したものではないのです。
 さらに言うならば、国会というのはきちっと調査機能を持って、政府がやっていることでおかしなことがあれば独自に調査をしてしっかりと審議対象にするぐらいの実力を持たなければ、単なる下請機関になると私は思うのです。そういった意味では、限られた国会の機能の中で、それぞれの議員が工夫をして、試算をして出す数字、それを全て排除して委員会で提示すら許さないというのは、これは明らかにやり過ぎだと思います。
 「言論統制」という厳しい言葉を使いましたが、やはり自由な環境で議員がさまざまな発言をしていくというのは国会の生命線ですので、与党議員の皆さんにもそのことをぜひ考えていただきたいと思います。

【フリーランス・上出記者】
 過去に、こういう配付資料の例というのは。その辺と比較しながら教えていただきたい。

【代表代行】
 私の記憶の範囲で申し上げると、我々が新人議員の頃、ですから十数年前の例で言うならば、非常に自由に認められていました。ただ、幾つか制限があって、出典が明確でない資料はだめだと。出典だけはしっかり明記するというのがほとんど唯一のルールだったのが長く続いたと思います。
 それがだんだん厳しくなりまして、ここのところ自民党の理事が多いものですから、理事会で全会一致のものしか出せないのです。ですから、理事会で自民党がだめだと言った資料については配付が許されないということになるのです。このところその傾向が非常に顕著になってきているというのが私の印象です。

【朝日新聞・関根記者】
 なぜ最近はそういう傾向が顕著になっていると思われるか。

【代表代行】
 一言で言うならば、政権におもねる議員が増えているということではないでしょうか。与党の中では、政権に対してはほとんど異論は出てこない。そうなると、国会というのはほとんど唯一の、政府をチェックする機関になるわけですが、与党議員はその役割を履き違えて、それすら異論が差し挟めない状況をつくろうとしているとしか、私からは見えません。
 ですから、「健全な民主主義とは何か」とか「持続的な国家としての仕組みは何か」ということになってくると、例えば三権分立であるとか、議会の場での自由な言論というのは、与党・野党を問わず極めて重要なものです。それに対する与党議員、特に自民党議員の無理解、これに非常に強い危機感を覚えます。

○蓮舫執行部発足から2ヵ月に当たって

【「FACTA」・宮嶋記者】
 細野さんが担いだ蓮舫さんが代表になって、やはり発信力のある布陣になったと。今日は16日なので、(代表に就任した9月15日から)2ヵ月になる。僕は、支持率は15ぐらいは行くのではないかなと思っていたが、やや弾んでいない。これは何か誤算があるのか、なったばかりでまだエンジンがかからないのか。ちょっと期待外れではないかと思うが、担いだ細野さんとしてはどうお考えになっているか伺いたい。

【代表代行】
 蓮舫代表自身は、代表としてとにかく最前線に立って全国を回っていますし、国会での論戦にも立っているということで、努力をしていると思います。また、本人は非常に元気にやっていますので、そうした明るさも含めて蓮舫さんらしさを出していると思います。
 ただ、国民から見た時に「民進党は変わった」というふうには、まだ見られていないところがあるかもしれません。
 例えば「提案路線」です。昨日、二本、法案を出しましたが、まだ道半ばと言えるかもしれない。民進党というと「反対ばかりしている政党だ」という印象を持っておられる方は非常に多い。そのイメージを払拭できていない。
 さらには、その先には政権政党として国民から見てもらわなければならないわけですが、そういうふうに思っておられる国民はまだまだ極めて少ない。
 そこを乗り越えるためには、これは蓮舫さんだけではだめで、党全体としてやっていかなければならないということだと思います。

○野党連携について

【フリーランス・上出記者】
 共産党が今、中央委員会を開いていて、「野党連合政府」というような名前で提案した。普通に読み解くとかなり柔軟で、(日米)安保の問題とかは棚上げするとか、参議院(選挙)の時と少し近いが、これは何とか歩み寄れるのではないかという気もする。「何でも反対」とは逆だが、やはり安倍政権に対して非常に怒っている国民が多い中で、何とか野党は結束してもらいたいというのが一定の民意だと思う。これを大切にすることが、民進党の場合いろいろな事情でなかなか難しいのかもしれないが、とりあえず共産党のこれが受け入れられるかどうか。それから本当の広がりを見せるためには何が大切かということをお聞きしたい。

