大串博志政務調査会長記者会見

2017年7月5日(水)11時30分〜11時56分
編集・発行/民進党政務調査会

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=y3wngLgYyHc


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○北朝鮮による弾道ミサイル発射は、国際社会全体の脅威

【政調会長】
 昨日朝、北朝鮮が高高度の弾道ミサイルを発射したことに関しては、岡田安全保障調査会長名での抗議のステートメントも出しましたが、累次の挑発行為に関しては、国際社会に対して、安保理決議も含め、これを踏みにじるような連続した行為で、断じて許すことができない。我が国の安全保障に対する極めて重大な脅威だと思っています。その後、北朝鮮は特別重大報道を行い、ICBMの打ち上げに成功したと発表しました。これも重ねての国際社会への挑発行為であって、この緊張した状況で更に緊張感を高めさせる行為で、許されるものではないと思います。

 一連の北朝鮮の挑発行動に対して、強く抗議をしながら、これを国際社会全体として大きな脅威ととらえ、押しとどめていく道を探らなければならないと思います。G20の場もあり、そこで米国や中国、韓国、さらにはロシアといった主要な対象国も織り交ぜながら、国際社会の強い懸念の輪を拡げていく必要があると思います。

 ちょっと懸念されるのが、トランプ政権が立ち上がって以降のこの状況下において、時を同じくするように、北朝鮮による挑発行動がかなり頻繁になっているわけですが、トランプ政権発足以降の北朝鮮に対する我が国としての対し方、或いは国際社会全体の対し方が、果たして北朝鮮に対して行動を抑止するための効果を発揮してきているのか、一旦検証する必要もあるのではないか、という感じもしています。

 トランプ政権が相当圧力を強めている。オバマ政権に比べると、戦略的忍耐の時代は終わったとはっきり言って、圧力を強めることになってきているわけです。一方で安倍政権も、対話のための対話では意味がなく、今は圧力をかけていくことが必要であると言い、米トランプ政権が、全てのオプションがテーブルの上にある、つまり軍事オプションもテーブルの上にあるということだと思うのですが、これを評価するという言葉を繰り返した。この方法によって効果が現れてきているのか、よく検証しなければならないと思います。国際社会をどう巻き込んでいくか、特に、中国等を含めた関係国をどう巻き込んでいくか。これはトランプ大統領も習近平国家主席と一生懸命、話をしながら取り組んでいるようですが、果たしてアメリカの態勢がそれを十分できるような形になっているかということも含め、この数ヵ月の対北朝鮮政策、我が国、そして国際社会、これが効果を発揮しているのか、再検証すべき時期に来ているのではないかという感じすら持ちますので、このことは付言させていただきたいと思います。

○加計・森友に安倍総理隠し、政府・与党は全く反省せず

【政調会長】
 国会ですが、与党が昨日、やっと閉会中審査に応じてきたかと思ったら、結果としては安倍総理隠しであったという点に関しては、極めて遺憾の意を述べさせていただきたいと思います。もちろん文部科学委員会・内閣委員会合同で、前川前文科次官を参考人として呼び、真実の解明をしていくことは必要ですので、私たちもこれは受けましたが、安倍総理自身が、国会を閉じた直後も、国民に丁寧に説明すると述べて、選挙が終わった後も反省の弁を述べてきた経緯があります。そういった中で、安倍総理自身が出てこない閉会中審査だけを提案してくるというのは、安倍総理隠し以外の何ものでもないと思います。

 これまで、加計学園・森友学園問題隠しといった、国民に説明責任を果たさない姿勢が極めて大きな国民の反感を呼んだと思います。これに加えて安倍総理隠しということですから、政府・与党は全く反省していないのではないかと言わざるを得ません。これは引き続き、私達としても、安倍総理がきちんと国民の前で説明する、国会の場で説明するという場を求めていきたいと思います。

 この関連で、例えば安倍総理の街頭演説での、こんな人たちに負けるわけにはいかない、このこんな人たち発言とか、あるいは稲田防衛大臣も、自分の発言に対して反省の弁を述べながら、厳粛に受け止めるという言葉を何度も何度も繰り返して、木で鼻をくくったような言葉しか述べていない。本当にこの人たちは反省しているのかと。こんな人たち発言に関しても、菅官房長官も問題ないという認識を示しています。反省と言うけれども、これで本当に反省しているのかなという気がします。まして国会における安倍総理隠しです。口では反省と言っているけれども、反省していないのではないかということを疑わざるを得ない。行動で示してほしいと思います。

