参院本会議で23日午前、子ども・子育て支援法の一部を改正する法案に関する質疑が行われ、民進党・新緑風会を代表して質問に立った矢田わか子議員は、(1)森友学園の国有地払い下げに関する財務省の公文書改ざん問題(2)子どもの貧困対策、生活困窮者支援政策、児童福祉政策と連動した一体的な政策展開(3)幼児教育の無償化よりも待機児童解消政策を優先するべきとの声があるなか、待機児童解消方針の実現性(4)幼児教育の無償化における認可外保育施設の扱い(5)保育の質の確保に向けた取り組み(6)幼児教育を無償化するのであれば「幼稚園・保育園を義務教育化すべき」との意見への見解(7)潜在的待機児童の正確なカウントのしかた(8)保育士の処遇改善・業務改善、また有資格者の職場復帰対策(9)企業主導型保育事業の保育の質の確保に関する行政指導の在り方(10)企業主導型保育事業で中小企業の活用を促進するための制度利用に関する情報提供や手続き(11)待機児童対策協議会の設置(12)依然縦割りとなっている少子化対策、子ども子育てに関する行政の財源確保や支出の一元化に向けた取り組み――等について、少子化対策担当の松山大臣に見解をただした。

 森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書の改ざん問題については、「誰が、何の目的で、どんな指示によって行ったのか解明されなければならない。『政治の力が働いた』と考えるのが自然で、省庁の幹部職員の人事を一括管理する内閣人事局のあり方も含め、政と官の関係のあるべき姿を考え直す時期が来ている」と指摘した。また、「国会からの要請に対して、財務省が改ざんされた文書を国会に提出したこと」をさらに問題視し、「行政府に対する立法府の監視機能が全く無視されたということで、疑惑の全容解明を図るには、佐川前国税庁長官の証人喚問とともに関係者の国会招致が不可欠だ」と語った。

 子ども・子育て支援法の一部改正案に関連しては、「子どもが健やかに成長するためには、家庭、地域、保育・学校施設などが緊密に連携しながら、必要な施策を講じ、それを裏付ける予算を確保しなければならない」と指摘。一方、「子ども・子育て支援法」の目的を達成するには、「子どもの貧困対策」や「生活困窮者支援政策」、さらには「児童福祉政策」と連動した一体的な政策展開が必要だと問題提起した。

 そのうえで矢田議員は、政府が昨年12月8日に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」で、幼児教育の無償化と待機児童問題の解消という2つの政策目標を掲げ、その財源として消費税増税の一部を充てることを決定したことを取り上げた。改正案では、この政策目標に関連し、一般事業主から徴収する拠出金率の上限を0.45%に引き上げ、これを「子どものための教育・保育給付の費用」に充てようとするものだと説明。「保育・幼児教育サービスを受ける保護者にとっては負担軽減になるが、一方で、さまざま課題も指摘されているとして、以下の4点に言及した。

1.待機児童の解消が優先されるべき

 第一の課題として「保育・幼児教育の無償化よりも、まずは待機児童を解消する政策を優先するべき」だと矢田議員は述べ、待機児童問題が解消できない要因として、近年25歳から44歳までの女性就業率の上昇に伴い、保育利用申込率が急増している実態があり、政府が保育の受け皿を拡大しても、それ以上に利用希望者が増え、一向に待機児童が解消できない構造になっていると分析した。そのうえで、「待機児童問題の解決には、基本的に、計画以上の対策を次から次へと講じていくしかない。政府は『子育て安心プラン』を2年前倒しし、『2020年度末までに32万人の保育の受け皿整備と、これによる待機児童解消する』との方針を打ち出したが、この時点で、保育の利用申込率がさらに増える可能性も十分にある」と指摘した。

2.認可外保育施設への支援

 第二の課題として、無償化に関し、認可保育園以外の施設の扱いの問題があると取り上げた。無認可保育所の利用者には大きな関心事であり、「教育の機会均等」、「公正・公平性の確保」という視点から、認可外保育園でも多くの園児が無償化の対象となるよう、政府の有識者会議検討を進めてほしいと問題提起した。

3.保育の質の確保

 第三の課題としては、「保育の質の確保」の問題を取り上げた。保育園の受け入れ枠の拡大、無償化政策の完全実施等により潜在化していた保育ニーズが一段と高まると、施設やスタッフの確保がいっそう難しくなることも予測されると矢田議員は指摘。「保育の量的確保とともに、保育の質の確保も十分に配慮されるべき」と述べ、政府が来年度予算で職員配置基準の見直しを含めた質の向上として2684億円を計上していることに関し、「支出項目は多岐にわたり、十分な予算が確保されていないのではないか」として、保育の質の確保に関する対策等を松山大臣にただした。

 松山大臣は、子ども子育て支援新制度で2015年度の制度施行当初から幼児教育・保育・子育て支援の量的拡充とともに質の向上に取り組んできた旨を述べたうえで、「さらなる質の向上を実施するための0.3兆円メニューについて、18年度予算で17年度に引き続き職員の処遇改善などメニューの一部の実施を行っていく」とした。

4.幼児教育の義務教育化

 第四の課題としては「幼児教育の無償化」に着目したうえで、「幼稚園・保育園を義務教育化すべき」と問題提起し、「財源や供給体制の問題があるが、義務化によって、より初等教育に向けた教育的効果が得られると考える。また児童虐待の早期発見につながるメリットもある」との認識を示した。

 矢田議員は潜在的待機児童の掌握の必要性にも言及した。政府が潜在的待機児童について適正にカウントする方針を地方自治体に要請し、保育園に入れず育児休業を延長しているケース、兄弟同じ園を望んでいるケース、近隣保育所を希望しているケースなどを待機児童にカウントするようにしたが、一方で親がさまざまな理由で求職そのものをあきらめているケースや保育ママなど認可外保育を利用しているケースなどは市町村の判断に任されることになっている点に着目。「市町村が保育の需給を正確に把握し、定員計画を立てるよう、とりわけ隠れ待機児童の掌握について、政府としても的確な指導をすべき」と指摘した。

 保育士の処遇改善問題について政府は、保育士の賃金引き上げに対応してきたが、保育士不足の状況は一向に改善されていないとの見方を示し、「保育士は、全体として、労働時間、安全管理責任の重さに比べ、今なお低賃金で、しかも定期昇給制度が十分に整備されていない。さらに労働条件を抜本的に改善し、ITなどを活用した業務の効率化を図ることが必要。『賃金が低く生活できなく転職した』『労働時間が長く家庭との両立ができない』という声を多く聞く」と実態を明らかにし、保育士の有資格者が再び就労できるような環境整備が強く求められると問題提起した。

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