衆院本会議で1日、「地方税法改正案」「地方交付税法改正案」の2法案が採決され、与党などの賛成多数で可決、参院に送られた。採決の前に、民主・維新・無所属クラブを代表して逢坂誠二衆院議員が両案に反対の立場から討論を行った。
 逢坂議員は北海道ニセコ町長など22年間自治の現場で仕事をしてきた経験から、今回の改正について「国の都合が全面に出て、自治の自主性自律性を抑え込むような内容もあり、反対せざるを得ない」と表明。「安倍政権になってから、自治体に対する中央集権的な対応が数多く見られ、物言わぬ自治、国に隷属する自治になる危機を感じている」として、「最終的に、日本の国民主権と民主主義を危うくするもの」と警鐘を鳴らし、政府の中央集権的な体質を改めるよう求めた。
 地方税法の改正については、反対理由を次のように示した。
 「外形標準課税の拡大等を財源とする法人実効税率の引き下げ」については、「この手法では、地方の税収は変わらないが、外形標準課税により負担増となる法人が増えることは事実で、成長戦略に反する形となる」と指摘。
逢坂議員が訴える
 「農地に対する課税強化」については、「通常の農地より条件の悪い資産もあり、ペナルティー的に課税することは疑問」と述べ、「農地政策の不備を安易に地方税制で取り繕うべきではない。機能していない農地中間管理機構制度の見直しこそが、政策本来のあり方」と提案した。
 「消費税の軽減税率導入」についても、「地方消費税収にも、交付税原資にも、大きな穴をあける」と欠陥を指摘し、到底容認できないとした。
 「法人住民税の交付税原資化による地方税の偏在是正」に対しては、一定の理解は示したものの、「一部の自治体では、財政運営上、大きな影響が生じることになるのも事実」だとして、政府からの丁寧な説明、激変緩和措置を求めた。
 地方交付税法改正案への反対理由としては、次の事項を挙げた。
 地方財政計画のうち、「一般財源総額で前年度に比べ約1300億円の増額を確保しつつ、臨時財政対策債の発行額を圧縮したこと」は評価しつつ、地方交付税額が546億円の純減になったことは「容認しがたい」と批判。その理由として、「国の政策などによる自治体の負担の多くが、『地財措置』と称して、地方交付税の算定に入れられ、あたかも必要財源が確保されているかのように説明されるが、現実には、交付税額が目減りしている。多くの自治体では、こうした地財措置では確実な財源確保につながらないと多数の批判が出ている」として、政府に確実な財源の確保を求めた。
 また、まち・ひと・しごと創生事業費1兆円のうちの「地域の元気創造事業費」3900億円については、「地方交付税の道理を踏み外している」と断固反対を表明した。その理由としては、「各自治体の行革努力に応じた項目に加え、民間委託や指定管理制度の導入、庶務業務の集約化といった業務改革も算定項目に含まれる。これらの事項は、地方歳出の減額要因であり、そもそも地方交付税の需要額の算定とは相容れない」と指摘。「こうした地方交付税の論理に外れる誤った手法を用いて、交付税というお金の配分を人質にしながら、地方行革を強要するのは、中央集権的手法の中でも最も邪悪なもの」と断じ、交付税と行政改革努力の二つを切り離し、別のものとして実施することを強く求めた。
  逢坂議員は討論の最後に、地方と国の仕組みの違いに言及した。「国も地方も歳入の基本は税収」としながら、「地方は、国に認められた範囲でしか赤字地方債の発行ができないし、金融政策、為替政策も行うことはできない」「歳入面は、地方税制と交付税が地方財政の大きな柱」と国との違いを改めて整理し、「自治体と十分な相談もなく、国の都合で地方の懐に、毎年度、一方的に手が入ることは地方財政の安定性を損なう」と政府のやり方を強く批判。「民主党政権時に作った『国と地方の協議の場』を活用し、事前に地方と十分な協議を行なう必要がある。そのプロセスを経て、予見可能性のある安定的な地方税財政制度を確立する必要がある」と提案して、討論を締めくくった。