参院で20日に行われた施政方針演説に対する代表質問では、民主党・新緑風会の2番手として林久美子議員が登壇し、(1)甘利大臣の疑惑(2)安倍政権の成果(3)子どもへの投資の重要性――などをただした。

甘利大臣の疑惑について

 林議員は、疑惑が報じられている甘利大臣に対し「現金50万円を2度にわたり合計100万円、受け取ったのかどうか記憶があいまいであること自体、信じがたい」「大臣の金銭感覚は一般の国民から大きくかけ離れている」と批判した。

安倍政権の成果、財政健全化について

 林議員は、安倍政権下で大企業の利益が上がった一方、中小企業では円安関連倒産の急増、実質賃金の減少、「ワーキングプア」に相当する女性労働者の増加などを指摘し、「総理が『経済、経済、経済』と言っている一方で、働く人、高齢者、子どもを育てている人々は、依然として厳しい状況に置き去りにされている」として、安倍総理の見解をただした。

 さらに財政健全化について、安倍政権が安易に税収増を政策の財源としてあてにする姿勢を「極めて無責任」と述べ、楽観を排し、堅実な前提を置いて取り組むよう求めた。

 これに対し安倍総理は、指摘に耳を傾けることなく、自らの成果を誇り、民主党政権時代を批判するという、いつもながらの答弁に終始した。

子どもへの投資の重要性について

 林議員は、安倍総理が「希望出生率1.8の実現」を掲げていることに関し、「そのためにはまず、今、子どもたちを安心して育むことができる環境をつくることが重要だ」と主張。その上で(1)特に母子世帯の子どもの貧困(2)奨学金制度(3)児童虐待――について政府の認識をただした。その上で林議員は、子どもの貧困・格差をを放置すると、現在15歳の1学年だけでも生涯所得は2.9兆円減少する一方、政府の財政負担は1.1兆円増加するとの推計を示し、低年金者への4千億円の臨時給付金を念頭に「バラマキにこれだけの税金を使うのであれば、未来を担う子どもたちにこそ、投じるべき」「今いる子どもたちが安心して成長する環境を整えてこそ、人口減少に立ち向かう力強い一歩となる」と訴えた。

 林議員が取り上げた「子どもへの投資」に関する各論は以下の通り。

林議員が本会議で

1.母子家庭の子どもの貧困

 「今や子どもの6人に1人が貧困状態」にある中、「母子家庭への再分配は極めて弱い」と指摘。高齢者世帯では再分配前の平均所得92万円が再分配後は348万円になるのに対し、母子家庭では再分配前の平均所得195万円が再分配後も258万円に留まっているという実態を示し、「これではいつまで経っても母子世帯の『子どもの貧困』は解消されない。よりダイレクトな現金給付や教育バウチャーの導入など、直接支援する対策が必要だ」と訴えた。

2.奨学金制度

 現在の国の奨学金はすべて貸与型で3分の2は有利子である事実を踏まえ、林議員は「卒業する段階で500万円のローンを背負うケースもある」「大学進学の夢を絶たれた子どもたちもいる」と指摘。「OECD 加盟34カ国中、給付型奨学金がないのは、大学授業料が無料のアイスランドと日本だけ」だとし、給付型奨学金の創設を主張した。馳文科大臣は「対象や給付方法などの検討が必要」と述べるにとどまった。

3.児童虐待

 林議員は、「今、日本では5日に1人の割合で、虐待によって子どもの命が奪われている」と述べ、こうした児童虐待の調査・支援・指導を行う児童福祉司1人あたり100件を超えるケースもあるとし、政治の責任として配置の基準を改善を求めた。また、児童養護施設は原則18歳で退所しなければならないことから、退所後のサポート体制の構築や、退所した若者をサポートしている人々への支援の充実を求めた。

 塩崎大臣は、2016年度予算にこうした課題に対応する支援措置の拡充を盛り込んだとし、また、総合的な対策強化のために、今国会に「児童福祉法改正案」を提出する意向であるとした。

PDF「林久美子議員代表質問全文」林久美子議員代表質問全文