 その一環で気になったのが、今、霞が関の人事が行われていますが、国税庁長官に佐川理財局長が就任されることが発表されています。佐川氏自身の行政官としての実力は、私も認めます。ただ、これが国民の目にどう映るかということは、やはりよく考える必要があると思います。森友学園問題の時に、交渉の資料がない、1年未満の文書管理期間だったので、もうない、全てない、ということで、国民に極めて不透明な感覚を与えたわけです。その方が国税庁長官となると、国民が納税する際に気持ちよく納税できる環境になるのだろうかという、こういう見え方をきちんと考えるべきではないかと私は思います。国税庁は納税者との関係で、納税者が、これは費用ですから、収入から差っ引かせてもらって課税金額を計算しますと言った時に、国税庁は、費用であるということを証明する資料がなかったら、これは費用として認定はしませんと否認するわけです。資料がなかったら、費用としては言えません、よって税を納めて下さいと、こういうふうに言うわけです。これを言い続けなければならないのが、国税庁の立場なわけです。資料がなかったら税を納めろと言う立場にある人が、資料はありませんでしたと、あれだけ国民の前で言い募った人であった場合に、国税庁としての見え方がどうなるのか。国民の目に、信頼という観点からの映り方がどうなるのか、というのは非常に心配です。この辺りも、総理官邸が官僚人事を握っているわけですから、国民の常識的な感覚から極めてかけ離れている。反省をしていると言っているが、ほとんど反省しているようには見えない。その現れだと思っています。

○日・EU EPA交渉、政府は国民にきちんと説明すべき

【政調会長】
 日・EU EPA交渉が進んでいるように見えます。大枠合意間近かという報道もありますが、極めて遺憾なのは、交渉の過程がどこまで何が進んでいるのか、全く見えません。TPPの時には、守秘義務契約があるということで、情報開示ができませんと言いました。しかし、日・EU EPAには守秘義務合意はありません。ないにもかかわらず、TPPと同じく全く情報開示がなく、ある意味TPP以上に情報開示がありません。TPPの時には、曲がりなりにも一定の影響試算などは出していました。しかし今回、この影響試算すら出さない。どういう影響があるか、試算すら出さないで取りまとめようとしている。しかも内容を聞くと、TPPで結んだ内容以上に、チーズを含む酪製品に関してはTPPより深掘りするような譲歩をするかの如き報道もあります。こういったことも含め、国民に大きな影響を与えかねないこの日・EU EPAを、これだけ国民に何も知らせない中で交渉合意をしようとしていることに関して、これも加計・森友学園問題と同じように国民には知らせない、情報を明らかにしない。極めて強い隠蔽体質があるという感じがします。

 このことに関して、今報道があるように、例えばソフトチーズに関して低関税になるとか、或いは関税が撤廃されるということになると、TPPよりかなり深掘りしたことになります。そうすると、日本がTPP交渉でチーズに関しては、これだが限界であるという風に言って交渉してきたはずなのですが、そうではなかったということが明らかになるわけです。今、TPP11ということで日本はやっていますが、TPP11を含むその他の貿易交渉でも、何だ、日本はTPP以上に更に譲歩できるではないかといった意味で、大きく影響を及ぼすのではないかという点も懸念しています。こういった点も含めて、政府はきちんとした説明責任を負うべきだと思います。


