衆院本会議で19日、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」の質疑が行われ、民進党の中根康浩議員が(1)介護保険サービスの利用者負担の軽減(2)自立生活援助サービス(3)重度訪問介護の訪問先拡大(4)骨格提言(5)障害福祉従事者の人材確保(6)総合合算制度との関係(7)障害者差別解消法(8)障害基礎年金と受給世帯の子どもの貧困対策――等に関して質問した。

 質問の冒頭で中根議員は、熊本・大分を中心に発生した地震に関して、被害の甚大さが判明するなか、昨日18日に衆院TPP特別委員会の審議が丸一日行われ、安倍総理も河野防災担当大臣も委員会室に拘束されていたことを問題視。民進党の安住国対委員長が「腰を落ち着けて審議できる状況ではない」として、特別委員会の開催の見送りを提案したが、与党側は「ぜひ進めてほしい」という総理の意向で開催を押し切ったことについて、審議時間の積み上げよりも国民の命と健康と暮らしを守ることを最優先すべきだと指摘。塩崎厚生労働大臣にも自ら陣頭指揮をとるべきだと求め、「やるべきことがいくらでもあり、TPPどころではないはず」と述べ、「東日本大震災の重要な教訓の一つは災害時における災害弱者対策のはず。高齢者、赤ちゃん、理解されにくい発達障害の子ども達、意思疎通の困難な障害者や女性に配慮した福祉避難所の開設などが熊本地震の被災地においても求められている」と、塩崎大臣に最大限の対応を要請した。

中根康浩議員

 中根議員は介護保険サービスの利用者負担の軽減の問題に関連して、本法案は高齢障害者が障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合に、介護保険の利用者負担を障害福祉制度により軽減できる仕組みを設けるとしている点に着目した。厚労省は負担軽減の対象者について、65歳に至るまで相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用していた一定の高齢障害者に限定するとしていることに関して中根議員は、(1)厚労省が想定する「相当の長期間」とは5年程度で、例えば60歳を超えて障害認定された人は負担軽減の対象にならない見込みである(2)また30代でALSを発症して障害福祉サービスを利用した例や、40歳から介護保険サービスを利用しているといった若年の障害者が対象外となる――などを説明。「負担軽減の対象外者には、何の救済策もないのか」と塩崎大臣に答弁を求めた。「特に負担の軽減が必要と考える方を対象としている。なお、今回の対象とならない方もいるが、健康保険制度と比較して、こうした方の負担が増加するものではない」などと塩崎大臣は語ったが詳細の説明を避けた。

 中根議員はまた、介護給付の利用には介護認定を受けなくてはならないが、「例えば、障害支援区分6の知的障害者が介護認定を受けると要介護2ぐらいになると言われるが、このような場合でも、障害福祉サービスで受けていたものと同じサービスが受けられるのか」とただした。塩崎大臣は「引き続き必要なサービスが確保されると考える」と語ったが同等かどうかは明示しなかった。中根議員はさらに、この負担軽減の仕組みは償還払いとなっていることについて、代理受領を認めるなど、一時払いのできない低所得者への配慮を求めた。

 中根議員はまた、本法案で障害者の地域生活支援に関するサービスなどを新設するとしていることについて、「サービスを担う人材の処遇改善を行わなければ、十分なサービスを提供することはできない。処遇改善を行わなければ、法案に規定されたサービスの充実は絵に描いた餅になる」と述べ、「今からでも遅くはない。政府・与党は『介護職員等の処遇改善法案』を否決したことを猛省し、障害福祉従事者の処遇改善を行うことを表明すべきだ」と迫った。