参院本会議で4日、政府提出の国際観光旅客税法案の質疑が行われ、民進党・新緑風会の古賀之士議員が質問に立った。

 同法案は観光基盤の拡充・強化の財源確保のために国際観光旅客等の出国1回につき1000円の負担を求めるもの。古賀議員は(1)同法案が予算関連法案だとする説明の妥当性(2)法案検討期間と内容の妥当性(3)2020年までに有給休暇取得率70%の目標達成へ向けた進捗状況とILO52号・132号条約批准の見通し(4)税収の使途(5)受益と負担の関係(6)税収の使途となる取り組みの先進性や費用対効果の判断基準(7)税収の使途が拡大することへの歯止め(8)課税開始を来年1月7日とする根拠(9)2018年度予算計上項目の支出開始時期――等について麻生財務大臣らに質問した。

 冒頭、3月28日の参院本会議での所得税法への反対討論で「今の政府には税を語る資格はない」「公文書が改ざんされたことで、民主主義が死に瀕している」と政府を批判したことを振り返りつつ、麻生財相がさらに「森友の方が、TPP11より重大だと考えているのが、日本の新聞のレベル」などと報道機関を批判する言葉を麻生大臣が口にしたことを問題視。「公文書の改ざんという、憲政史上に残る重大な汚点をもたらした当該省のトップであることを理解されていないとしかいいようがない」「事実関係をよく確かめないまま、マスコミを批判するこのような不誠実な態度は、どこから来るのか」と断じた。

 国際観光旅客税法案についてはまず、法案の取扱いについて、予算関連法案、いわゆる「日切れ法案」扱いとした財務省の説明に疑問を呈し、「新年度に入った今日の段階で質問を行っているように、日程的に特に問題なく審議が始まろうとしている。なぜ、日切れ法案扱いとの説明を、繰り返し受けたのか」「森友学園の決裁文書を改ざんして提出するという、詐欺同然の行為を働いた。法案の説明にあたっても、われわれはだまされていたのではないかという疑問がある」などと語った。

 法案の拙速な政策形成過程についても着目。国際観光旅客税が付加税でない新税としては、1992年の地価税以来の大きな提案であるにもかかわらず、それに見合った政策形成過程が伴わないことを問題視した。2016年3月に発表された「明日の日本を支える観光ビジョン」に、「国の追加的な財源の確保策について検討を行う」「受益者の負担による方法により、観光施策に充てる追加的財源を確保することを目指す」とあるが、課税対象や税額、徴収方法などは書かれておらず、具体的な検討も進んでおらず、17年段階でも検討は止まったままだったのが、去年9月になって突然、「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」が設置され、11月に中間取りまとめで方針が出され、12月に導入が正式決定された状況だと古賀議員は説明した。「この間、わずか3カ月。長く議論すればいいというものではないが、それにしても短すぎる。検討を行った人選を見ても、税を専門とする学識経験者が深く関わった形跡ない」と指摘した。

 さらに、航空業や観光業へのヒアリングが行われる一方、消費者代表の意見が十分検討されたとは思えない状況である点を、「1人1000円定額というのは、確かに分かりやすいが、応能性の原則からして疑問が残る。消費行動に与える影響も1000円くらいなら大丈夫だろうと楽観的な言い分が通るばかりで、肝心の税を負担する者の意見がまるで無視されている」との見方を示し、十分な検討が行われたと言えるのか、麻生大臣にただした。

 麻生大臣は「改正案の目的として国際観光の振興が挙げられており、国際観光には日本人観光客が外国へ行くことも含まれる。従って国際観光旅客税を充てる施策についてもスムーズな出入国手続きの円滑化、快適な旅行のための環境整備など、日本人旅行者も受益と負担の関係から納得しやすいものを含めることとしている。2018年度予算でも本税の税収を充てて最新技術の活用した顔認証ゲートや税関検査場電子化ゲートの整備、日本人旅行者の旅行先の正確な安全・安心の情報の提供などを進めることにしている」と答えた。

 法案で「観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源を確保する」ことを目的としている点については、「その使途についてはどこにも書かれていない」「政府は、受益者と負担の関係について負担者の納得が得られること、先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること、地方創生をはじめとするわが国が直面する重要な政策課題に合致することを基本とするとしているが、こうした文言は、実は法案のどこを探しても見当たらない」と指摘。そのうえで麻生財相に、受益と負担の関係が明確になっているか、先進性や費用対効果をどう判断するか、使途が拡大することへの歯止めはあるかをただした。

 麻生大臣は「先進的なもので、費用にしてその効果が高いこと国際観光旅客税に充てる施策の要件とされている。先進性や費用対効果については、民間有識者の意見も踏まえつつ、毎年度の予算において各利用の中身をしっかりと精査していきたい」と述べるにとどまり、具体的な判断基準は示されなかった。

 歯止めについて麻生大臣は、「具体的な使途については民間有識者の意見を踏まえつつ、毎年度の予算編成において事業の中身をしっかりと精査するとともに事業レビューや政策評価などを活用した第三者の視点から適切なPDSAを行っていく。これらの取り組みにより無駄遣いの防止、使途の透明性を確保することなどにより、本税の使途が受益と負担の観点など基本方針の枠組みをはみ出して拡大することのないようにしていく」などと述べた。

PDF「参院本会議国際観光旅客税法案質疑・古賀之士議員予定稿」参院本会議国際観光旅客税法案質疑・古賀之士議員予定稿