【代表代行】
 今、「一強多弱」と言われる状況ですし、特に政府と国会との関係で言うならば、先ほど申し上げた、いろいろ資料を出す・出さないの問題も含めて、国会は非常に非力です。ですから、そういう状況下にあっては、国会においては野党が力を合わせていくというのが極めて重要だと思いますし、そこはさらに深化させるべきだと思います。
 ただ、選挙ということになってくると、しかも総選挙ということになってくると、それは違う意味合いを持ちます。ですから、この問題については私の中にも正直に言いましていろいろな思いはあります。
 ただ、何度も会見でも申し上げてきましたが、この問題については幹事長のもとで、相当ご苦労されながらいろいろな交渉をされていますので、いろいろな人間がいろいろなことを言わないほうがいいだろうと思っていますので、私自身はこのことについての見解を表明するのは控えたいと思っています。

○パーティー券購入も含めた企業団体献金禁止の議論について

【朝日新聞・大城記者】
 先ほどの、党の政治改革推進本部で、当面の検討課題の一つにパーティー券も含めた企業・団体献金の禁止も挙げられている。党内でもさまざまな意見があると思うが、それについて代表代行はどのようにお考えか。

【代表代行】
 いわゆる企業団体献金に関して言うと、少なくとも私の記憶ではもらったことは1回もない。個人献金でずっとやってきましたから。政治とそういうお金の問題ということで、国民から疑念を持たれるようなことがあってはならんということでやってきた経緯がありますから、それは一つ考え方としてはあるというか、私もそこは本来禁止したほうがいいと思います。
 その中で、どうやって政治活動をしていくのかということでそれぞれ悩みがあるわけです。そういう悩みの中で、これは民進党もそうですが、野党の中でもパーティーということはやってきたという経緯があります。
 ですから、しっかりとけじめをつけていくという部分と、現実の政治をやっていくという、この狭間の中でどういう判断をしていくのかということになると思います。

○原発・エネルギー政策について

【読売新聞・上村記者】
 原発政策について伺いたい。今、民進党で「原発ゼロ」に向けた工程表をつくっているが、他の野党では「即時原発ゼロ」を唱える政党があったりする。党対党では一応、国会対応などでできる限りの協力をするということだが、民進党の原発政策を他党とどう歩調を合わせていくべきだとお考えか。

【代表代行】
 原発に関しては、かなり具体的なロードマップをこれまでもつくってきたという思いがあります。政権与党当時に「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という大方針を決めました。そしてその中で、野党になってから、私も政調会長の時にかなり関与しましたが“トリプルスリー”、すなわち2030年代に原発ゼロを目指し、再生可能エネルギーを30%にしていく、さらには温室効果ガスについても30%削減を目指すという、非常に野心的で具体的な目標を掲げていたわけです。それに向かって具体的にどのような政策を打ち出すのかということについても、かなり提案してきた経緯があります。
 ですから、もうベースはできていると思う。それをさらにどう具体化していくかとか、国民にわかりやすく説明していくのか、このあたりはさらに突っ込んで議論していく必要があるのかと思っています。
 エネルギー政策の場合には、やはり国の根幹に関わりますので、まず民進党としての政策をきっちりまとめるということが最優先だと思います。

【フリーランス・上出記者】
 一般的な世論調査では、原発に対して批判的な世論のほうが多い。例えば小泉元首相などは、「原発再稼働反対」で行けば野党は与党に勝てる、とまで言っていて、これはスッキリまとまれば、民意に応えるという意味ではかなりの力になると思う。なかなか難しいことだとは思うが、あえてお聞きするが、どういう点が難しいのか。

【代表代行】
 どういう点が難しいかということよりは、国のエネルギー政策というのは今後の、もちろん国の命運も握るし、あとは国民生活そのものにも直結した重要テーマですので、そこは全党的に相当しっかり議論をして決めなければならない。その中で、これまでもプロセスについてはある程度具体化をしてきていますから、それをさらに、より厳密なものにしていく、精緻なものをつくっていくというプロセスになると思います。

○政治分野における男女共同参画推進・クオータ制導入の議論について

【朝日新聞・関根記者】
 いわゆる男女の議員の数を同じようにする法案でまた議論が始まるようだが、さきの国会では民進党側は「同数」、与党のほうは「均衡」とか「均等」という表現で、そこら辺も含めて、あらためてどういう考えで議員立法に臨むのかお聞きしたい。

【代表代行】
 議員立法は結局、かなり表現が緩やかというか弱くなった時点で、野党としては独自の動きをするということになったのですね、たしか。国会がもうかわっていますので、どうするかですが、民進党としては、クオータ制の議論もそうですが、できるだけ高く旗を掲げ続けるべきだと思います。
 もちろん前進するほうがいいのですが、それがほとんど意味のないものであれば、むしろ高い目標を掲げ続けるということもあるでしょうから、そこは見極めですよね。近々どういう状態になっているのかということは把握していないので、これ以上のことはお答えする情報を持ち合わせませんが。