衆院の環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会(TPP特別委員会)で8日、前日に続き、安倍総理以下担当閣僚が出席しての総括質疑が行われた。民進党からトップバッターとして緒方林太郎衆院議員が質問した。

  同委員会の議事を司る西川公也特別委員長が5月に出版を予定している、TPP交渉の舞台裏を描いた内幕本『TPPの真実』をめぐり、緒方議員が、内閣官房TPP政府対策本部から出された政府の関与についての文書を示し、情報漏洩がないのか確認を求めた。石原伸晃TPP担当相がかたくなに答弁を拒否し、西川委員長も野党理事からの議事整理の求めをはねのけて質疑を続行させたため、民進党の委員は抗議して一斉に委員会室を退席。委員会は休憩に入った。

 西川委員長の著書については、7日の同委員会の質疑で民進党の玉木雄一郎議員が、本のゲラを入手したとして、内容の一部に守秘義務違反の可能性があると追及。その直後に、ネット直販サイトに掲載されていた書籍の情報が消され、予約ができない状態になっている。

 緒方議員は、政府が交渉過程を非公開にする根拠としている「秘密保護に関する書簡」に触れ、その書簡に定める守秘義務の及ぶ対象が国会議員にも当てはまるのかを確認。石原担当相は「2013年にその書簡にサインした鶴岡主席交渉官に守秘義務がかかるので、その内容を国会議員に話すことはあり得ない」と答えた。

 政府に入っていない、閣僚でも政務三役でもない国会議員が、外に漏らしてはいけない情報を知ることはないのか、と再三問いただしたところ、「特別な関係がある者でも、そういうことはない」と断言。

 これを受け、緒方議員は「西川委員長が出版を予定している本には、どう読んでも交渉の経緯と内情を当時から詳しく知っているとしか思えない記述が多い」として、石原担当相に本当に国会議員が知り得ない状況にあったか確約できるかと追及したが、大臣は「その白い印刷物の束が何であるかを認識していないのでコメントを差し控える」などと、しらを切るばかりだった。

 緒方議員はさらに「このゲラ刷りの最後に、出版に当たり協力してくれた内閣官房と農林水産省の皆さんへの感謝の念が述べられている」として、「ゲラのチェックや情報を漏らした官僚が絶対にいないと言えるのか」と追及。4月1日に内閣官房TPP政府対策本部から民進党の会議に提出された「西川委員長が出版するとされる書籍『TPPの真実』への政府の関与について」と題する文書に、「ゲラのチェックという形で具体的に執筆に協力した職員は確認されなかった」とあるのを示し、「守秘義務に反して情報を漏洩した職員は内閣官房には絶対にいないと確約できるのか」「もし仮にそういった職員が出てきたら大臣は責任をとるのか」と迫ったところ、石原担当相は「その白いコピー(ゲラ刷り)が何であるかを確認できない以上、答弁できない」と質問の求めをはぐらかしたり、その文書の存在すら確認していないような言葉を連発し、答弁を拒否し続けたため、近藤洋介理事などが西川委員長席へ歩み寄り、大臣が質問に答えるよう議事の整理を要求した。

 しかし委員長が「大臣は答弁している」「緒方委員は答弁しやすく分かるように質問してほしい」などと繰り返し、議事を進めようとしたため、緒方議員は「全く公平性に欠ける運営だ。委員長は自分のことだからと、その席から隠ぺいに加担している」と強く抗議。民進党の議員は答弁が不十分な上、委員長の議事運営は公平性に欠けるとして、全員が委員席から退席した。審議は50分間中断した後に休憩に入った。民進党の委員はその後、国会内で記者会見を行い、この経緯を説明した

委員会室から退席する民進党議員。

委員会室から退席する民進党議員。