衆院予算委員会で10日行われた安倍政権の政治姿勢、政治とカネ等に関する集中審議で、民主党の2番手として質問に立った大西健介議員は、甘利前大臣の金銭授受問題を追及した。

大西健介議員 資料1

大西健介議員 資料1

大西健介議員 パネル2

大西健介議員 資料2

 大西議員は、1月28日の甘利氏の記者会見の疑問点をあらためて指摘したうえで、甘利氏本人のあっせん利得、あっせん収賄の可能性に言及。甘利氏の現金の授受をめぐっては、建設会社S社の総務担当者の一色氏が2013年11月14日に大臣室で渡したの現金50万円について「2.2億円の補償が下りたことへのお礼の趣旨」、14年2月1日に地元事務所で渡した50万円については「30分以上産廃の案件について説明をした直後に、そのことの依頼の意味を込めて」と証言している。一色氏の証言と甘利氏の会見での説明と食い違う点についてさらなる説明を聞く必要があるとして、甘利氏の参考人招致を求めた。

 甘利氏の参考人招致については、安倍総理がこれまで甘利氏が説明責任を果たすことの重要性を述べていることから、自民党総裁として真相究明に協力するよう、これに反対する自民党議員に指示をしてほしいと要請。これに対して安倍総理は、「委員会での取り扱いについては委員会で決めてもらいたい」と答えるにとどまった。

大西議員が問いただす

 2013年5月20日付けでURに送られた内容証明でS社は、URが購入した土地の従前通りの使用か営業補償の支払いを求めているが、6月21日付けのURの回答書では、1項で「貴社に対し本件土地に関し賃貸する義務や営業補償する義務はない」とゼロ回答を示す一方で、2項には「別の土地に存在する貴社所有の物件の補償に関し、通知人から別途提案があるので当該折衝は通知人担当者との間で行っていただくようお願いします」とあり、最終的にUR側が2.2億円の補償を行っていることを大西議員は問題視。「なぜゼロ回答だったものが一転して2.2億円の補償につながる提案になったのか」と迫った。

 上西理事長は、内容証明については1項と2項はそれぞれ違う物件に関してのものだと説明したが、大西議員は一色氏本人に確認したところ、「甘利事務所の仲介で難航していた交渉がすんなり決着した」と話したと紹介。上西理事長が「補償金は公用地の取得に伴う損失補償基準に基づき適正に算定されたもの」と説明するURから建設会社への補償金額2.2億円についても、URからの最初の提示では1.8億円だったものがその場で「もう少しなんとかならないか」と言うと2千万円増え、その後も電話で増額を要求したところさらに2千億円増え2.2億円になったという話を明かし、適正だと主張する補償金額2.2億円に疑義を唱えた。

 同年8月6日に結ばれた物件移転の補償契約書では、補償金2億2041万2800円のうち1億7633万円と残額を2回に分けて払う契約になっており、一色氏の話によると1億7633万円が入金された8月20日に、そのうちの1千万円を引き出し御礼として甘利事務所に持って行っていることも紹介。「URが支払った補償金の一部が甘利事務所にキックバックされているとも見られ、極めて悪質。口利きあっせんの対価そのものと見ることができる」と指摘した。

大西健介議員 資料3

大西健介議員 資料3

 前回の質疑を受け一部墨塗りが公開された補償交渉の記録のうち2015年10月27日と11月12日の面談については、10月27日の面会が甘利事務所からの要請でセットされたものであることから、「議員事務所が補償交渉をセッティングすることはよくあることなのか」と質問。上西理事長は「ケースバイケースでありうる」と答えたため、「補償交渉は本来当事者でやるもの。それを議員事務所がセッティングする例が他にあるのなら後日理事会に提出をしてほしい」と迫った。

 大西議員は、「議員事務所とURの接触ではなく補償交渉そのもの。それを議員事務所がセッティングすること自体があっせん行為に当たる」と指摘。面談のなかで一色氏が何度も甘利氏の名前を出して交渉していることも明かした。

 加えて、11月12日の補償交渉では、S社の社員を名乗り一色氏と同席した人物が甘利事務所の秘書であった事実を踏まえ、「補償交渉に秘書が同席するのはまずいという自覚があったからこそ偽名を使っているのではないか。補償交渉に甘利事務所の秘書が同席したこと自体があっせんそのもの。甘利大臣が説明している『秘書による金額交渉への介入がなかった』ということは嘘になるのではないか」と指摘した。

 また、「UR幹部が『甘利氏本人もこの問題を把握しているのか』と尋ねたところ、秘書は『細かいところは申し上げていないが案件は報告していると答えた』という新聞報道について、上西理事長は「間違いない」と明言。大西議員は「甘利大臣はこの案件について報告を受け、現金を受け取り、公設秘書が口利き、あっせんをし、金銭や接待を受けている。甘利氏と秘書は一体となってこの案件をやっていたのだと思う」と指摘し、甘利氏とともに公設秘書だった清島、鈴木両氏の参考人招致も求めた。

 大西議員は最後に、企業団体献金の禁止については否定的な考えを示す安倍総理に対し、一定額以上の政治献金については現金の授受はやめて振込の明細が残る銀行口座への送金に限定をしてはどうかと提案。安倍総理は「今後の各党各会派で十分ご議論いただくべきものと考える」と言及を避けた。