衆院TPP特別委員会で7日に行われた総括質疑で質問に立った柿沢未途議員は、甘利前大臣とフロマン米国通商代表との交渉に関して政府から提出された「論点メモ」と言われる黒塗りの資料について、安倍政権の「秘密主義」と「官僚主導」を厳しく批判した。

 TPP交渉に関しては、交渉当事者の甘利前大臣が体調不良を理由に長期にわたって国会を欠席しているだけでなく、TPP担当の高鳥内閣府副大臣も、委員会での審議入り前日に民進党の「TPP交渉過程解明チーム」会合への出席より同僚議員のパーティーへの出席を優先させ、髙木宏壽内閣府政務官が同チームに出席した際には、問題の論点ペーパーを見ないまま出席するなど、当事者意識に欠けた「あり得ない」対応が続いている。

 このように交渉過程を一切明らかにせず、資料をすべてを黒塗りにして提示する政府のやり方に柿沢議員は、「よほど都合の悪いことが書いてあるのかと国民に疑念や不安を抱かせるものだ」「担当副大臣や政務官が情報を共有しているのか、合意内容を本当に知らされているのか疑わしい」として、交渉過程の検証を求めたが、安倍総理は「交渉は結果がすべて。交渉の経過を説明することは考えていない」と突っぱねた。

 一方、柿沢議員は、TPP特別委員会の理事会で西川委員長が論点メモについて「見たことがない」などと発言したことを明らかにした。西川委員長はTPP交渉時には農水大臣を務め、閣僚級会合にも出席していた人物だ。この西川委員長の発言により、「この黒塗りの資料が本当に政府で共有された論点メモなのか、あるいは論点ペーパーは農水大臣にすら見せていないものなのか」という疑念が生じることとなり、柿沢議員はこの点を粘り強く追及した。

 この柿沢議員の質問により、提出された論点ペーパーはルール面に関するものが多く、農林水産分野に関わる内容は含まれていないとする政府の答弁を引き出し、また、農林水産分野にかかわる記録については、農林水産省で保管していることが明らかになった。これを受けて、柿沢議員はあらためて農水省保管資料を提示するよう求めた。

 柿沢議員はまた、安倍内閣が開催した「国際金融経済分析会合」について、「アベノミクスの行き詰まりを世界経済のせいにして、消費税増税再延期の口実を得ようという会合だ」と看破。さらに、会合で意見聴取したスティグリッツ教授、クルーグマン教授が指摘したこと(下記資料参照)は、消費増税の中止という以上に、金融緩和に依存するアベノミクスの限界だと解説した。

スティグリッツ教授とクルーグマン教授の指摘

スティグリッツ教授とクルーグマン教授の指摘

 こうした柿沢議員の指摘に安倍総理は、「両教授の意見を曲解している」などと強弁し、相変わらずの自身の成果を誇る長答弁を展開。柿沢議員は「(総理の)答弁が虚ろに響くようになってきた」と応じた。

黒塗りの資料について、安倍政権の「秘密主義」と「官僚主導」を厳しく批判した柿沢議員

黒塗りの資料について、安倍政権の「秘密主義」と「官僚主導」を厳しく批判した柿沢議員