衆院予算委員会で19日、「政治改革・税と社会保障等」をテーマに集中審議が行われ、質問に立った山井和則議員は(1)「介護離職ゼロ」と介護保険制度の見直し(2)株価下落による年金運用損とアベノミクス(3)甘利前大臣の「口利き」疑惑――等について取り上げ、安倍総理らの見解をただした。

 政府は2018年度の介護保険制度見直しに向け、17日から始まった社会保障審議会介護保険部会で、要介護1・2の軽度者向けサービス「訪問介護」のうち調理、買い物といった生活援助サービスを保険の給付対象から外すことや保険料の支払い年齢を現在の「40歳以上」から引き下げることなどを検討。年内に結論を出し、17年の通常国会に介護保険法改正案を提出、18年度からの実施を目指すとしている。これを受け山井議員は、「生活援助サービスをなくすというのは、仕事を辞めて家族でやりなさいということで、介護離職倍増政策だ。『介護離職ゼロ』と言っている政権が介護離職を倍増させるような検討をなぜ始めたのか」と追及したが、安倍総理は、要介護者とその家族の負担増について「検討中」であることを理由に答弁を避けた。

山井議員 パネルデータ1

 山井議員は、2015年の4月には過去最大の介護報酬引き下げを実施したことで2015年の介護事業の倒産は前年比40%と、過去最多の76件だったことにも言及。17日の審議会では委員から「家族の負担増につながる」「家族の介護が必要となり介護離職ゼロが達成できない」「軽度者外しは重症化を招く」といった声が噴出しているとして、「介護サービスを利用してなんとか仕事をしているご家族やお子さんは多い。その命綱を切ろうとされている」と訴えた。

 「介護離職ゼロ」を実現するためには、介護職員の離職ゼロの実現も必要だと主張。民主党は、平均月給が全産業平均と比べて約10万円も低い介護や障害者サービスに従事している人の賃金を引き上げる議員立法を提出予定だとして賛成を求めたが、安倍総理は「提出されていないし1行も見ていないのでお答えのしようがない」と投げやりな答弁に終始した。

山井議員 パネルデータ2

 株価下落による年金運用損については、今年に入って約9兆円の年金積立金の損失額が出ている計算となり、安倍政権が14年10月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が基本ポートフォリオの株式運用比率を倍増して以降今日まででほぼプラスマイナスゼロ、今後さらに株価が下がるとますます運用損が拡大する可能性があると懸念を表明。

「GPIFにおける年金積立金運用リスクの想定損失額等に関する質問主意書」(2014年12月24日提出質問第6号)

「GPIFにおける年金積立金運用リスクの想定損失額等に関する質問主意書」(2014年12月24日提出質問第6号)


 2014年12月に長妻昭議員が提出した「GPIFにおける年金積立金運用リスクの想定損失額等に関する質問主意書」の内容を確認した。安倍総理は、仮に新しいポートフォリオを過去10年間に当てはめると、リーマンショックがあった2008年度の赤字額は約マイナス26.2兆円と、2008年度の実際の赤字額約マイナス9.3兆円の約3倍になることを認める一方、「過去のデフレ時代と違い、物価安定目標に向かって物価が上昇しているという状況ではそれに合わせたポートフォリオを構築しなくては年金受給者に対してしっかりとした年金を確保できない。そのためのポートフォリオの変更だ」と強弁。山井議員は、「アベノミクスで株価を上げるために年金を注ぎ込むことで、年金生活者や将来の若者の老後のリスクを大きくする政策は大変問題だ」と指摘した。

山井議員 パネルデータ4

 甘利前大臣の「口利き」疑惑をめぐっては、1月28日の大臣辞任記者会見以後、URや建設会社S社側から示された新たな資料などから、会見での発言に虚偽内容が含まれていた可能性があり、いまだ大臣本人から何ら説明責任が果たされていないと指摘。会見での発言のなかで特に「A秘書やC秘書が金額交渉等に介入したことはない」「辞任の1つの理由として、秘書が疑惑を招いていることに監督責任を重く受け止めている」「しかるべきタイミングで事務所や秘書についての調査結果を公表する」の3つを取り上げ、「黒塗りの資料が多くて真相解明がなかなかできない。金額交渉に関係ない、甘利大臣の言い分が正しいのであれば、黒塗りの部分は白くしていいのではないか。このままでは安倍政権全体が口利き疑惑隠しをしているのではないかと思わざるを得ない」と述べ、情報開示をするよう重ねて求めた。安倍総理、石井国土交通大臣は「公表範囲は『独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」等に基づきURで判断されるべき事項』」「要請に応えることは極めて困難」など、一貫してこれを拒否。山井議員は、あらためて甘利前大臣と2人の秘書の証人喚問を求めた。

PDF「2016年2月19日山井和則議員配布資料」2016年2月19日山井和則議員配布資料