参院で7日、安倍総理の外交報告と麻生財務大臣の財政演説に対する本会議代表質問が行われ、民主党・新緑風会を代表して前川清成議員が登壇し質問した。前川議員は、(1)臨時国会を召集しなかった理由とその憲法解釈(2)安全保障法制(3)憲法改正(4)年金生活者等への支援臨時福祉給付金の効果とその根拠(5)軽減税率の低所得者対策としての効果(6)軽減税率制度導入に当たっての財源確保(7)社会保障の持続可能性とそのための財源(8)議員定数の削減――などを取り上げ、安倍総理らの認識をただした。

 前川議員は冒頭質問に先立ち、北朝鮮の核実験に対し抗議の意を表明した。

 そのうえで、野党各党が憲法53条に基づき臨時会の開催を求めたにもかかわらず政府がこれを見送ったことに対し、いかなる憲法解釈に基づくものかと迫った。これに対し安倍総理は、憲法53条ではその時期について触れられていないとして、「国会の権能は臨時会と常会で異なるところはない。召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えていない」と強弁。前川議員は自民党の憲法改正草案には具体的に「(要求があった日から20日以内に召集されなければならない」とあることから、「これが総理の言う合理的な数字ではないか。明らかに憲法違反だ」と断じた。

 今回の補正予算に含まれる低所得の高齢者約1130万人に対して1回限り、一律3万円を支給する「臨時福祉給付金」については、「アベノミクスの恩恵が及んでいないのは高齢者だけか。地方に、中小零細企業に、全ての働く人々に、とりわけ非正規労働者に、1人親家庭に及んでいるのか」「5月、6月にばらまくのは参院選挙対策ではないか」などと問題視。

 あわせて軽減税率に触れ、「食品全般に適用する結果、高所得者の方がより多くの恩恵を受ける。軽減税率は低所得者対策にならない」として、低所得者に限って直接現金を継続的に支給する「給付付き税額控除」を実施すべきだと求めた。「軽減税率に関しては、何が公平、公正か、一義的に『線引き』することは不可能であり、その結果、またしても各業界団体の陳情合戦を招き、癒着と、利権の温床になる」とも指摘。軽減税率導入により失われる税収1兆円程度のうちの4千億円は本来社会保障の充実や低所得者対策に充てることが予定されていたものであり、「本末転倒」「大切な社会保障を守り、充実させるための消費税引き上げだった。軽減税率で税収が侵食され、その分社会保障費が削られたとき、最も困るのは低所得者だ」と訴えた。

 軽減税率の導入について安倍総理、麻生財務大臣は「買い物のつど痛税感の緩和を実感できることが特に重要との判断で決定された」などと主張、残りの6千億円の財源については「2016年度末までに政府与党で検討を進める」と答えるにとどまった。

 PDF「20160107参院本会議前川清成議員質問全文」20160107参院本会議前川清成議員質問全文

安倍総理の外交演説と麻生財務大臣の財政演説に対する代表質問を行う前川議員

安倍総理の外交演説と麻生財務大臣の財政演説に対する代表質問を行う前川議員