衆院予算委員会の15日の集中審議で質問に立った玉木雄一郎衆院議員は、(1)甘利前大臣の秘書による口利き疑惑の新事実発覚(2)日銀のマイナス金利導入情報漏えい(3)マイナス金利による預金の元本割れの危険性(4)長期国債のマイナス金利が日銀の経営に及ぼす影響――などを取り上げた。

甘利氏秘書の口利き疑惑で新事実

 玉木議員は質問の冒頭、「甘利前大臣の秘書がURとの補償金額交渉に深く介入していた証拠を音声記録として入手した」と明らかにした。この記録は昨年11月2日に一色氏によって録音されたもので、甘利事務所の清島秘書と一色氏が神奈川県の大和市内の寿司店と喫茶店で交わした会話が記録されている。

 玉木議員はこの録音の中の会話の一部を次のように読み上げた。「でも一応推定20億かかりますとか、かかると聞いておりますとか、そういう、なんか言葉にして欲しいんですね。あっちの言い分も明確なあれがないって話だったんで、明確にしなきゃですよね。もしかしたら実際の金額について細かいとこまで絡めないですよ。こいうところは今だったらギリギリ絡めるんで」。

 玉木議員は「まさに甘利事務所の秘書が金額交渉に深く介入している生々しいやりとりだ。これが事実であればあっせん利得処罰法違反は免れない」と指摘。さらに、この録音の5日前の10月28日にURの担当者と清島秘書との補償金額交渉に関して行ったやりとりも紹介し、UR側が「これ以上関与しないようがいい」と釘を刺していたにもかかわらず、具体的な金額を示して交渉したほうがよいと清島氏が話している事実をあげ、「甘利前大臣は辞任会見で、『秘書が金額交渉に介入したことはない』と話したが、今のやりとりを聞くと、関与していないどころか、主導的にどっぷり関わっている様子がうかがえる」と指摘。音声記録を予算委の理事会に提出するとともに、甘利前大臣と事務所の清島、鈴木両秘書の3人の証人喚問を要求した。

 また安倍総理に対して、「潔く辞めたと言われた甘利氏のあの会見の内容が嘘だったのではないか」「しっかりと説明させるべきではないか」と迫ったが、総理は「その段階における甘利氏の認識を示したと承知している」「甘利氏も説明責任を果たしていくと言っている」などと、それ以上この問題に踏み込む姿勢は示さなかった。

「マイナス金利」情報漏えいと預金への影響

 日本銀行がマイナス金利導入を決定した際に事前に情報がマスコミに漏えいした問題では、その後の調査状況を確認。「金融政策決定会合が一度中断されている間に政府から出席した2人が中座して本省(財務省)に連絡を取っているが、その役所から漏れたのではないかとの疑念がある」と追及。日銀の黒田総裁は「事実を知り得た日銀の役職員については情報のやりとりがなかったと確認した」「政府関係者については財務省および内閣府に調査協力を依頼し、事務方を経由して調査報告があった」と答弁したが、玉木議員は「事務方が大丈夫と言っていたから大丈夫だと思っているだけではないか」と納得せず、「中央銀行の信頼に関わる問題なので明確な結果が出るまで聞き続ける」として、さらなる調査を求めた。

超低金利政策で預金が目減り?

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 マイナス金利の導入によって、一般の銀行預金が元本割れを起こす可能性も指摘。黒田総裁は「欧州の例では個人預金のマイナスはない。手数料は金融サービスの問題で預金金利とは別問題だ」と話をそらしたが、玉木議員は年間の利息よりも1回のATM手数料が上回るケースがあることをパネルで示し、「金利収入が減る銀行は、フィービジネス(手数料収入)へとビジネスモデルを転換する。そうなると少額預金者は、銀行に預けないで『タンス預金』にしようと考える人が増えるのではないか。こうなると銀行の金融仲介機能が落ちていく。現に銀行株は下がっている。デフレ経済に陥る危険性もある」と警鐘を鳴らした。

 玉木議員はさらに、長期国債がマイナス金利になったことから「これは満期まで持てば損が出るような商品を日銀がいっぱい買っている。この含み損をカバーしきれるのか。日銀も保有している長期国債を時価評価して、きちんと公表すべきでは」と求めたが、黒田総裁の答弁は「観念的な評価損を示しているわけではないが、半期ごとには所有有価証券の評価損益を示している」「長期国債の取り扱いは今後出口の問題も含めてさらに議論していきたい」とかみ合わなかった。

年金積立金は株安でどうなる?

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GPIFの損失で年金の減額があり得るか?

 玉木議員は、GPIFの運用で想定される最大損失額が、ポートフォリオ組み換えによって、これまでの倍の約21.5兆円になっていることを指摘し、「年金保険料収入が一定額で止まる場合、将来の年金減額があり得るのではないのか」と追及。安倍総理は、「運用は長いスパンで見るから、その時々の損益が直ちに年金額に反映されるわけではない」としながらも、玉木議員がさらにたたみかけると「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と述べ、運用状況次第で将来的に年金支給額の減額もあり得るとの認識を明らかにした。玉木議員は「株式への投資比率を上げたことで底が抜ける確率が上がっているのではないか。将来にリスクにさらさないで、国民の大事な年金資金の安定運用をお願いしたい」と求めた。