西村智奈美議員は10日に開かれた衆院予算委員会の集中審議で質問した。

 安倍政権の政治姿勢について「衆院の品位をおとしめているのは大臣だけではない。安倍チルドレンと呼ばれる当選回数の少ない議員の言動が問題」と述べ、不祥事や舌禍事件を起こした自民党議員を列挙。さらに週刊文春の報道で明らかになった、国会での育休取得を宣言した男性議員の不倫疑惑に対して「社会の風潮に一石を投じるのではないかと期待したが、結局は売名行為に過ぎなかったのでは」と述べ、これらの不祥事への見解を安倍総理に求めた。総理は「国民の信頼の上に政治がある。政治家は拳々服膺(けんけんふくよく)しながら自らの行動を律すべきだと思う」としながら、不倫疑惑については「報道を読んでいないから分からない」などとコメントを避けた。

 西村議員はこの答弁に納得せず、返す刀で「今もヤジが飛んでいるが、この委員会の雰囲気は異常だ。大臣が答弁しているときに『もっと長く発言して時間稼ぎしろ』と発言したり、今もいびきをかきながら寝ている議員もいる。衆院の品位をみんなで高めようとするときに残念だ」と述べ、実りある国会論争をするように総理や与党側に求めた。

委員会配布資料「均等待遇・3つのパターン」

委員会配布資料「均等待遇・3つのパターン」

 西村議員は、安倍政権がこの春にまとめる「1億総活躍プラン」の中に「同一労働同一賃金」の考えを、「均等待遇の実現」まで踏み込んで盛り込む方針を施政方針演説などで示したことについて、「総理の口からそのような発言が出たことを歓迎したい」と評価しながらも、「均等待遇」の意味する内容について、総理の真意を3つのパターンをあげながら検証した。

 「仕事の内容や経験、人材活用の諸要素が同じなら待遇を同じにすることが均等待遇だ」との総理の答弁を確認した上で、西村議員は、「世間ではそのパターン(図のパターン1)はそんなに多くない。実際にはパート労働法や雇用機会均等法で同じ待遇を確保しなければならないことになっている」として、むしろそれらの条件が同じでも、転勤の有無などにより異なる雇用管理区分に含まれるパターンが問題だと指摘(図表のパターン2)。総理はこのパターンでも均等待遇を実現したいのかと迫り、総理が「ケースバイケースで考えなければならない」と言葉を濁すと、「ケースバイケースが今まで横行してきたから賃金格差が放置されてきた。実現できるものとできないものにお墨付きを与えれば世界的な流れに逆行する」とその認識不足を批判。

 さらに総理が「日本の労働基準法第4条は賃金で男女差別がないことを求めるILO条約を満たしている」と述べたことを捉え、西村議員は「ILOはそう判断していない」とさらに詰め寄った。男女の賃金指数に違いがある例(図表のパターン3)を示し、「判決では、ある会社に同じ年に入社した男女の賃金格差を認めたものの、その差は会社の裁量の範囲で違法ではないとして敗訴した。これが日本の現状だ。ケースバイケースが拡大解釈されて会社のさじ加減で格差が認められてしまう」と厳格な法整備を求めたが、総理は「判決は個々のケースに過ぎない」などと述べるばかりで、具体的な対応は聞かれずじまいだった。

 質疑の最後に、西村議員は児童手当の増額を取り上げた。安倍政権が第2子・第3子に加算したことは評価したものの、倍増したと胸を張る安倍総理に対して「6割しか倍増にならない。それ以外は所得制限がかかり減額される。それを正確に言わないのは過大広告だ。加算がゼロになる場合もある」と指摘。さらに不正請求防止のためと称して、養育費の請求をあらためて確認する「児童手当現況届」が強化されようとしていることも問題視したが、安倍総理は「もっと詳しく聞きたければ厚労大臣を(委員会に)呼べばいい。養育費確保は厚労省により適切に対応していると考えている」と開き直る始末だった。

 西村議員はさらに、現行制度では年3回となっている児童手当など社会的な給付の頻度について、「年間収入がばらついて家計の管理が上手くいかない世帯が多い」として、海外の事例も紹介しながら、年金同様に年6回の頻度に見直すべきではと提言。しかし総理は「地方自治体の実施体制で支給回数を増やすことは難しい」と否定的な見解を示すにとどまった。