野田佳彦幹事長は25日夕、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議がまとめた「論点整理」に関する政府から各党への説明の場に出席した。民進党からは小川敏夫参院議員会長、長浜博行参院議員(党皇位検討委員会委員長)、馬淵澄夫衆院議員(党皇位検討委員会事務局長)も同席した。

 説明会ののち記者団の取材に応じた野田幹事長は、まず「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」という名称に関して、そもそもなぜこういう名称をつけたのか、立法府では「天皇の退位等に関する意見交換会」であり、「天皇の公務の負担軽減等」ではなく「天皇の退位等」とする方が本質ではないかと指摘したと報告。それに対する回答は「ご高齢なのでまずは負担の軽減から入った」といった回答で、野田幹事長は「ちゃんとしない答えで、あまり印象にも残らなかった」と述べた。

 第二に、有識者会議で専門家の意見聴取をするときに10項目の論点で意見聴取をしているが、一番上のポイントである「日本国憲法における天皇の役割について」は、今回示された論点整理ではどこでも整理されていないのではないかと指摘。それに対しては「何となく散りばめられているといった言い方」が政府側からあったという。

 第三に、論点整理は左側に「積極的な意見」、右側に「課題」が列記されているが、有識者会議でだれかが発言したものなの、ヒアリングの対象となった専門家の発言なのか、議論を整理するための政府側の記述なのかが不明であるので、その出自を明らかにするよう求めたと説明した。

 第四に、「積極的な意見」と「課題」とを列挙しているなかで、天皇の退位を実現する場合の「将来の全ての天皇を対象とすべきか、今上陛下に限ったものとすべきかについて」の項目で、たくさん並んだ「課題」を見てみると、「法形式にこだわるべきでない」「一代限りか恒久的にか、そういう法制度は議論の本質ではない」ということが課題に入っているが、これはあくまで議論の本質論であると野田幹事長は指摘。あわせて、これらが「全ての天皇を対象にすべきか」に関する課題に盛り込まれているのであれば、「今上陛下に限ったもの」に関する「課題」にも入れておくべきであるのに書かれていないと指摘。整理の仕方が偏っているので、細かい点については政府の窓口を通じて今後精査していく考えを伝えたという。

 また、社民党から、論点整理の最後に「有識者会議においては、論点整理に対する国会や世論の動向等も参考にしながら、更に議論を深めていく必要がある」と書かれている点について、「国会の議論を踏まえて有識者会議が議論するのか、国会の議論は有識者会議のための参考になるのか」と位置づけに関する問いがあったと説明。この点については「立法府の総意を十分に受け止めて対応するというのが政府の考え方である」とのやりとりがあったという。

 論点整理が公表される直前に野田幹事長が記者会見で「典範改正の要件、どこまで有識者会議で詰めた議論をしたのか注目している」と発言したことに関連して、今回の論点整理をどう受け止めたか問われ、「典範改正について具体的なことを言うと課題がいっぱい出るという構図」だと分析。他方、一代限りとすべきだという見解については「すべての天皇にやるよりは一代限りが望ましい」というような抽象的な取り上げ方がされ、具体的な課題は出ていないとし、「特例法の具体的な法文のイメージがあれば具体的に違う課題がいっぱい出るはずだ」と論点整理の手法を批判。「(皇室典範改正は)『課題』がいっぱいあるからダメなんだねという、何となくそういう見方をすることになる。そんな感じで、この資料はおかしいと思った」とも述べた。

 今回の有識者会議の内容は恣意的なものと感じたかとの記者の問いには「参考にはするが、偏っているといった印象は否めない。先ほど言った課題の羅列の仕方なども含めて、印象としては、レッテルを貼りたくはないが、イメージ操作的に映ってしまう。そこはよく見抜いたうえで、出てきている意見については踏まえて考えていく」と述べた。