参院本会議で7日、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆるカジノ法案)が審議入りし、民進党・新緑風会の小西洋之議員が質問に立った。同法案はカジノを含む特定複合観光施設の整備を推進するもの。観光・地域経済の振興・財源の確保に資することを目指すとする一方、ギャンブル依存症への影響、賭博の違法性阻却を問題視する声や経済効果が果たして得られるか等、さまざまな問題点も指摘されている。

 冒頭、小西議員は「今国会の会期が延長後、一部与党も含めて、全く想定外のかたちで強行的に衆院で審議入りし、しかもわずか6時間の委員会審議で強行採決された。こうした前例のない強権的な動きの中、わが民進党は、統合型リゾートの整備による観光や経済振興の検討の重要性を十分に認識しながらも、ギャンブル依存症対策の不備、刑法の賭博禁止の違法性阻却事由の不備など、本法案が抱える深刻かつ重大な課題を踏まえ、本法案に明確に反対することとした」と発言。そうした問題点をふまえて、具体的に法案提出者に質問した。

小西議員

 小西議員は法案について、「明治15年の旧刑法の制定以来、違法とされてきた賭博を統合型リゾート推進の名のもとに解禁する、カジノ解禁法案である。刑法が賭博を禁止する理由について最高裁は、『賭博は、国民に怠惰浪費の弊風を生じさせ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがある』としている。しかし、本法案は日本社会の在り方に重大な影響を与えるものであるにも関わらず、その内容と手続きについて看過できない問題が存在する」と指摘。そのうえで、法案第2条に規定するカジノとは一体何なのか、本案によってカジノの中で解禁される「賭博の種別」等について定義や説明規定が全くない点を問題視。具体的な答弁を求めた。また、過去の議員立法の先例にならい、刑法の賭博の禁止の例外を定める個々の種別を明らかにすべきとの認識を示した。

 これに対して法案提出者の自民党の細田衆院議員は、「本法案はカジノ施設について規定しており、別に法律で定めるところにより、カジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により、特定複合観光施設区域に設置され、および運営されるものがこれに該当するものになる。カジノそのものについて定義は設けていないが、カジノ施設で行われるゲームを用いて賭け事をすることであると考える。ルーレットやトランプを用いたゲームなどが考えられるが、具体的にどのようなゲームが用いられるかは規制の在り方ともかかわるので、実施法案の策定の際に検討されることと考えている」などと答弁。何ら具体的な見解は示されなかった。

 刑法上の違法性阻却事由との関係に関して小西議員は、「なぜ、賭博を禁止する刑法の下で、競馬等の公営ギャンブルが許されているのか。それは、公営ギャンブルが個別法の規定により『刑法35条の正当行為』とされているから。賭博がこの正当行為になる要件として、政府は『目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止』の8要件のいずれも欠くことなく総合的に判断すると述べている」と説明。そのうえで、本法案の各条文のどこの規定が、政府が示す賭博の8つの違法性阻却要件に該当するのか具体的な説明を求めた。

 法案提出者は、「他の公営競技法とは異なり、カジノを含む統合型リゾート推進の基本理念、基本方針などの基本的事項を定めるプログラム法であり、本法案の成立によりカジノが合法化されるわけではない。本法の施行後1年以内を目途として、政府において策定される実施法案において賭博罪が設けられた趣旨に反しない制度が構築されるよう、賭博行為の種別など技術的な検討を含め必要な検討が詳細に行われると考えている」などと見通しを述べるにとどまり、本法案には具体的な定めがないことが浮き彫りになった。

 特に、「カジノ施設の設置・運営が民間事業者のみ」に委ねられている点について、「刑法の賭博罪の違法性阻却の要件としてこれまで政府は『目的の公益性、運営主体等の性格、運営主体の公的管理監督』などを挙げ、施行主体が公的機関であることを前提としている。民間事業者がカジノの施行主体となることは、この違法性阻却の要件に違反しないのか」と小西議員は疑問を呈した。

 小西議員は「本法で最も重大な問題の一つがギャンブル依存症の発生である。いわゆる賭け事、ギャンブルを許したならば、それによってギャンブル依存症の患者が生まれてしまう」と懸念を語った。「公営ギャンブルに加え、パチンコという遊技を抱えるわが国は、実は、世界最大の依存症大国であると言っても過言でない」との考えを示した。そのうえで、「民主党政権時代の統合型リゾート議連にあっては、カジノを解禁するのであれば、世界一のギャンブル依存症大国の深刻な問題を解決しなければならない、そのためには、公営ギャンブルやパチンコなどあらゆるギャンブルを対象としたギャンブル依存症対策基本法の制定が必要であるとの議論がある」と問題提起した。こうした状況を踏まえ、衆院での動きを受け、急遽、ギャンブル依存症対策基本法案の策定を行い、現在、党内議論の手続きを開始したことにも言及。「今、立法府に求められていることは、依存症団体の方のヒアリングや諸外国の依存症対策法・横断的ギャンブル規制・監督法制などを研究し、世界で最も強力な「ギャンブル依存症対策基本法案」を立案し審議すること」だと表明した。

 小西議員は最後に「この度の法案については、それが成長戦略の柱の一つであるとの見解が示されているが、民進党幹部は、アベノミクスならぬ『カジノミクス』であると本質を突いた批判をしている。私には、本法案を強行する首相官邸と一部与党の姿が、異次元の金融緩和により日銀が抱えることになった400兆円超の国債が将来引き起こすハイパーインフレという本物のギャンブルに国民は放り込まれている、そうしたギャンブルの失敗をごまかすためのカジノ解禁法案、まさに、『カジノミクス』法案であると思えてならない」と断じた。

PDF「参院本会議小西洋之議員質問要旨および質問原稿」参院本会議小西洋之議員質問要旨および質問原稿