大西健介議員は29日の衆院予算委員会で、国から「労働移動支援助成金」を受けた企業が、民間の再就職支援会社に退職勧奨を業務委託していた問題を安倍総理に質した。労働移動支援助成金は、再就職支援会社に企業が業務を委託した際に10万円、再就職実現時に最大60万円がその企業に支給される仕組み。

 大西議員は、「これは安倍政権でできた制度。1億総活躍ではなく、これでは1億総リストラ社会だ」「首切りビジネスではないか。これが許されるなら大変なことだ」と訴えるとともに、具体例として、王子ホールディングスが子会社のリストラに際して同助成金を得て、同社から再就職支援業務を委託された人材会社が一部社員に対し退職勧奨を行っていたのではないかという点を示した。

 「王子ホールディングスの子会社で退職勧奨を受けたのは26人。再就職できたのは2人だけ。実態はもっとひどいのではないか。失業なき労働移動とは名ばかりで、再就職できていない人もいる、給料も下がっている、非正規になった人もいる。結局は人材ビジネスを応援するだけに終わっているのではないか。人材ビジネスは、退職者が出ないと商売にならないので、退職させるインセンティブが働き、同意退職に追い込むためにすれすれのことする温床になっている」と指摘した。

 「労働移動支援助成金の支給対象について、被勧奨者が自由意志で判断できないような違法な退職強要にあたる事例がなかったのか、実態調査をしてほしい。退職強要があれば救済、保障をすべきだ」と大西議員は求めた。安倍総理は「厚生労働省が調査をしているので、結果を待ちたい」と答えるにとどまった。