衆院本会議で1日、「地球温暖化対策改正案」が審議入りし、民進党から田島一成議員が質問に立った。同法案は、パリ協定の採択を踏まえ、日本の温室効果ガスを2030年26%削減という目標達成のため、国民運動の強化や、地域における温暖化対策の推進に向けて必要な措置を講じるもの。田島議員は、(1)法改正による温室効果ガス排出の削減量(2)長期目標の実現可能性(3)わが国のさらなる省エネの可能性と住宅と工場の断熱化(4)欧米の石炭火力規制の流れに対する受け止め(5)気候変動の適応策――等について政府の見解をただした。

 田島議員は、昨年のパリ協定や 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書を踏まえ、2050年までに温室効果ガスを80%削減し、世界全体で2100年までに温室効果ガスをゼロにしなければならないとして、環境立国日本としても世界をリードする形で温室効果ガスの大幅削減を成し遂げる相当な覚悟と努力が必要だと主張。「今回の法案にはそのような覚悟や温室効果ガスの大幅削減が可能となる仕組みは見当たらず、普及啓発の促進、国際協力の推進、地方自治体の実行計画の共同策定程度で、相変わらず省庁縦割り、短期的な目先の利益を追求し、長期的な課題は先送りする、まさに安倍政権の映し鏡法案」だと批判し、この法改正によって温室効果ガスの削減がどの程度可能と考えているのかと尋ねた。

 丸川環境大臣は、「法律改正による効果の相対を切り出して示すことは困難。普及啓発と規制、税制、補助金等の施策の相乗効果により削減を実現していく」と答えるにとどまった。

 地球温暖化対策計画案では、中期目標として2030年に2013年比26%削減達成のみならず、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの削減をめざすことを明記しながら、「このような大幅な排出削減はイノベーションによる解決を最大限に追求する」とあることから、その実現可能性を疑問視。徹底的な熱のカスケード利用や地中熱の活用等によって、購入電力を半減させた小松製作所粟津工場を一例に、イノベーションに頼らなくても大幅な省エネは可能であるにもかかわらず、こうした取り組みをすることなく将来のイノベーションに期待するのはあまりに無責任な、将来世代への押し付けだと断じた。

田島議員が問いただす

 これに対して丸川環境大臣は、「イノベーションによる解決を最大限に追求するとともに国内投資を促し、国際競争力を高め、国民に広く知恵を求めつつ長期的、戦略的な取り組みのなかで大幅な削減を目指し、世界全体での削減にも貢献していく。今後の長期大幅削減に向け、目指すべき社会の絵姿を示すために環境省としての長期低炭素ビジョンの検討に着手したい」などと抽象的な答弁に終始した。

 田島議員はまた、「本来であれば、温室効果ガス削減目標を議論する中で、エネルギーのあり方を議論すべきだが、安倍政権ではエネルギーミックスを先に決めて、温室効果ガス削減目標はそれに沿って作るというあべこべの策定を行っている。理念も哲学のない削減目標だ」「エネルギーミックスでも、福島第1原発事故を忘れたかのように、40年超の老朽原発の再稼働を推し進めるばかりか、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所をどんどん建設し、再エネを抑え込もうと必死だ」などと指摘。欧米で進む石炭火力規制の流れにも触れ、石炭火力26%の枠を出ないようにするための仕組みづくりが必要だとして、「日本も明確に脱石炭火力を宣言し、石炭火力発電の全廃時期を決めるべきではないか」と求めた。

 そのうえで、民主党として昨年の5月に、2030 年に1990 年比温室効果ガス30%削減、2013年比36%削減、2030年再エネ30%以上導入をめざすべきとする「エネルギー中間報告」をまとめ、今国会には間もなく分散型エネルギー社会推進4法案(「分散型エネルギー利用促進法案」「熱利用促進法案」「公共施設省エネ・再エネ義務化法案」「エネルギー協同組合法案」)を提出する方針だと言及。これらを成立させることで、地域資源を生かした省エネや再エネの導入を促進し、地域を活性化するとともに温室効果ガスの大幅削減を実現したいと力を込めた。