大串博志政務調査会長記者会見(要旨)

2017年4月25日(火)11時30分〜11時58分
編集・発行/民進党政務調査会

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=2XeFL350yHc


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○朝鮮半島情勢について

【政調会長】
 まず北朝鮮をめぐる情勢ですが、私達野党としても緊張感を持って事態の推移を見守っていきたいと思っています。北朝鮮の累次のミサイルの打ち上げや核実験等々は、明らかな安保理決議違反であって、この繰り返しの挑発行為は断じて許すことのできないものだと思っています。
 こういった観点から、挑発行為を止めさせるべく、国際社会が一丸となって北朝鮮に対してしっかりとした働きかけをしていくことが大切だと思います。その際には、対話を一方で行いながら、一方で圧力もかけていくと。その中で北朝鮮がしっかりとした対応を国際社会に向けて行っていくような土壌をつくっていくというのが非常に大切で、特に米国や中国などを議論の場に引き込んでいくのが非常に大切なことだと思っています。
 ただ、その際に重要なことは、もちろん対話と圧力を適切に使い分けながらやっていかなければならんわけですが、この圧力が挑発と受け取られて、それが意図しなかった衝突に至るようなことがないように、そこは非常に細心のバランスをとりながらやらなければならないと思います。
 アメリカも「全ての選択肢がテーブルの上にある」と言ってはいます。ペンス副大統領も、「力があってこそ平和が訪れる」と言われています。これはよくわかる。しかし一方で、例えばペンス副大統領が先週言って残したことなどを見てみると、その「力」というのは、外交の力と経済の力、この圧力をかけていくのだと、こういうふうな言い方をしています。アメリカも非常に微妙な言い方をしているところがあると思うのですね。
 それに対して、安倍総理は、「全てのオプションがテーブルの上にある」という、この軍事面の圧力の表現がやや前に出過ぎていないかという感もなきにしもあらず。先ほど申し上げました、偶発的な衝突を起こさないように細心のバランスをどうとっていくかというところは、この政権運営をしていく上で安倍総理にも鋭く突きつけられた課題だろうと思います。
 ましていわんや、本当に武力(衝突)も含めた緊張感が高まっていると安倍総理が言うのであれば、国民保護、あるいは朝鮮半島における邦人の退避、こういったことに対する備え、あるいは準備は十分なのかということは政府にも問われなければならないし、ちょっと不思議だなと思ったのは、安倍総理、先般来、トランプ大統領と電話会談をするたびに、非常に緊迫感のある状況だと、こういうふうにずっと言っていますね。にもかかわらず、例えばゴールデンウィークの政務三役の海外渡航、30人近くに及ぶ政務三役が海外渡航をする許可を求めてきています。毎年と変わらないのですね。これはどうなのだろうな、というような感すらあります。
 いずれにしても、北朝鮮に対して適切な対話と圧力、そして国際環境を整えて、海外と一緒にしっかりとした輪の中に取り込んでいくという意味において、非常に細心なバランスが必要だと思います。

○辺野古沖の護岸工事着手について

【政調会長】
 辺野古の新基地建設に向けて、きょう、キャンプ・シュワブ沖の沿岸部の護岸工事の埋め立てが始まりました。
 私達はかねてより、沖縄の皆さんの気持ちに最大限寄り添った形での基地負担の軽減、普天間の移転も含めた基地負担の軽減、こういうことを言ってまいりました。
 この間の安倍政権の進め方を見ると、裁判等々で対応し、非常に強権的に物を進めようとしている感じがありありとします。今回の護岸工事の実施についても、本当に沖縄の皆さんの気持ちに最大限寄り添ったものになっているかというと、「懸念大いにあり」と言わざるを得ないと私は思います。そういった中で進めて、安定的に基地負担の軽減に向けて事が進んでいくかというと、それが実現されない可能性もあるのではないかと思うのです。
 ここは繰り返しになりますが、私達からは、沖縄の皆さんの気持ちに最大限寄り添う形で、この安倍政権の態度は変えてもらわなければいかんと思います。

○「共謀罪」法案の審議について

【政調会長】
 最後に「共謀罪」ですが、議論が衆議院の委員会でも進んでいます。強硬な運営に次ぐ強硬な運営で、言語道断の国会運営だと私達は思っています。
 そういった中でも審議には建設的に応じているわけでありますが、ここに来て、やはりこの「共謀罪」の問題というのは非常に大きな論点があるということが明らかになってきていると思います。
 特に、一般人も捜査の対象になるということが、先週金曜日の盛山法務副大臣の答弁で明らかになりました。これまで政府側からは、大臣も含めて、「組織的犯罪集団」を対象としているのだから一般の人に捜査の手が及ぶことはない、というような内容の答弁が続いていたわけでありますが、きちっとした答弁になれば、一般人にも捜査が及び得るということです。
 こんな基本的なことでさえ政府の答弁が二転三転するようであれば、極めてゆゆしき問題だと思うのです。こういった点は、きょうは参考人質疑ですが、極めて重要な論点ですから、あす以降の審議なども通じてきちっと国会の場で追及していくことになろうかと思います。


