政府は2017年度から給付型奨学金の支給を一部開始するが、厳しい経済環境にある学生に進学の道を開き、格差是正、子どもの貧困対策につなげることができるのか。初当選以来給付型奨学金の必要性を主張してきた「次の内閣」ネクスト文部科学副大臣の斎藤嘉隆参院議員に話を聞いた。

 民進党は、かねてから返済の必要がない給付型奨学金の創設を訴え、民主党政権時には給付型奨学金導入を見据え、貸与時点で世帯収入300万円以下の人を対象に「所得連動返還型無利子奨学金」を導入しました。今回の政府・与党案では規模が小さ過ぎ、諸外国と比べても給付型奨学金と言えるようなものではありませんが、国会審議では次につながるような建設的な議論を進めます。わが党としては、これから対象人数や財源をどう拡充していくかを議論していきます。また、成績など今ある厳しい条件はあまり設けず、幅広い形で進めたいと考えています。

「子どもは社会全体で育てる」という
理念を日本中で共有したい

 子どもの貧困というのは、当然ですが大人社会の貧困が色濃く反映されています。まずはここをどのように改善していくか。非正規労働増加の問題、若年層の低所得、ワーキングプアや女性の貧困。とりわけ1人親家庭では相対的貧困率が50%を超えていますから、これを政策的にどう改善していくかが重要だと思います。
 日本の社会は、貧困は本人たちの努力不足、進学できないのも本人たちの努力不足だという、昔ながらの自己責任論的な考えがものすごく強いです。しかし、少なくとも教育は経済的状況にかかわらず、国、自治体が責任をもって提供していくべきものです。個人の責任に帰するものではありません。教育そのものに対する考え方を根本的に改善していかないといけない。子育てに関しても、「子どもは社会全体で育てる」という民進党の根本的な理念を日本中で共有したいと思います。

未来を見据えた教育投資を

 貧困な状態が世代を超えて連鎖をしていく「貧困の連鎖」を政策的にどのようにストップをかけていくかも重要です。そのために教育の無償化が必要なのです。また、貧困な家庭の子どもたちが、例えば教育の現場でしっかりと学べる居場所づくりを行っていくことも重要です。
 一般的には社会的相続と言いますが、子どもは性格的なものや自律心、規範意識といったものを親からさまざま受け継ぎます。貧困な状況にある家庭は往々にして余裕がないこともあってそういう相続がうまくいっておらず、教育現場ではそれを社会全体でどう構築していくかが課題になっています。子どもの居場所づくりに向けては、例えば低所得者家庭の子どもたちへの学習支援のための無料の塾や、最近広がってきている居場所づくりの一環としての子ども食堂など、民間レベルの取り組みが少しずつ広がっています。国としても3年前に子どもの貧困対策推進法が施行されていますので、法の概念に即した政策、社会的投資を積極的に行っていく必要があります。
 例えば、日本財団によると、0歳から15歳までの子どもたちの貧困問題について現状を放置した場合と、国として子どもの教育格差を改善する対策を行った場合で、将来的にGDPの差は年40兆円になると試算しています。そういう観点から見ると、子どもたちへの投資は先行投資です。長いスパンで見ると決して財政を毀損(きそん)するものではありません。

子どもの貧困


子どもたちにとってフェアな教育環境を

 苦しい家庭の子どもたち、遠足に弁当を持って来られない、毎朝の食事を取れない、1日にカップラーメン1食だけなど、生きるか死ぬかのぎりぎりで生活している子がけっこういる。私は教員をしていたので、多くの方が遠い世界のように感じている子どもの厳しい貧困の現実が目の前にありました。子ども食堂や、多くの自治体で進んでいる給食の無償化など、子どもの貧困対策として食の問題の重要性も実感しています。教育の無償化にはいろいろな視点がありますから、単に授業料の減免や奨学金の拡充だけでなく、給食費やさまざまな教材費なども含めて総合的に支援していくべきです。それが世界的に見ればスタンダードなことですから、できないことではありません。
 党の文部科学部門会議では、教育無償化につながる法案を今国会に提出しようと考えています。大学で言えば国公立と私立とどういう規模で無償にしていくか、高校の無償化については安倍政権になって導入された所得制限の撤廃をどうするかなど、就学前教育を含めて段階的に教育の無償化を法的裏付けをもって進めていくため、財源も含めて議論しているところです。まず家庭の状況に左右されないフェアな教育環境を提供する。政治の責任です。


―――人への投資を重視する民進党の
主な子育て・教育支援政策―――

育児支援

●誰もが安心して出産・子育てができるよう支援を拡大します。妊婦健診費用、出産費用、幼児教育・保育費用、就学関係費用、高等教育費用や育児休業給付など子どもの成長にあわせて必要となる各費用について、一層の助成や給付拡大を行います。 

待機児童解消

●保育園定員の増員、放課後児童クラブの整備を積極的に行います。小規模保育園や一時預かりについては、保育士配置、子ども一人あたりの面積の基準の緩和を行うことなく、保護者や地域の実情に応じて計画を立て、子どもの安全と良質な保育環境を守ります。
●待機児童の実態を明らかにして保育園や放課後児童クラブの必要な整備量を設定します。
●子どもの命を預かり、人格形成に重要な時期に適切な対応ができる保育人材を確保するために、民進党が提出した保育士・幼稚園教諭の賃金を月額5万円引き上げる「保育士等処遇改善法案」(「保育等従業者の人材確保等に関する特別措置法案」)を成立させます。
●病児・病後児保育、延長夜間保育、障害児保育など多様な保育の提供の充実に取り組みます。

「教育の無償化」推進

●就学前教育の無償化、小・中学校の給食費等の無償化、大学学費の大幅減免・無利子奨学金の拡充を進めていきます。
●「高校授業料実質無償化」については、自民党が導入した所得制限を撤廃します。

給付型奨学金の創設

●やる気と能力があれば誰でも大学に進学できる社会を実現するため、大学等の授業料減免を拡大し、将来的には大学の無償化を目指します。
●大学や専門学校等に進学を希望する若者が、親の収入など家庭の状況によらず入学でき、奨学金による借金を背負わずに卒業できる環境をつくります。そのために、先進国では当たり前の、返済のいらない給付型奨学金を創設します。同時に、すべての奨学金の利子をなくすことを目指します。

子どもの貧困対策

●「社会全体で子どもの育ちを支援する」ことを掲げ、「子どもの貧困」、特に親から子に引き継がれる貧困の連鎖を断ち切ります。
●「子どもの貧困対策法」に盛り込まれた理念を着実に具現化します。
●1人親家庭に対する支援を拡充します。
●学校給食の実施率の向上、無償化の推進、「フードバンク」「子ども食堂」の促進等の施策を展開します。
●1人親家庭に対する経済的支援である「児童扶養手当」を増額(第3子以降の多子加算を月額1万円とする)するとともに、支給年齢を20歳まで引き上げます(現行は18歳)。また、現在4カ月ごとの支給を毎月支給に改めます。
●「学校をプラットフォームとした総合的な子どもの貧困対策」をさらに推進し、教育と福祉の連携を進めるため、小中学校へのスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置などを加速します。
●生活困窮者自立支援法における子どもの学習支援事業を必須事業とします。

(民進プレス改題22号 2017年2月17日号より)

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