参院で27日、安倍総理の施政方針演説に対する本会議代表質問が行われ、民主党・新緑風会を代表して郡司彰参院議員会長が登壇。(1)特例公債法の複数年度化(2)TPP(環太平洋経済連携協定)(3)甘利大臣問題(4)安全保障法制(5)中期財政見通し(6)異常気象がもたらす災害への対策(7)COP21(8)地方創生(9)水道料金(10)教育(11)ワーキングプア――について取り上げた。

 郡司会長は、安倍総理が掲げる「決める政治」に対し、「私の語感では『決める』とは真摯(しんし)な議論を重ね、批判に耐え得る内容とした後のことだ」と述べ、重要問題の決定を常に国会が開かれていない時に閣議決定の名で決める国会軽視の安倍総理の政治姿勢を問題視。「強行採決が連続し、違憲の解釈を押しつけ、与党自民党の内でさえ物言えば唇寒しとばかり、以前のような闊達(かったつ)な論争は影を潜めている。これは立憲主義、民主主義に反する安倍内閣の本質だ」と断じた。

 そのうえで、低成長や人口減、高齢化などによる財政的な危機や格差の問題が根底にある時代背景にあって、「私たちの国は丁寧で優しい寛容な社会をこそ目指すべきだ」と訴えた。

 赤字公債の発行に必要な特例公債法の複数年度化については、単年度ではなく2016年度から5年間を対象としたことに対し、「財政規律を形骸させる措置」だと批判した。

 TPPについては、これまでの交渉経過は不透明であり、大筋合意のきめ細かい正確な説明や情報の開示が行われていないことから、「発効に伴う経済効果や影響評価も前提条件や対策の評価次第によって大きく変化し、多くの不安や懸念を払拭するには至っていない」とあらためて指摘。また、攻める面からも自動車分野などから不満が出ているとも述べ、選挙目当ての「無駄遣い」「バラマキ」ではない、省庁の枠を超えた国としての経済連携に関する、総合的な法体系を整備するべきだと主張した。

郡司参院会長

 安全保障法制については、憲法学者や歴代の内閣法制局長官が「違憲」であると表明し、世論調査では、国民の8割が政府の説明は不十分と答えていた中で強引に成立させたものであり、戦後日本の立憲主義と民主主義に大きな汚点を残すものだったとあらためて批判。国民の理解が十分に得られてない状況で本当に自衛隊員を危険な任務に就かせてよいのかと迫った。

 地方創生については、先駆的事業に対する交付金の増額を検討するよりも民主党政権が導入し、全国の自治体から好評を博した一括交付金を復活するべきではないかと問かかけた。

 ワーキングプアについては、「正規と非正規、都市と地方、大企業と中小零細企業、男と女、そして親の収入、年金収入などにより格差の固定化が進行している。平均的な勤労者の半分以下の収入で生活する、いわゆる相対的貧困に分類される層が徐々に増えているのがわが国の現状」だと指摘。民主党は「能力の発揮を阻む、『格差の壁』を打ち破り、支え合う力を育む」と題した共生社会創造本部の中間取りまとめを全党で論議中であるとして、個人の努力ではどうあっても乗り越えられずにいる壁があるなか、大きな理念として「人への投資」を軸とする「公正な分配」にかじを切ることへの決意はあるかと尋ねた。

 郡司会長は最後に、今夏の参院選挙では自身も改選を迎える身だとして、「安倍総理の政治を終わらせようとする全国の人々と連帯し、その野望を打ち砕くために奮闘する」と誓った。

PDF「安倍総理施政方針演説に対する代表質問(郡司彰参院議員会長)2016年1月27日」安倍総理施政方針演説に対する代表質問(郡司彰参院議員会長)2016年1月27日