■質疑

○東京都議会議員選挙について

【時事通信・大塚記者】
 東京都議会議員選挙の民進党の候補者の離党がきのうも出て、きょうも出る予定らしいが、受け止めを伺いたい。

【政調会長】
 都議会選挙において、我が党の党籍を離れて、「都民ファースト」の皆さんとの連携ということも視野に置かれているのでしょうか、動きがあるというのは残念ではあります。  ただ一方で、都議会において都議会自民党と相対峙してきたという意味において、都議会民進党もこれまで実績をその立ち位置から積んできたわけでありますし、この点においては「都民ファースト」の皆さんともある程度考えの一致するところではないかなと思います。  あくまでも自民党の一強体制に相対峙して臨んでいくということが私達の基本的な立ち位置なので、その立場は崩さずいる仲間をできるだけ多くつくっていきたいという思いもあります。

【時事通信・大塚記者】
 政策面から言うと、築地市場の豊洲移転の問題への対応で、民進党の立ち位置がよくわからないが、そこはいかがか。

【政調会長】
 これまで、これは都議会の中でもるる議論してきて、私達も対応をきちんと詰めていかなければならないということは都議会民進党の中でも議論されていました。小池都知事の、豊洲に移転するのか築地に残るのかという判断もまだ明らかでない中で、都議会のほうでもこの問題が都議会議員選挙で大きな論点となるのかどうかも踏まえながら、選挙の争点として訴えていく内容に対してどう言っていくかというのは、都議会民進党の中できちんと議論されていくものだと思っています。

○日印原子力協定承認案について

【共同通信・野見山記者】
 日印原子力協定について、先週、外交部門会議等で議論がある程度終わったと思うが、この法案賛否にどう臨んでいくのか、理由も含めて伺いたい。

【政調会長】
 日印原子力協定については部門でもいろいろな意見が出ました。
 もともと原子力協定に関しては、我が国の技術を海外において生かしていくという観点から、基本ラインとして認めるべきだという声もある一方で、多くは、非NPT(核兵器不拡散条約)国でありながら核実験を繰り返し行っているインドに対して、原子力協定を結んでいいものかという論点。
 あるいは、特に今回の協定の内容を見てみると、核実験を行った場合にこの協定を止めるという点、これは民主党政権の時に当時の岡田克也外務大臣がこの議論をインドと始めた時に極めて重要な点として主張していた点でありますが、今回でき上がった協定の中にそのことは書かれておらず、公文の中にインドの外務大臣の過去の発言を引っ張りながら、これが重要な基礎であるということを日本側代表団が述べたと。そして、この述べたという重要な基礎が変わった場合にはこの協定を終結させる通常の規定を使って協定を終結させると。協定ではない、協定の外側の公文上に、日本政府の代表団がそういうことを言った、ということが書かれているだけであって、「核実験」という言葉もないし、核実験をやめる、「モラトリアム」という言葉もないし、核実験が行われたらきちっと停止するという時間的な近接性もありません。こういった点を問題視して、やっぱりこれは賛成できないのではないかという多くの声もありました。
 こういった意見の違いのある中で、基本的には政調会長に委ねられ、NC(次の内閣)で決められたことに対してそれを受け止めていくというのが部門の決定でありましたので、きょうの夕刻のNCまでに私としても最終的な判断をして、先ほども政調の幹部会でもひとしきり議論しましたが、私としても判断した上でNCに提案し、結論を得ていきたいと思っています。今言ったような部門での大きな方向性はご紹介した上で、結論を出していきたいと思います。

○国会同意人事・日銀審議委員について

【日本経済新聞・林記者】
 けさの財金部門会議だと思うが、国会同意人事で示された日銀の審議委員の片岡(剛士)さんと鈴木(人司)さんについて、どういった対応をされるか、決まっていたら伺いたい。