■質疑

○前川前文科次官参考人招致、与党の対応は遅きに失した

【時事通信・岸本記者】
 冒頭発言の閉中審査に関して、首相が出ない一方で、前川前次官の参考人招致を認める。一連の安倍政権と自民国対の狙いをどう分析されているか。

【政調会長】
 前川さんはかなり前から、国会に呼ばれれば自分で説明するということをはっきり言っていました。証人喚問ですら、求められれば出ると言っていました。与党側がこれを認めてきたというのは、遅きに失したと私は思います。
 森友学園の時には、籠池さんの発言をとらまえて、総理を侮辱するかのごとき発言だから証人喚問をすると。自民党は、自分たちの都合のいい時には証人喚問を認めて、自分たちに都合が悪いことに関しては参考人招致・証人喚問を認めないという態度で、ここまで遅きに失する対応だったと思います。
 前川さんが参考人として来ていただけるのであれば、きちんと総理のご意向とか、或いは官邸の最高レベルが言っているとか、こういったことがどういう感覚で文科省・霞が関として捉えられていたのか、この辺りを是非確認してみたいと思います。

○PB黒字化財政健全化目標、政府は白旗を揚げつつある

【日本経済新聞・林記者】
 政府の財政健全化目標について、2020年度PB黒字化を安倍政権は掲げているが、これに対する民進党のスタンスは。

【政調会長】
 2020年度PB黒字化というのは、堅持しなければならない目標だと思います。少なくともそれが達成できるように頑張るということは、目標として持っていかなければならないと思います。今回の骨太の方針において、2020年度PB黒字化と同時に、債務残高対GDP比の引き下げという言葉が入りました。もし政府が債務残高対GDP比引き下げということを以てして、2020年度PB黒字化の目標と置き換えようとしているのであれば、半分白旗を揚げようとしていることではないかと私は思います。
 更に債務残高対GDP比引き下げという目標は、近年それが達成しているようになってきているように見えますが、正直申し上げて、翌年の、或いは今後来る年次の成長率見通しとか金利の見通しとかをちょっと操作すれば、如何様にも見せかけはつくれます。今実質2%、名目3%という、極めて楽観的な目標を前提に財政健全化を見通している。私に言わせると、粉飾まがいの財政健全化見通しを立てている政府のやり方からすると、半ば白旗を揚げつつあるのではないかという感じすらします。

【読売新聞・工藤記者】
 民進党は、他の野党三党と選挙協力に向けて、政策のたたき台や選挙区調整も進めていると思うが、今回、都民ファーストの都議選圧勝を受け、都民ファーストと首都圏中心に連携を進めたらいいのではという党内の意見もあるようだが、この辺りの整合性等をどうとっていくお考えか。

【政調会長】
 都民ファーストの皆さんは、国政進出を否定していらっしゃいます。ですので、私たちの念頭に、都民ファーストの皆さんと国政レベルでの政策的な協調をどうするかという検討はしておりません。

【日本経済新聞・林記者】
 PB黒字化だが、自民党の中には、黒字化目標がかえって財政を悪化させているのではないか、撤廃したほうがいいのではないかという意見もあるようだが、この点についてどう考えるか。

【政調会長】
 PB黒字化目標がかえって財政を悪化させているのではないかというご指摘は、おそらく、今は財政健全化目標をそんなに厳しく追わないで、成長をまずさせることによって税収が伸び、それが結果として財政健全化につながるのだという意見ではないかと想像します。もちろん財政健全化と成長、両方を追っていかなければならないと思いますが、それと2020年度・PB黒字化目標をなくすというのは、ある意味かなり短絡的な感じもします。成長によって全てが解決するということだけでは、財政健全化に向けての道のりにはならないと思います。

○目標達成困難、安倍政権が粉飾紛いの数字示すこと危惧

【日本経済新聞・林記者】
 今の安倍政権は、PB黒字化目標に順調に近づいていると思われるか。

【政調会長】
 PB黒字化目標の達成はいよいよ困難になってきていると私は見ています。特に2016年度を見てみると、数年ぶりに税収が前年度を下回るということになりました。特に法人税収の落ち込みが大きい。これは色々と過去の例を見ていただければ分かりますが、経済は波がありますので、法人税収が伸びる波に入った時にはかなり伸びていきます。これは数年続きます。安倍総理はこれを自分の手柄の如く、或いはアベノミクスがうまくいっているかの如く感じ、アベノミクスの果実といったことを言ったと思うのですが、逆にこれが反転してくると、法人税収も含めて逆の、税収が減るサイクルに入ってきます。来年度の予算編成がこれから始まりますが、税収見積もりはかなり厳しくなってくると思います。そういった中で、ますます黒字化目標の達成が厳しくなっていると思いますし、下手をすると安倍政権は、更に楽観的な経済成長率等を見込むことによって、目標達成に近づいているような粉飾まがいの数字を示すのではないかと危惧しています。

