衆院本会議で6日、いわゆる「共謀罪」新設のために政府が提出した組織犯罪処罰法改正案の趣旨説明・質疑が行われた。

 同法案は過去3回廃案となった「共謀罪」法案の趣旨を継承し、合計277の犯罪について包括的に計画段階で処罰できるようにするもの。民進党・無所属から逢坂誠二議員が質問に立ち、(1)法案審議の順番を変えた問題(2)テロ対策のあり方(3)国民監視強化の懸念等について安倍総理らの見解を求めた。

 「私は今、激しい怒りの中にある」と切り出した逢坂議員は、性犯罪被害に悩む多くの人の期待を受けて国会に提出された性犯罪厳罰化法案を後回しにして、共謀罪法案の審議を無理やり先行させた問題について「非人道的であり、政治の優先順位を間違えた言語道断の暴挙である」と痛烈に批判。性犯罪厳罰化法案の優先度が共謀罪法案よりも低いと考えているのかと、安倍総理らの認識をただした。これに対して総理は「法案審議の順序等、国会審議のあり方は国会が決めることであり、政府として申し上げることではない」と、真正面からの答弁を避けた。

 テロ対策について逢坂議員は、「当然必要」との認識を示したうえで、「テロ対策を口実にして、共謀罪法案の成立を画策するのは実に姑息な手口であり、共謀罪法案はテロ対策の万能薬でもない」と指摘。本来、有効なテロ対策のために優先して行うべきこととして「島国日本の特性を考慮した水際対策の強化、さらに残されたテロ対策関連国連条約の締結、加えてサイバーテロなど、テロに対して手薄な個別分野の強化である」と説いた。

 共謀罪法案の処罰対象について政府が「組織的犯罪集団に絞った」と言い切っているものの、目的が一変した場合は「それが犯罪集団」という説明も繰り返し、一般市民も対象になり得ることを示唆していると指摘。捜査側が組織の変容を判断するには恒常的に調べていなければならないことから、「本法は恒常的な監視が前提の法律と受け止めざるを得ない。国民監視と結びつかないと断言できるのか」と問い、その論拠を示すよう求めた。それに対して安倍総理は「捜査機関が常時国民を監視するようになるといった懸念は全く無用」とは答弁したが、その根拠を示すことはなかった。

 自民党広報本部長である平沢勝栄衆院議員が、共謀罪法が成立すると「市民に関する監視の目が強まることは間違いない。通信傍受は人権を侵害するおそれはある。(犯行の合意に関して)メールでやってもよい。LINEでやってもよい。そういったものも傍受することも将来的に可能性はあると思う」との発言を紹介。「安易に、誰でも犯罪集団構成員とみなされ得る犯罪を創設するべきではないことと、十分な審議を行うこと」の必要性を訴えた。

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