【政調会長】
 先週、提示を受けました。時間軸として言うと、ゴールデンウィーク明けに向けて部門の考え方をまとめてくださいということをお願いしています。まずは部門の考え方をきちんと議論してもらおうと思っています。
 その上で、今般交代される木内(登英)さん、佐藤(健裕)さんは、私達の目から見ると、ある意味リフレ派が多い今の審議委員の中で一定程度バランスをとるかのごとく、今の行き過ぎた黒田緩和の問題点を指摘し続けてきた、そういった発言・行動をなさってこられました。これに代わって片岡さんを含むお二人が入ってこられるわけですが、片岡さんは、私が見たところ相当強固な、いわゆるリフレ派でいらっしゃるということが明らかになっていて、少なくとも審議委員全体のバランスが、さらにこの黒田緩和をより一層進める方向に進むのかなという印象があります。
 その場合に、黒田総裁の任期も近づく中で、これまで結果として成果が出ていない中で、同じ道をまた進む方向に行くのかなと思われる人事をしてどうなるのだろうという、率直な疑問もありますが、そこはまず部門でしっかり議論していただきたいと思います。

○「共謀罪」法案について

【東京新聞・我那覇記者】
 最近の世論調査では、聞き方とか数字の表れ方に差はあるが、総じて賛成のほうが上回っているような結果が出ていると思う。会期末までにはまだしばらくあるが、そんなに長いとも言えない中で、理解を得るためにどういうふうに論戦を繰り広げていくお考えなのか、あらためて伺いたい。

【政調会長】
 私達がなぜこの「共謀罪」法案に強く反対しているかというと、そもそも条約上必要がないというのはあるのですが、それに加えて、やはり心の中を監視する監視社会になってしまうおそれがあるということです。すなわち、そのことが一人ひとり、一般の方々にも及んでしまうというところが大きな問題点だと思っていて、一般の方々にも、普通の生活の中にも監視社会が入ってき得るのだということを明確にしてくことによって、国民の皆さんの関心と理解をより大きく広げていきたいと思っています。
 そういった中で、先般副大臣から答弁のあった、一般人も捜査の対象になるというのは極めて大きな問題だと思っています。一般の人が捜査、この場合、「捜査」というのはすなわち内心ですね、計画を合意したかということを、一般の方までどうやって捜査するのだろうと。きのうNHKの「クローズアップ現代」で、スノーデン氏(エドワード・スノーデン元CIA職員)が暴露した、日本において全てのネット上の情報を監視できるシステムを使っていたということが明らかにされていましたが、まさにああいうことでもやられない限り、一般人の内面・内心を監視するとならないと思うのですね。そういったことが起こってくる。一般人の皆さんの内面・内心も監視されるというようなところを、わかりやすくこれから指摘していきたいと思います。

○玄海原発 佐賀県知事の再稼働同意について

【時事通信・大塚記者】
 佐賀県の玄界原発再稼働についてきのう知事が同意した。これに対する受け止めをお願いしたい。

【政調会長】
 私達は原発の再稼働に関しては考え方をまとめていて、それは革新的エネルギー・環境戦略の中の3本柱の一つとして、原子力規制委員会の厳しい安全基準を満たしたものでなければ再稼働してはいけないというのが一つ。もう一つは、国が前面に出て、避難計画に対して責任を負っていくというような、国が全責任を負っていくという形でなければ再稼働してはいけないと。こういった考え方を示してまいりました。そういった中で、私達は例えば原子力規制委員会および内閣府が避難計画に対してきちっとしたチェックをしていくのを法的に担保するというような議員立法も出しているところでもあります。
 こういった中で今、安倍政権がこの原子力災害に対する避難計画に対して、万般の責任を持ってやれる態勢をつくっているかというと、これに対しては「疑問なし」とはできないと思います。あるいは、そこに大いなる懸念はまだあるなと私達は思っています。
 佐賀県に関しても山本防災大臣は、国として避難計画等の住民理解や、そのさらなる充実強化について取り組む、現在の避難計画等を出発点として不断の改善を行っていく、こういうふうに言っています。あるいは世耕大臣は、原子力災害対策に「これで完璧」ということはなく、引き続き国としてもその改善強化に取り組んでいく、こういうふうに言っています。じゃあ、再稼働まで、あと数ヵ月になるのでしょうか、道のりがあります。そういった中で、本当にこのような、大臣が言ったような国が責任を持った形の避難計画も含めた原子力災害対策になっていくのかというところは、厳しく注視していきたいと思っています。