○生活保障、エネルギー、安保、憲法など議論詰めていく

【共同通信・中西記者】
 都議選に絡み、何故民進党が自民党批判の受け皿になれなかったかを考えると、民主党政権時代の負の遺産が残っているのかと思うが、民主党政権時代に行った政策の総括はされているのか。高速道路無料化、年金一元化といった政策の見直しに着手するということを2014年2月に「次の内閣」で決定していたと思うが、それが今どうなっているのか。

【政調会長】
 政権時のマニフェスト政策に関して検証するという作業は、これずっと行なってきました。一定の報告書も実は出ています。どこまでできて、どこまでできなかったかということも含め、一定の検証を実はやってきています。ただそれが、どれだけ注目されたかは別として、一応検証は終えた形になっています。
 問題は、今回の都議選でも思ったのですが、何故受け皿となり得なかったかという点に関して、政策を担当する側からすると、政策面で我が党がどういう立ち位置にあるかということが見えづらかったというところが、一つ大きくあるのではないかと思います。すなわち、安倍政権の驕り、傲慢さ、それによる加計学園問題や森友学園問題、或いは共謀罪の問題等々をあぶり出すことはできたのですが、その上でどういう社会をつくっていくかに関しての打ち出しが弱かったのではないか、という反省があります。
 これに関しては、政策アップグレードの中で、教育の無償化も含む人への投資を打ち出してきたこともありましたが、その辺りの打ち出しがもう一歩あれば良かったと思います。そういう観点から今、尊厳ある生活保障総合調査会において、財源も含めた、全ての人で全ての皆さんを支えていくことによって誰もが安心して暮らせる社会をつくっていくことが、結果として経済成長にもつながるといった、全体像をつくろうとしています。先般受けた中間取りまとめを受けて、もう少し肉付けをしてきちんとした具体的な形にして、分かりやすく示していく作業をしたいと思います。
 もう一つ、我が党ではっきりしないといつも思われているのは、エネルギー政策です。エネルギー環境調査会で、玄葉会長からもある程度示唆してもらいましたが、かなり議論もしてもらっているので、秋に向けて大きな固まりがつくっていけるようにやってきています。これも一定の結論は出していけるように、頑張っていきたいと思います。
 さらには安全保障政策です。これは憲法とも絡みます。北朝鮮情勢を含め、安保とそれに絡めて、安倍総理が9条の改憲のことを言っているので、この辺りに対して民進党としてどういう考えを持つのかといった関心もあると思います。今、憲法調査会を中心に全国で国民の皆さんの意見を聞かせていただいて、それを受け止めて我が党としてどう考えるのかという道筋をつくっていこうとしています。安保調査会に関しては、岡田さんに調査会長になっていただいて、北朝鮮も含めた現在の安保環境にどう対峙していくかという調査も、今行っております。
 これらの肉づけがもう少しできてくると、これまで私も政調会長としてやってきて、もう少し詰めたほうがいいなと思っていた、財源も含めた生活保障関係、それからエネルギー、憲法・安保。この辺りがおそらく皆さんも感じられる、民進党は右左ばらばらで意見がまとまっていないと言われるところの核心のエリアではなかったかと思います。この辺りの議論をきちん詰めていくことが大事でしたし、まさに今大事だと思います。

【時事通信・岸本記者】
 衆院解散について、共産党は求めるという姿勢を鮮明にしているが、民進党の立ち位置は。

【政調会長】
 もちろん野党ですし、内閣不信任案も前国会の最後に出したわけですから、今の安倍内閣が政権の座に値しないということは言い続けていくことになると思います。一方で、まず国会の場でやらなければならないのは、閉会中審査を求め、安倍総理に国会できちんと語るべきだと求め、かつ臨時国会を開会せよということを言って、国会の場でまずきちんと説明させることを達成することが重要なのではないかと思います。そのことを通じ、安倍政権の問題点をより明らかに国民の前にさらした上で、闘いをより深化させていくという流れではないかと思います。