衆院予算委員会で19日に行われた集中審議で、福島伸享議員が質問に立ち、(1)新聞を軽減税率の対象とした理由(2)TPP協定での著作権侵害への損害賠償制度――について政府の見解をただした。

軽減税率の対象に新聞を含むことへの疑問

 福島議員は、今回の軽減税率に新聞(週2回以上宅配される定期購読のみ)が対象とされた理由を尋ねた。麻生財務大臣は「日常生活での情報媒体として全国に均質に情報を提供し、幅広い層に読まれている」ことなどを理由に挙げたが、福島議員は軽減税率を採用している諸外国の例を示し(資料1)、「日々の生活必需品というのであれば、雑誌・書籍、薬、水道水、エネルギーなどをまとめて軽減しており、新聞だけに特化している例はない」、また、所得階層別の新聞購読世帯数とNHK受信料の支払い世帯数を比較して「情報媒体ということであれば、新聞よりNHKの受信料のほうが多くの世帯で負担している」などと指摘。こうした指摘に対し、麻生大臣から説得力のある反論は聞かれなかった。
資料1

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 その上で福島議員は、大手新聞社の軽減税率についての報道の変遷と安倍総理の会食相手を時系列で示し(資料2)、安倍総理と新聞業界との密接な関係が軽減税率の対象選定に影響を及ぼしたと見られかねない実態があると指摘した。

資料2 青字がメディア関係者、赤字が渡辺読売G本社会長

資料2 青字がメディア関係者、赤字が渡辺読売G本社会長

TPP協定での著作権侵害への損害賠償制度

 福島議員は、今回のTPP協定での著作権侵害への損害賠償の考え方は、わが国の損害賠償制度の考え方と矛盾することを指摘し、TPP加盟への懸念を示した。

 1999年の最高裁判決では、わが国の損害賠償制度について「将来における同様の行為の抑止を目的とするものではない」としているが、今回のTPP協定には「将来の侵害を抑止することを目的として定める」との規定が盛り込まれ、最高裁の判決と真っ向から矛盾することになる。これについて岩城法務大臣は先般の国会答弁で、わが国の損害賠償制度は「将来の侵害を抑止することを目的とするものではない」が「反射的、副次的な効果として結果的に抑止の効果を生ずる」ため、「整合的に解することができる」などと矛盾しないという趣旨を答えている(以上、資料3参照)。

資料3

資料3

 そこで福島議員はこの岩城大臣の答弁に対し「本当にそうか。現在の価値が安ければその損害賠償額は将来への抑止にはならないのではないか」と疑問を示すと、岩城大臣はこれに同意。そこで福島議員は「だからこそ『わが国の法律を改正すべし』というのがTPP協定の規定だ」と解説し、「(TPP協定の規定に従って)懲罰的な賠償を課すような民法上のルールを入れることは、わが国の公の秩序に反する。それを受け入れるか受け入れないかの判断をするという、大事な問題だ」と訴えた。

 しかし岩城大臣は、福島議員の質問の意味も、自身が読み上げている答弁書の意味も理解していないかのような答弁を繰り返し、議論は深まらなかった。