○米国抜きでのTPP発効を模索する政府方針について

【NHK・関口記者】
 TPPに関して、アメリカ抜きの11ヵ国で(発効を)目指していくという方針を最近政府は提案しているが、この部分について。

【政調会長】
 まず、アメリカとの貿易関係の向き合い方ですが、私は基本的に、アメリカが保護主義に陥らないようにという点をしっかり日本として説得をし、勇気づけていくべきだと思います。ただ、その際にアメリカ政府の中の、貿易に関する部門も含めて、政治任用者がかなり多くいるわけですが、次官や局長級・審議官級も含めたところで言うと、まだかなり議会承認を終えておらず、アメリカ政府の側の陣容が整っていないと思います。そういった中で、例えば2国間協定の議論をするとかしないとかいったところに突っ込み過ぎて議論するというのはいかがなものかと思っています。だから、一旦少し間を置きながら、ただ、保護主義に陥らないようにということを十分議論の中で基本的な考え方として共有していくことをまず行うべきだと思います。
 そういった中で、「TPP11(イレブン)」という考え方が浮上していますが、そもそも私達はTPPのこの内容自体には反対です。この内容を前提としたTPP11、これは全く同じものだとすると、私達はそのTPP11の内容にも反対せざるを得ないと思います。
 加えて、アメリカという大きなアクターがいない中でのTPP11という話を持ち出しても、ちょっと現実性には欠けるのではないかなという気がします。もうちょっと違った枠組みの中で、保護主義に陥らないようにアメリカを取り込んでいく場を考えていくべきではないかなという気がします。

○天皇陛下の退位・安定的な皇位継承に関する議論について

【日本経済新聞・林記者】
 退位について伺いたい。自民党が検討している附帯決議案には女性宮家の創設(の検討)が明記されていないようだが、立法府の提言では、盛り込まれるように各党が努力していくとある。この相違について、どうお考えになるか。

【政調会長】
 退位に関して、先般、国会側が提言を出し、さらに政府側(有識者会議)が最終報告を出し、さらにこれらの現状を踏まえながらいろいろな話し合いが行われているところだろうと思います。
 退位の問題に関しては、できるだけ政争の具とせず、静ひつな中で、「国民の総意」をあらわす天皇陛下のあり方が確定していくのがよいと思うので、これまで国会で話し合いが起こった、それが提言としてまとまった、政府(有識者会議)として最終報告書がまとまった、こういう中でしっかりとした話し合いが政府・与野党で行われて、みんなが納得できる案になってくれるように話し合いが進むものと思っています。

【日本経済新聞・林記者】
 女性宮家の創設(の検討)といったところについて、有識者会議の提言でも触れられていないが、皇位の安定的な継承という意味でなかなか政府の腰が重いのかなという印象を受ける。その点についてはいかがか。

【政調会長】
 私達は野田政権の時から、急速な皇族の減少に対して警鐘、危機感を持ち、政治の責任として議論をしなければならないということで議論を起こしてまいりました。その危機感は与党にも、あるいは政府にも共有していただきたいと思います。今回のような議論が起こっている中であるので、これを後の課題とせず、今回の議論の中でぜひしっかり取り組めるような態勢をとってほしいと思います。

○「学校等の授業料の無償化等推進法案」について

【日本テレビ・黒島記者】
 教育の無償化について伺いたい。昨日、自民党内でも「こども保険」に関して、6月の政府の骨太の方針に入れ込むべく議論をまとめていくという内容の議論が行われた。教育の無償化に関しては民進党も法案の提出準備をされていると思うが、法案提出のスケジュール感と、その財源について、あらためて具体的に伺いたい。

【政調会長】
 法案に関しては、先般2月に法案登録をした後、具体的内容を今、詰めているところにあります。きょうの午後も文部科学部門会議の実務者で集まって会議を行うと。こういった形を通じて、具体的内容を今、詰めていっているところです。できるだけ早く成案としてできるように頑張っていきたいと思います。
 財源については、自民党さんの中から教育国債とか、あるいは「こども保険」とか、いろいろ出てきているようではありますが、まず与党側が財源の前にどのような教育の無償化をやろうとしているのか私はよくわからないので、そこを留保しながら。
 私達はご案内のように、就学前から大学に至るまで段階的に教育無償化をしていくべきだという、極めて大胆な案でございます。ざっと計算すると5兆円近くにも及ぶような、このくらいの規模の大きなものを今考えていくべきだと思っています。そのくらいの規模感になってくると財源もきちんと考えていかなければならないので、例えば消費税の8%から10%に上げる際の1%分、これを計算すると大体3兆円弱にもなりますが、こういったものとか、あるいは所得税の見直し、配偶者控除等々を見直していくこととか、あるいは金融所得課税の税率を上げていくこと、さらには今年度予算でも政府が若干行いましたが、予算の中の国債金利の想定をより現実化していくことからある程度の余地が生まれていく。こういったことを合わせると、十分、数兆円規模の財源が生み出せると思っていますので、先ほど申し上げました、最大限、満々やって5兆円、これに向けて段階的に進めていく。数兆円規模と、極めて大胆な規模のものは十分できていく余地はあるのではないかなと思っています。